4.栽培技術(テッポウユリ)1
>> ホーム >> 4.栽培技術(テッポウユリ)1
1)9~11月出し
ア.球根サイズ
9~10月出し:L球を使用
11月出し :M球を使用
イ.温湯処理
休眠打破とネダニ防除を主目的として温湯処理をする。
a.循環式でない場合
48℃の湯に球根を入れ、火を消して60分間浸漬処理する。このとき、最初の10分で1℃低下するよう調整し、20分で46℃とする。基本的には追い焚きしないようにするが、仮に追い焚きする場合は、球根が煮えないように温度ムラや高温に注意する。
b.循環式の場合
温処理温度を46℃とし、温度が下がらないよう追い焚きする。 循環式も循環式でない場合も球根の休眠が深いときには温湯処理温度を若干高く、また、処理時間を若干長く(50℃、90分)する。処理した温湯の連続使用は処理効果が落ちるので5~6回までとする。
温湯処理は43℃以下では効果が落ち、50℃以上では球根が煮え、冷蔵終了時に球根の腐敗や褐変が起こるので、正確な温度計を2本用意して温度ムラのないように注意する。
球根産地の春先の気象条件が低温であった場合や早堀球は球根が未熟であり、9~11月出し栽培では不発芽が多くなるので、球根産地にその年の気象、生育、肥大状況、堀上げ日、出来れば肥大はじめや花芽分化期、出蕾期、堀上げまでの気象を問い合わせるか、視察にいくとよい。
(左)球根を釜に入れ煮る。(右)球根の出し入れ(人力)
(左)球根の出し入れ(機械)(右)球根を水で冷却
ウ.パッキング処理等
温湯処理した球根の冷蔵方法にはオガクズ冷蔵とポリ袋冷蔵がある。
a.オガクズ冷蔵
パッキング材として粗めのオガクズ(杉、檜がよく、外材は発芽抑制物質がある場合があるので避ける)を用いる。握って指の間から水の落ちない程度に水を含ませ、箱のそこに2~3cmの厚さにしき、その上に球根をそろえて並べ、その上に球根が見えなくなる程度にオガクズを詰める。これを繰り返し数段の球根を積み、最後に2~3cmのオガクズを詰めてふたをする。
b.ポリ袋冷蔵
温湯処理した後、清水で十分に冷却(体温以下)するか一昼夜おいた後、再度軽く浸漬するか水をかけ、直ちに1~2個の直径2cm程度の通気更をあけたポリ袋に10~15kg入れ、その袋を適当な箱に入れて冷蔵する。ポリ袋冷蔵では1箱当たりの重量が軽くなり、また、球根の上下をそろえなくてもよいので冷蔵労力が軽減されるが、冷却が不十分であれば不発芽や発芽が不揃いになることがあるので注意する。
エ.冷蔵処理
冷蔵は定植日から逆算して開始する。
オガクズ冷蔵では、15日間13~15℃で予冷し、その後30日間10~13℃で本冷する。
ポリ袋冷蔵もオガクズ冷蔵に準ずるが、オガクズ冷蔵より生育開花が4~5日遅れることがあるので1週間程度早く冷蔵し、冷蔵期間を長くする。
冷蔵庫には、球根を詰めた箱を数段に積み上げる。冷蔵中は時々散水し、冷蔵庫内の温度、湿度ムラに注意するとともに換気をよくし、酸素欠乏と炭酸ガスの害を防ぐ。出庫予定の7日前に発芽状況をみて冷蔵温度か冷蔵期間を調整する
オ.本ぽ
a.定植準備
基肥施用は定植10日前に成分量で10a当たり窒素5~6kg、りん酸8~10kg、加里12~15kgを基準として行い、圃場により加減する。土壌pHは6.0~6.5、EC0.4程度とする。施肥後は土壌消毒剤で消毒しておく。
b.遮光
定植4日前までに遮光率80%程度の寒冷紗(#660)を張り、定植までに地温を下げておく。
寒冷紗は、25日程度被覆し、草丈30cmを目安に除去する。
(左)定植前の遮光(右)遮光ハウスの外観
生育中の遮光の様子
c.定植
(a)球根の選別
冷蔵後、球根を取り出し選別
この作型では、不発芽球が発生しやすいため、また、生育をそろえるために、定植前に発芽状態により球根を選別し、発芽状態のそろった球根を定植する。
オガクズ冷蔵では、箱から取り出すとき、芽長5~10cm程度になっており、また根がお互いに絡んでいるため芽を折りやすいのでできるだけ丁寧に取り出す。
ポリ袋冷蔵では、芽長0~3cm程度であるため芽を折ることは少ないが、不発芽球は1~2日室温に置き、発芽を確認してから定植する。
不発芽(芽が出ていない)の球根
また、オガクズ冷蔵、ポリ袋冷蔵ともに、定植時の不発芽球はあつめて5~7日冷蔵し、発芽を確認してから定植するようにする。
朝夕の涼しい時を選んで球根を運搬しておき、できるだけ球根の温度を上げないようにする。
(b)栽植密度
定植は、畦幅1.9~2.1m、株間8~10cm、条間20~25cm(1畦7~8条植え)とする(39,000~42,000球/10a)定植後は球長より3cm程度覆土し、十分に灌水する。
定植後地温上昇を防ぎ、乾燥防止のため軽く稲わらでマルチする。厚くしすぎると病害虫の発生の恐れがあるので注意する。
(左)定植の様子(右)敷わらでマルチ
d.温度管理
温度は生育段階により異なるが、日中は25~30℃、夜間は8~12℃を目標とする。気温が高すぎると着蕾数が減少するので、換気に努める。
花蕾長が5mm~3cmの頃、特に1cmまでは花飛びが発生しやすい時期である。空中湿度が低く、低地温、高気温の場合に発生しやすく、このような不良環境条件にウイルス病が相乗すると発生が多くなる。したがって、28℃以上、12℃以下の気温管理や極端な乾燥は避ける。また、蕾の発生時期に気温の急激な変化(15℃以上の日較差)があると奇形花(ガク割れ)が発生するので注意して管理することが重要である。
e.ビニル被覆
10月上中旬頃、屋根を張り、サイドは落としておき、最低夜温が10℃以下になると加温の準備をする。ビニル被覆すると急激な温度変化や土壌水分変化が起きやすいので、栽培管理には注意する。11月下旬頃には二重被覆する。
f.灌水
灌水は定植後は十分に行い、生育の後半蕾が下向きかけたら控えめとする。ただし、灌水を控える時期が早すぎると花飛びを起こし、灌水を控える時期が遅すぎると、葉が大きく軟弱になりやすい。
g.フラワーネット
草丈30cmの頃にフラワーネット(20cm*20cm、8目)を張る。
ツイート