1-2.県内における土壌の分布
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農耕地土壌は、土壌保全事業等により、全国的な基準による分類がなされ、土壌図が作成されています。土壌の分類は、各土壌の相違点や類似点が明らかになるとともに、あらかじめ土壌の基本的な性質が把握でき、土壌診断を行う上で非常に有効となります。また、ある地点の土壌において得られた研究成果や技術が、他所における同種の土壌においても活用できる等の利点もあります。
県内の農耕地土壌は、水田が7土壌群、畑(樹園地を含む)が6群に分類され、その面積と主な分布市町村は表2-1に示したとおりです。水田では灰色低地土が最も広く、次いで黄色土、グライ土の順となっています。また、畑地では褐色森林土が大部分を占めています。
表2-1 高知県内に分布する土壌
土壌群 | 土壌群面積(ha) | 利用形態 | 主な分布市町村(平成15年度時点旧市町村名で表記) |
(1)灰色低地土 | 17,719 | 水田 | 南国市、窪川町、中村市、土佐市、春野町 |
(2)褐色森林土 | 10,438 | 畑 | 土佐市、須崎市、香我美町、南国市、高知市 |
(3)黄色土 | 6,380 | 畑、水田 | 窪川町、香北町、安芸市、土佐町、室戸市 |
(4)グライ土 | 6,247 | 水田 | 高知市、中村市、宿毛市、土佐市、南国市 |
(5)褐色低地土 | 1,496 | 水田 | 窪川町、大豊町、須崎市、宿毛市、三原村 |
(6)砂丘未熟土 | 1,062 | 畑 | 中村市、高知市、越知町、南国市、窪川町 |
(7)多湿黒ボク土 | 768 | 水田 | 土佐山田町、南国市、野市町、香北町 |
(8)黒泥土 | 552 | 水田 | 南国市、高知市、春野町 |
(9)赤色土 | 176 | 畑 | 室戸市、芸西村、安芸市 |
(10)黒ボクグライ土 | 108 | 水田 | 高知市 |
(11)黒ボク土 | 60 | 畑 | 野市町、土佐山田町、南国市 |
(12)暗赤色土 | 54 | 畑 | 南国市、日高村 |
(1)灰色低地土
ほぼ平坦な沖積地、谷底平野、扇状地などに広く分布する土壌で、おおむね全層が灰色ないし灰褐色を呈しており、下層土には斑紋があります。これらの土壌は母材が、地下水あるいは灌漑水の影響を受けて灰色化したか、あるいは以前のグライ層が地下水位の低下によって酸化され、灰色化したものです。
中粗粒の土壌は、壌質~砂質で、一般に陽イオン交換容量が小さく、腐植含量も少なくなっています。特に、下層に砂質や礫を多く含む土壌では漏水過多で鉄や塩基などが溶脱していることが多く、秋落ち現象を生じることがあります。このため、必要に応じて客土や床締め、鉄、塩基の補給などを行うようにします。
細粒質の土壌は、粘質~強粘質で、水持ちが良く、腐植および陽イオン交換容量も比較的高くなっています。したがって、作物を栽培するうえでの問題はほとんどありません。
下層に黒ボク土が混入したものが、野市町周辺の洪積台地や窪川町の河岸段丘上に分布しています。黒ボク土は、りん酸吸収係数が高いなどの問題がありますが、黒ボク混入土は、鉱質土の割合が多いことや、灌漑水中の珪酸によってアルミニウムが不活性化していることなどの理由により、りん酸吸収係数は問題になるほど高くありません。
(2)褐色森林土
丘陵地および山麓の斜面、台地上の波状地、平坦地などの排水良好なところに分布しています
暗褐色の薄い表層の下に角塊状の構造をもった黄褐色の土層が続いています。母材は各種の岩石で、堆積様式は残積および洪積世堆積です。
土性は粘質~強粘質で、塩基の流亡が進み、酸性の土壌が多くなっています。山間部には、下層に礫を多く含み、有効土層が浅い土壌も比較的多く分布しています。Kのようなことから、石灰質資材の施用による塩基を補給などが必要となります。
(3)黄色土
生成および分布する地形は赤色土とほぼ類似しており、腐植含量の少ない表層の下に黄色ないし黄褐色の緻密な次表層があります。母材は非固結堆積岩を除く各種の岩石で、堆積様式は残積および洪積世です。長年水田として利用されてきた土壌には、鉄などの斑紋、結核がみられます。
土性は粘質~強粘質ですが、塩基含量が少ないため、酸性土壌が多くなっています。県東西部の海岸段丘では、下層に礫を多く含むことが多いため、透水性は比較的良好となっています。
(4)グライ土
主に河川および海岸沿いの沖積平野ならびに台地、丘陵地間の低地などで排水不良な地帯に多く分布しています。一般に地下水位が高く、湿田、半湿田の土壌です。還元された鉄のために普通青灰色ないし緑灰色を呈しています。グライ層の存在する深さは、土壌の排水状態を知る有力な目安となります。
排水が悪いため、基本的には暗渠排水を必要とします。有機物として稲わらを用いる場合は、土壌還元をさけるため必ず前年の秋に施用し、施用量は少な目にします。
なお、近年は圃場整備の進展などにより、面積が減少してきています。
(5)褐色低地土
沖積低地のうち、自然堤防などのような比較的排水良好なところに分布しています。母材は非固結堆積岩で、堆積様式は水積です。作土下の土色は概ね黄褐色で、斑紋を持つ土壌と持たない土壌とがあります。
下層に礫を多く含む土壌で水稲を栽培する場合には、水持ちが悪いので床締めが必要となることがあります。
(6)砂丘未熟土
海岸線に沿った砂丘地、砂洲などに分布する粗粒質の土壌のことです。母材は主に風や上流から運ばれた砂(非固結堆積岩)で、風積または水積によって形成するとされています。
この土壌は極めて未熟で、土層の分化発達はほとんどみられません。土性は砂質で、粘土や腐植の含量が少ないので、保水力、保肥力が小さく緩衝力も弱いという欠点があります。しかし、有効土層は深く、耕うんも容易、通気透水性がよく、連作障害がおこりにくいなどという利点を有しています。そのため、有機物施用による土づくりや、灌がい施設の設置などによる養水分の供給が十分に行われれば、安定した収量を得ることが出来ます。
(7)多湿黒ボク土
黒ボク台地上の凹地あるいは黒ボク台地周辺の沖積低地に分布する黒ボク土で、地下水または灌漑水の影響を受けて下層に斑紋がみられる土壌です。そのほかに台地上の黒ボク土が水田化されたため、灌漑水によって斑紋ができた土壌も含まれています。母材は降下堆積した火山放出物(風積、非固結火成岩)の場合と、これらが水によって運ばれ、再堆積した(水積)非固結火成岩の場合があります。
黒ボク土と同様に、有効土層は一般に深く、腐植含量は多いもののりん酸吸収係数が大きいのが特徴です。排水性はやや不良ですが、再堆積による他母材の混入や水田化などのために、仮比重の増大や透水性の減少、りん酸吸収係数の低下などの傾向がみられます。
(8)黒泥土
県中央部の海岸浜堤の後背湿地など排水不良地に分布しています。厚い黒泥層を持つ土壌で、同時に泥炭層、グライ層を持つ場合が多くなっています。黒泥とは、泥炭の分解がさらに進んで、植物組織が肉眼でほとんど認められない程度になり、これに無機質資材が混入したもののことです。
腐植含量は高く、陽イオン交換容量も大きいのですが、塩基飽和度は比較的低くなっています。
暗渠の施工やきめ細かな水管理などによって、土壌の還元防止に努める必要があります。
(9)赤色土
台地および丘陵地の200m以下の地帯で、排水良好な部分に小面積づづ分布しています。土壌断面をみると、腐植に乏しい表土の下に赤色で塊状の構造をもつ次表層が続いています。各種の岩石を母材とする残積の土壌と、非固結堆積岩を母材とする洪積世堆積の土壌があります。
有機物含量が少なく、塩基含量も少ないため、強酸性を呈します。このため、有機物や石灰質資材の施用が必要です。
(10)黒ボクグライ土
黒ボク台地間の低地など、地下水位の高い排水不良地に分布し、下層にグライ層をもつ黒ボク土です。母材は非固結堆積岩ですが、再堆積の過程で他の資材が混入していることが多くなっています。堆積様式は大部分水積ですが、断面の一部に集積、崩積、風積などの土層をもつ土壌があります。
黒ボク土と類似した特性を有しますが、地下水位が高く、排水不良でほぼ全層に強度の還元状態となっています。このため、基本的には暗渠排水を必要とします。有機物として稲わらを用いる場合は、土壌還元をさけるため必ず前年の秋に施用し、施用量は少な目にします。
(11)黒ボク土
火山灰、火山れきのような火山放出物(非固結火成岩)からできた土壌で、一般に火山灰土壌と呼ばれています。堆積様式は風積のものが多く、有効土層は深くなっています。土壌断面をみると、多量の腐植層を含む表層があり、その下は次第に褐色ないし黄褐色の下層土となっています。
腐植含量が多いため、仮比重は小さく、C/N比も高くなっています。陽イオン交換容量が大きいため、保肥力は高くなっていますが、アロフェンや腐植を主体とするため、土壌が酸性になると塩基の保持力が弱くなります。また、りん酸吸収係数が大きい、ばん土性が高いなどの特徴を有しているため、りん酸の増肥が必要です。
物理性は良好で、易耕性に優れています。
(12)暗赤色土
石灰岩または超塩基性岩を母材とする残積の土壌で、暗赤色を呈しています。
母岩からの塩基供給量が多いので、土壌の塩基飽和度が比較的高く、酸性は比較的弱くなっています。また、強粘質な土壌であるため、一般に通気性は悪くなっています。このため、必要に応じて心土破砕などの対策が必要です。
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