クリの主な作業
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整枝・せん定
結果母枝
● クリは前年の充実した枝から雄花・雌花を伴った新梢(結果枝)が発生する。このように前年の枝に直接花を付けず、前年の枝から発生した新梢に花を付けるクリやカキの場合、その前年に伸びた枝を結果母枝と呼ぶ
○ 充実した結果母枝の芽からは春になると新梢が出てきて、中でも先端3芽程度の新梢は伸長量も大きく、新梢当たり3~4個の雌花と、雄花が着生する
<収穫量から逆算した冬季せん定時に残しておきたい結果母枝本数の考え方>
○10a当たり300kgの収穫量と仮定
20g平均の果実収穫とすると15,000個の果実が必要
↓
10aに40本クリの樹が植わっていると仮定すると1本の樹で375個の果実
↓
1個のイガの中に2個の果実が入れば1本の樹で188個のイガ
↓
生理落果が20%とすると1樹当たり235個のイガが必要
↓
1本の結果母枝に3個のイガをつけるとしたら1樹に78本の結果母枝
(樹冠占有面積を60~70%とすると、4~5本/平方mとなる)
● 結果母枝の先端部の新梢に多くの雌花がつきやすい性質を持っている
○ せん定時に枝先を切り返すと、クリやカキは雌花が着く新梢が発生しなくなり、果実が付かなくので注意する
○ ただし、翌年の結果母枝候補を発生させる目的で予備枝を設定する場合、基部から5~10cm程度を残して切り返すことがある
○また、幼木で樹冠拡大中の場合、伸長を促すために切り返すことがある
● せん定後に残した結果母枝本数が多い場合など、来年のことを考えて予備枝を所々に作る
○ 結果母枝が多い部分で、結果母枝を基部5~10cm程度残して切り返しせん定を行う
[Point]
収量を10aあたり300kgとしても必要な結果母枝は1平方mあたり4~5本である。 整枝・せん定を行うときは極力切ることを念頭に置き、取り組むと良い。また強せん定は、樹勢の強化・クリタマバチの耕種的防除につながり収量の安定、経済樹齢の延長まで効果がある。
前述のように1本の結果母枝から3本程度の結果枝が発生するので、結果母枝が多すぎると日当たりが悪くなり、枝が枯れたり果実が生理落果してしまう。そのため、適正な結果母枝本数に調整する必要がある。適正な結果母枝本数は樹形(せん定方式)や樹勢によって異なる。
現在主流となっている低樹高仕立てのうち、樹高を3.5m以下に抑えた兵庫方式では雌花の着生が特によい「石鎚」で5~6本/平方m、「筑波」で6~7本/平方m、不安定な「銀寄」で8本/平方mとなっている。さらに主枝をカットバックし樹高を2.5mに抑えた超低樹高栽培(改良型岐阜方式)では3本/平方mとしている。
● せん定時には枝の基部部分が直径6mm以上、先端から3~4芽部分の直径が3mm以上の太く節間の詰まった枝を残す。
下:優良結果母枝 上:弱小結果母枝
樹齢ごとの整枝・せん定(変則主幹形)
1年目
● 定植時(植え付けたとき)苗木を60cm程度の長さに切り返す
2年目
● 3本程度の長い枝を残して主枝候補とし、他の主枝に競合しそうな長い枝は除去する。また、残した枝の先端は1/3程度を切り返す
3年目
● 結実開始。主枝の邪魔になる枝や重なり枝を発生部から切る(間引きせん定)。また、予備枝を置くようにする(結果母枝を5cmくらいに切りつめる)
4年目
● 以降、樹高が高くならないように地上3.5mで結果母枝を残しながら切り縮める。
● 必要以上の結果母枝は切り返し、予備枝を出来るだけ置き、翌年の結果母枝の確保に常に努める。
結実・収穫管理
クリの花
● クリは1本の樹の中で雌花と雄花が咲く
○ 雄花
・新しく伸びた枝(春から伸びる枝)の基から先端部近くにかけて多く咲く
・花芽ができるのは前年の7月頃
○ 雌花
・先端部近くに1~4個咲く
・花芽が形成されるのは開花する前の4月頃と遅い
(雌花の着生数は前年の貯蔵養分に左右される)
● クリは品種にもよるが、同じ品種の花粉では 受精がうまくいかない自家不和合性があり、結実には違った品種の混植が必要
[Point]
病害虫防除の徹底や肥培管理、せん定などにより樹体条件が良いほど1結果母枝の花は多く咲く
満開の雄花 突出した雌しべが開き満開の雌花
収穫
● 収穫は、自然落果採取が一般的であるが、品種により落果しないものもある
● 収穫は、果実の乾燥防止や野ネズミの被害を防ぐため、毎日1回以上拾い集める
貯蔵
● 冷蔵庫で貯蔵する場合には、麻袋に入れたままでもよく、年内までならば4~5℃、3月までの長期貯蔵ならば0~-1℃がよい
肥培管理
樹勢は強く
出来るだけ枝を伸ばすような施肥管理が必要
● クリは1年に50cmから1mくらい枝が伸びるが、肥料が少ない条件下では20cm程度しか伸びない。その様な枝は、上記のように良い花芽をつけることはなく、たとえ雌花が咲いたとしても、多くは途中で落花や落毬(らっきゅう=イガが落ちること)する
● 樹勢が低下した樹は、新芽の伸びが緩慢なため、クリタマバチ(以下リンク参照)の絶好の寄生場所になる
施肥時期
● クリの肥料吸収パターンは、3月上旬から吸収が始まり、吸収のピークは7月~9月下旬まで
● 9月下旬から落葉までは、翌年のための貯蔵養分を蓄えるための肥料を吸収
施肥例
年間成分量(kg/10a) | 施肥時期 | 窒素 | リン酸 | カリ |
基肥 | 2月下旬 | 9 | 6 | 5 |
追肥 | 7月上旬 | 3 | 2 | 2 |
礼肥 | 収穫終了直後 | 4 | 2 | 2 |
合計 | 16 | 10 | 9 |
● 備考
・ 有機質肥料・緩効性肥料を主体とする
・ 施肥量・施用時期は、気象条件・土質・樹勢等を考慮して行う
● 留意点
・ 施肥設計は、施肥前土壌分析の結果を考慮し行う
・ 土壌pH5.0~5.5を目安に調整する。石灰質資材は基肥施用1ヶ月前までに施用し土壌と混和しておく
・ 土づくりのために堆肥や敷きワラ・敷草等を行う
施肥の役割
● 基肥・・・・・新梢伸長、花の成長、幼果の肥大のため
● 追肥・・・・・幼果の肥大、樹勢維持、翌年の花芽(雄花などの分化)のため
● 礼肥・・・・・樹勢の維持、翌年の新しょう伸長、雌花の増加のため
○ クリはさほどリン酸をやらなくて良い・・・クリには菌根菌が根に共生しているために難溶性のリン酸を吸収できるので、上記の施肥例ではリン酸が窒素、カリに比べて少なくなっている
主な病害虫
クリタマバチ
●症状
クリタマバチが寄生すると芽が玉(ゴール)になり、赤みを帯びてくる。養分が玉の形成に使われるために新しょうが伸びず、葉が小さくなるばかりでなく、葉数も減る。その結果、樹が衰弱してくる。
●対策
強せん定、施肥などによって樹勢を強く保つと寄生しにくい。また、天敵の導入(チュウゴクオナガコバチ)などによって密度を減らす(天敵の移動は県内に限られるので注意する)。

クリタマバチのゴール ゴール内に寄生するクリタマバチの幼虫と成虫
モモノゴマダラノメイガ
●症状
イガの肥大とともに、イガのトゲ部分に産卵された卵が孵化し毬肉を食害する。中の果実肥大に伴い果実へ食入する。加害部位は粒状の糞が糸状につづられている。
●対策
きゅう果肥大期の薬剤散布。冬季に樹上に残ったイガや圃場内に残ったイガを処分することで越冬させない。
落毬した毬肉内で越冬する幼虫 落毬内のミイラ果実内で越冬する幼虫
ネスジキノカワガ
●症状
雌花の肥大とともに食入し、食入が進むと大量の糞を綴り落果する。モモノゴマダラノメイガとは発生時期が異なるため、同時防除はできない。
●対策
雌花の肥大初期の6月中下旬頃に園内を見回り、糞が噴出した雌花が1割程度を超えたら薬剤散布をおこなう。
糞を噴出した雌花 ネスジキノカワガ幼虫
カミキリムシ類
●症状
シロスジカミキリやゴマダラカミキリが樹皮下に産卵し(6~7月)、幼虫のまま材中で2年程度過ごし、成虫となり樹内から脱出(5~7月)するまでの間、材中を縦横無尽に食害する。若樹の場合は樹勢が衰弱し、程度がひどい場合枯れ込むこともある。
●対策
産卵期に地際1m内外を観察し、産卵痕があればハンマーなどで叩き潰す。成虫は見つけ次第、捕殺する。また、産卵痕が増加してきたら、産卵防止・浸透殺虫のため登録薬剤を樹皮へ塗布する。
シロスジカミキリ成虫(5月中旬) 脱出痕(中に脱出前の成虫)
炭そ病
●症状
炭そ病に感染すると花柱部から肩部の子葉の部分(果肉部分)が黒くなって腐る。外見的には花柱部の果皮が若干黒くなる程度である。
●対策
枯れ枝の除去。きゅう果の肥大期の薬剤散布。
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