ピーマンの栽培方法-定植後の管理-
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定植後の管理
灌水・追肥
ピーマンは水分要求量の多い作物であり、やや多めの灌水で増収効果が高いが、排水の悪い圃場での多灌水は過湿による根傷みを生じやすいがので注意する。灌水量は土壌条件によるが1日当たり約2t/10a程度を目安とする。
乾燥すると樹勢が低下し、石実や果頂部に花弁の付着したハチマキ(通称)が多くなる他、モザイク病発生の引金ともなるので、少量多頻度灌水とする。
また、灌水ムラは根腐れ等による病害の原因となるため、配管は水平にして均一に灌水する。追肥の1回の施用量は液肥の場合、窒素成分で10a当たり0.6~0.8kgを目安とする。砂地で置肥をする場合は、1回に2~2.5kgまでとし、多量施用によるガス害を出さないように注意する。
定植~収穫始めの灌水管理:収穫開始までは樹の負担が少なく、外気温も高いため灌水量が多すぎると軟弱徒長になりやすいので注意する。軟弱徒長になると、側枝発生が悪く、開花と収穫の山谷が大きくなりやすいので注意が必要である。この時期の灌水のポイントは完全活着までは鉢の周囲のみとし、活着後は1回量を少なめとして栄養成長と生殖成長のバランスを確認しながら量と回数を調整する。
収穫始め~年内の灌水管理:11~12月の収量の多い時期には、土壌条件にもよるが2日に1回程度を目安とし果実の肥大を促す。果実が少なくなると灌水量を減すが、極端に減らすと成りづかれ、根傷みにつながり、モザイク病の発生を助長する場合があるので、1回量を少なくして回数は減さないようにする。
厳寒期の灌水管理:厳寒期は天候にもよるが3日に1回の灌水を基本とする。時々、土の湿り具合を確認し、さらに着果状況や樹勢を見ながら1回量を調整する。なおマルチをしている場合は、底土が乾燥しすぎることがあるので注意する。
3月以降の灌水管理:3月以降は外気温が上昇し、ハウス内温度が高くなり葉からの蒸散量が多くなる。そのため、着果量が多く晴天が続く場合は、天候を見ながら1回の灌水量や回数を増やし樹勢を維持する。
温度管理
ピーマンの生育適温は昼温27~28℃、夜温18~20℃とされている。30℃以上になると樹勢の低下や受精不良を招くため、日中は28℃以上にならないようにする。夜間は恒温管理では18~20℃、変温管理の場合は、20時までは21℃、20時~24時までは19℃、24時からは18℃を目安に管理する。
加温始めはハウス内温度が18℃以下に下がる頃から開始する。厳寒期はサイドの三重張りなど保温に努める。また、曇雨天日には20℃を目安に除湿暖房を行い、夜間もやや低め(1~2℃)に管理する。
地温が低いと根の活力が低下し、樹勢の低下にともない側枝の再生が悪くなり花数が減少するので、冬期は株元まで光が当たるように整枝を行い、地温確保(最低地温18℃目安)に努める。
石果:樹勢のバランスが崩れたり、夜温が低い場合などに発生する
光 線
ピーマンの光飽和点は3~4万ルックス(トマトは7万ルックス)とされ、果菜類の中では低い方であるが、日照が少ない冬期にはフィルムの汚れや曇雨天の影響が大きく、着果が不安定となりやすい。特にふところ部分は1万ルックス以下になるので、整枝により下部までの光線透過を良くさせる
誘引
誘引方法:主枝の誘引は定植して20日までに主枝が垂れ下がらないうちに行う。
2条植え2本仕立ての場合、主枝2本をうねに平行に吊り上げる。株間90cmの場合には主枝間隔は45cm、主枝本数は坪当たり約7本となる。
1条植えの場合は、主枝3本仕立てと4本仕立てにする場合があり、主枝はうねに直行に吊り上げる。うね幅によって直立に近いV字型からふところを大きく広げたU字型の方法がある。4本仕立てで株間70cmの場合、主枝間隔は35cm、主枝本数は坪当たり約11本となる。
わき芽かきと親葉の摘葉:第1分枝から下に発生するわき芽は育苗中に一度適除しておく。定植後もすぐ伸びてくるので、大きくならないうちに適除する。分枝下の本葉は11月に入ってから2回に分けて摘葉する。作業は必ず晴天の午前中に行い、傷口からの軟腐病等の侵入を防ぐ。
整 枝
2本仕立て2条植えの場合:樹勢は旺盛で側枝が強くなりやすい。下位の枝にも常に光が当たるように整枝を行い、着果を促進する。
主枝の摘心は、草丈がうね上から1~1.2mの高さを目安とする。摘心するときは着果量と摘心部位に注意し、着果の少ない時や生長点だけの摘心すると徒長ぎみの側枝が2~3本同時に出やすく、その後の管理労力が増加する。そのため。摘心は上段部分に親指大の果実が少なくても4~5個確認でき、しかも、開花中の花を摘除するつもりで行う。
2月以降、側枝の生育が盛んになってきたら、込み合った部分の側枝は1~2節残して整枝する。徒長枝は着果が悪いので、早めに元から除去する。
3~4本仕立て1条植えの場合:1条植えは主枝3~4本でU字型またはV字型に誘引することが多いが、樹勢の維持にはV字型に立てる誘引方法が良い。1株当たりの着果数が多い場合、心止まり状態になりやすいので側枝を早めに摘心して着果数を調整する。さらにふところ枝および株全体に光線があたるように整枝をこまめに行い、樹勢の維持と果実の肥大に努める。主枝の摘心と側枝の整理は2本仕立てに準ずるが2本仕立てに比べると側枝の発生は弱い。
摘 葉
整枝と併せて摘葉するが、この作業は古い葉で結果枝に光が入らないような葉を順次摘葉し、一度に過度な摘葉はさける。
マルチ被覆
スリップス類の発生防止、冬期の地温確保、土壌水分の適湿維持のためにマルチは効果が高い。気温が低下し始める10月上~中旬位を目途にうね上に敷く。時期が早いと水分を求めて根が上がってきて高温障害を受けやすいので注意する。またマルチの直下が湿っていても土中は乾いていることがあるので、時々土壌水分を確かめ灌水は十分に行う。
病害虫防除
問題となる病害は、モザイク病(PMMoV・TSWV)、青枯病、黒枯れ病、斑点病、うどんこ病などがある。害虫は、アザミウマ類の被害が大きいが近年天敵防除が行われるようになってきており、被害は減少傾向である。
収 穫
収穫は定植20日後くらいから始まる。開花から収穫までの日数は温度、着果数によって異なり、高温期は15~20日、厳寒期は25~30日程度かかる。3~4日ごとの収穫とし、回転をよくすることで樹勢の維持に努める。長果、白果、石果は厳しく選別して出荷する。6月下旬まで収穫し、目標収量は18tとする。
栽培終了後
スリップス類対策として、地域的な取り組みで栽培終了直後には蒸し込み処理を行い、発生密度の低下を図る。
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