グリーンフォーカス 平成31年1月号
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ぶしゅかんの産地化を目指して
- 地域の概要
四万十市では四万十川流域を中心に多種多様な品目が栽培され、水田転作で果樹やブロッコリーなどの野菜も多く栽培されています。
この地域では昔から、香りや酸味の優しい「酢みかん=ぶしゅかん」が庭先で栽培され各家庭で親しまれてきました。
四万十市では「ぶしゅかん」が一般的な呼称ですが、一説には「餅油=もちゆ」と呼ばれる香酸柑橘の一種とされています。
すだちの仲間でユズよりも樹勢が弱くトゲが少ないため栽培しやすく、水田でも栽培できるため高齢者や柑橘栽培の経験が無くても比較的栽培しやすい酢みかんです。
表-1 四万十市の主な果樹の栽培面積と生産量(H29年度)
品目名 | 栽培面積(ha) | 生産量(t) |
ユズ | 44 | 413 |
クリ | 43 | 36 |
文旦 | 17 | 299 |
温州ミカン | 8 | 187 |
小夏 | 5 | 107 |
ナシ | 4 | 78 |
ぶしゅかん | 10 | 23 |
- ぶしゅかんの振興
この酢みかんが食材を生かす生酢として一流シェフの目にとまり、四万十市中村地域の新たな産品に育てたいと、平成23年頃地元の観光・物産販売を営む企業が中心となって、団体と行政が「チームぶしゅかん」を結成し、市の特産品として育成する取り組みが始まりました。
平成26年度から四万十市が産地化促進事業を開始し、新植モデル園(1ha)を設置しました。平成27年度からは個人向けに苗木の購入補助を実施し、新植園地を推進・拡大して行きました。
平成27年には、「チームぶしゅかん」の業務は「四万十ぶしゅかん(株)」に引き継がれて主に加工商品の製造、販売を行い、平成28年には「四万十ぶしゅかん生産者組合」が結成され、ぶしゅかんを生産する体制の強化が図られているところです。
表-2 年度ごとの新植面積と収穫面積の推移
平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 合計 | |
新植面積(a) | 40 | 60 | 150 | 0 | 100 | 200 | 170 | 240 | 960 |
収穫面積(a) | - | - | - | - | - | 40 | 60 | 100 | 200 |
ぶしゅかんは、古くから多くの家庭の庭先で栽培され、百年以上も実をつけ続けるといわれています。そこで、病気や害虫にも比較的強く生命力が強いことを販売のコンセプトにした無農薬や有機質肥料で栽培する取り組みを始めました。
しかし、苗木が枯死したり獣害を受けた園地、施肥や耕種的防除、樹形成型の作業ができていないなど、管理が十分でない園地が散見し、初期には関係機関が期待するようには樹の育成が進みませんでした。
- 農業振興センターの取り組み(活動の成果)
取り組み当初から定期的に栽培講習会を開催していましたが、前述のように期待した成果が上がりませんでした。
その原因は、生産者の栽培意欲や技術、労働力などの差であることが分かってきました。
そこで、管理状態の良い園地をモデル園に位置付け、そこで栽培講習会を開催することで生産者のやる気が高まり、また参加者の身近な手本として、「彼ができるなら私も」という効果が生まれました。

写真-1,2 生産者の意欲が高く十分に管理されたほ場
また、関係機関で構成される支援チーム内の共通認識と継続的な指導のために、園地状況や生産者の特性、取り組み状況を容易に把握できる「ほ場チェックシート」を考案し、栽培管理状況を数値化する「見える化」を行いました。
これにより生産者の弱点や不十分な点を関係者で共有することができ、単独での現地巡回などでの指導が容易となりました。

写真-3 チェックシート
このように栽培された「ぶしゅかん」の酢を用いてジュース、ドレッシング、ポン酢、酎ハイ用シロップなどの商品が開発・販売されています。
また、イメージキャラクターとして「ぶしゅまろクン」が生まれ、四万十市出身のシンガーソングライターの堀内佳さんが歌う四万十ぶしゅかんの歌「禁断の果実」も四万十市から全国に発信されています。
平成30年11月現在、ぶしゅかん組合員数34戸、栽培総面積約10.0ha、収穫量32.6tとなっています。

写真-4 ぶしゅかんのイメージキャラクター「ぶしゅまろクン」
写真-5 ぶしゅかんの酢で開発された商品
- 今後の展開
需要が推定100t程度と見込まれている中でまだ需要に供給が追いついておらず、新規栽培者による栽培面積の拡大と増収を図る必要があります。
そのために、面積拡大とともに栽培管理の徹底、生産者の収入を増加させるための青果での取引の推進や販路の拡大などの必要な施策を、加工事業者、生産者組合、四万十市などの関係機関と連携して事業展開していくことを検討しています。
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