グリーンフォーカス 令和8年6月号
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日本一のナス産地のさらなる発展に向けて~SAWACHIを活用した新規就農者の営農支援~
- 地域の現状
高知県東部に位置する安芸地域では、冬季の温暖多照な気象条件(12月~2月の平年値:気温;8.6℃、日照時間;563.3h、降水量;225mm)を生かし、古くからナスやピーマンなどの施設園芸が盛んに行われてきました。平成26年からは、収量・品質の向上を目的として環境制御技術の普及に取り組み、冬春ナスの出荷量日本一を維持しています。
また、新規就農者の確保に向けた就農支援体制の整備も進んでおり、令和2~6年の新規自営就農者数は106人と、県内トップクラスとなっています。
一方で、近年の資材価格等の高騰により農業経営の厳しさは増しています。そのため、新規就農者の早期経営安定に向けて、環境制御技術をはじめとした高度な栽培管理技術を早期に習得できる支援体制の整備が求められています。
- 取り組みのきっかけ
県では、令和4年からデータ連携基盤IoPクラウド「SAWACHI」の本格運用を開始し、データに基づく営農支援体制の整備を進めています。
SAWACHIでは、生産者同士で温度、湿度、飽差、CO2濃度等の環境データや生育データを共有することが可能です。ハウス内の環境データを相互に比較しながら確認できることから、新規就農者の栽培管理技術の早期習得に向けた活用が期待されています。
こうした中で、安芸市の若手生産者グループから、「生産者同士で情報共有や意見交換ができる場を設けてほしい」という声が上がりました。特に新規就農者からは、「他の生産者がどのような温湿度管理をしているのか知りたい」、「栽培上の悩みを気軽に相談したい」といった要望が多く聞かれていました。そこで、生産者同士が環境データや生育状況を共有しながら学び合える場として、SAWACHIを活用したデータ共有グループ「なすのアグリスクール」を設立しました。
- 活動内容
(1)ハウス内環境の見える化・共有化
まず、新規就農者を中心とする対象者に対し、SAWACHIへの加入とほ場に設置されている環境測定装置のSAWACHIへの接続、データ共有グループへの参加の働きかけを行いました。
これにより、SAWACHI上でグループ内の各ほ場の環境データをいつでも確認・共有できる体制を整えました。
(2)生産者ほ場での現地検討会の開催
他の生産者のデータが見えるようになったことで、「栽培管理の結果、ナスがどのように変化したのかを実際に確認したい」という声が上がるようになりました。そこで、定期的に現地検討会を開催し、ハウス内の環境データやかん水、施肥等の管理と実際の生育状況を照らし合わせながら、栽培管理についての意見交換を行いました。
(3)篤農家への参加要請
取り組みを進めていく中で、「毎年安定して高収量の生産者のデータやほ場を見ることができれば、新たな課題の発見や解決に繋がる」という声が上がりました。そこで、地域の篤農家に対して、データ共有グループへの参加や現地検討会への協力を依頼しました。
- 活動の成果
(1)ハウス内環境の見える化・共有化
SAWACHI上で環境データを共有したことで、生産者同士での比較・確認ができるようになりました。これにより、「他の生産者がどのような温湿度管理を行っているか」、「曇雨天日にどのような温湿度管理をしているか」などを把握できるようになり、日々の管理の見直しにつなげることができました。
また、生産者からは「他の人のデータと並べて見ることで管理の参考になる、自分が就農した時からあれば良かった」といった声が聞かれました。
↑図1 生産者間の環境データ共有画面(日平均温度および温度グラフを抜粋)
(2)生産者ほ場での現地検討会の開催
現地検討会では、メンバーの圃場において園主の生産者による現在の栽培管理の状況(温度、かん水、施肥等)の説明とナスの樹勢や着果状況等を確認しながら、温湿度管理がナスの生育にどう影響を及ぼすか等を意見交換しました。その際に、共有したデータを併せて確認することで、「今は生育を抑え気味にするために日中は26℃程度に抑える管理をしている」、「日射量が増えてきた中で目標温度を維持するために、換気窓の温度設定を下げて、開度は大きくするように調整している」、「秋口や春先は加温機が回らないので、設定温度を下げて夜間も天窓が開くようにしている」など、具体的な栽培管理について活発に議論することが出来るようになりました。
(3)篤農家への参加要請
環境データの共有や、篤農家ほ場での現地検討会(令和7園芸年度は10月から3月に毎月開催(計6回))を開催したことで、新規就農者が篤農家の環境管理や樹勢維持の考え方を学ぶ機会が生まれました。特に、換気方法やかん水、施肥管理などについて、「なぜその管理を行うのか」、「どんなタイミングで管理を変えるのか」といった判断の考え方を学ぶことで、栽培管理に対する理解向上につながりました。
また、篤農家からも「自分の管理を振り返る良い機会になった」、「データを見るのに慣れている若い人たちと話をすることで、自分の学びになった」といった声が聞かれ、生産者同士で学び合う環境づくりにつながりました。
これらの活動の結果、令和7園芸年度はグループ内の新規就農者7戸のうち6戸が地域平均レベルの反収18トン以上となり、なかでも3戸は反収21トン以上を達成することができました。
↑写真1 SAWACHIの画面を見ながら、篤農家の温度管理を学ぶ生産者
↑写真2 生育の判断ポイントを学ぶ生産者
表1 グループ内の新規就農者の収量(令和7園芸年度)
- 今後の展望
現在は、生産者が主体となって現地検討会の日程調整を行うなど、自主的な活動が進んでいます。参加者も年々増加しており、令和8年4月時点では15名が活動しています。
今後も、新規就農者を中心に声かけを行い、「なすのアグリスクール」が環境制御技術に取り組む若手生産者の学びの場として発展していくよう、引き続き支援していきます。
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