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グリーンフォーカス 令和4年4月号

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中央西農業振興センター 高吾農業改良普及所 : 2022/04/01

佐川町でのスマート農業の取組


  • 地域の現状

 高吾農業改良普及所の管内は仁淀川流域に位置し、日高村、佐川町、越知町、仁淀川町の4町村からなり、施設園芸や露地野菜、果樹、水稲、茶、薬用作物など多様な品目が栽培されています。なかでも佐川町ではナシをはじめとする果樹の生産が盛んで、令和2年度はナシ22ha、ブンタン6ha等の栽培が行われています。特に県特産ナシ品種「新高」は県内有数の産地として評価が高いが、過去5年間でナシの栽培面積が3ha減少するなど縮小傾向となっています。
 果樹生産ほ場は、傾斜地が多く、農家にとって負担が大きい除草、病害虫の防除、収穫及び収穫物の運搬作業、剪定作業の省力化・軽労化が課題となっており、これらを解決することで、品質の向上による所得の安定や、担い手の確保、後継者の育成等につながることが期待されています。栽培管理作業の省力化や軽労化を図るため、自律走行型草刈機、農業用無人車、アシストスーツ、電動剪定バサミといったスマート農業の取組について検討を行いました。


  • 活動の内容

 1)佐川町スマート農業推進協議会の発足・活動支援
 スマート農業の実証を行うため、JA高知県佐川支所果樹部会を中心にJA高知県佐川支所、佐川町役場、農業改良普及所、果樹試験場、環境農業推進課、(株)入交アグリーンからなる「佐川町スマート農業推進協議会」を発足させ、事業実施計画に沿ったスマート機器の実証を行うとともに、各機械の実証状況の確認や評価・検討を実施し、スマート農業機器導入に向けた検討を行いました。また、先進地調査として、自律走行型草刈機の導入が進んでいる鳥取県への視察も行いました。


 2)スマート農業機器の実証
 以下の4つのスマート機器について実証を行いました。
 (1)自律走行型草刈機「オートモア435X」(写真1)
 (2)農業用無人車「R150」(写真2)
 (3)アシストスーツ「ATOUN MODEL Y」(写真3)
 (4)電動剪定バサミ「Vinion-ULB150」(写真4)
 (1)の自律走行型草刈機「オートモア435X」については、ワイヤーで区分けされた区間内をランダムに自動走行し、草が伸びる前に刈り続ける機械です。梨、リンゴ、梅、文旦の4ほ場で実証を行い、除草精度や傾斜地での走破性などについて検証し、技術・コストの両面から導入が可能であるか検討しました。
 (2)の農業用無人車「R150」については、作業に応じたアタッチメントを装着することで、薬剤散布や運搬を自動走行で行うことができる陸走版のドローンです。梨園地で散布モードと運搬モードの走行実演会を行いました。
 (3)のアシストスーツ「ATOUN MODEL Y」については、電気モーターで腰と腕をサポートし、重筋作業である収穫物の運搬作業の軽労化を検討しました。アシストスーツ説明会を開催し、生産者に試着体験をしてもらい、有望性についてアンケート調査を行いました。
 (4)の電動剪定バサミ「Vinion-ULB150」については、3パターンの切断モードを選択できるバッテリーコード式の剪定バサミです。剪定時期に併せて実証を行い、剪定時の疲労度(握力低減)調査やアンケート調査を行いました。


写真1自律走行型草刈機「オートモア435X」

写真1 自律走行型草刈機「オートモア435X」


写真2農業用無人車「R150」

写真2 農業用無人車「R150」


写真3アシストスーツ「ATOUN MODEL Y」

写真3 アシストスーツ「ATOUN MODEL Y」


写真4電動剪定バサミ「Vinion ULB150」

写真4 電動剪定バサミ「Vinion ULB150」


  • 活動の結果

 1)佐川町スマート農業推進協議会の発足・活動支援
佐川町スマート農業推進協議会での、検討会を5回、現地実演会・説明会を4回開催し、のべ87名が参加しています。鳥取県への視察は、今回佐川町で実証を行っている「オートモア435X」導入農家と他メーカーの自律走行型草刈機「ロボモア」導入農家への視察を行い、視察先農家では、どちらの農家も自律走行型草刈機の効果は十分に感じており、それぞれの機器の性能やメリット・デメリットについて情報を得ることができました。


 2)スマート農業機器の実証
 (1)自律走行型草刈機「オートモア435X」について
 梨、リンゴ、梅、文旦の4ほ場で実証した結果、それぞれのほ場で実証期間中の除草作業は0時間となり、除草作業の大幅な省力化へつながりました。雑草の伸長については、多少の刈りムラは見られましたが、差し支えない程度であり、慣行区と比較するときれいに刈り取られていました。(写真5)また、傾斜35°程度であれば斜面走行は可能であり、走破性も十分高いことが分かりました。経費試算では、20a以上の規模であれば従来使用している乗用草刈機と比較して同等以下のコストで導入が見込めることが分かりました。実証の結果、自律走行型草刈機は除草作業の省力化に有効であり、2戸の農家が導入を希望しました。
 (2)農業用無人車「R150」について
 実演会を2回行い、農業用無人車の走行ルートの設定方法や自動走行の性能、散布モードでは、薬液(実演会では水を使用)の飛散の仕方、運搬モードでは、収穫コンテナを積載した際の走行について確認をしています。実演会をとおして参加者の農薬被爆リスクの低減による安全性や走行性能についての理解が深まりましたが、散布モードでの防除効果の検討が不十分であったり、運搬モードでの走行による果実の擦れ等が見られ、改善すべき課題が見つかりました。
 (3)アシストスーツ「ATOUN MODEL Y」について
 参加者全員が試着体験を行い、試着後実施したアンケートでは、80%の農家が負担軽減効果を感じていましたが、使用感については、全員が慣れるまで時間がかかると回答しました。(図1)
 (4)電動剪定バサミ「Vinion-ULB150」について
 剪定時30分間の調査では、電動剪定バサミと手バサミによる疲労度の差は見られませんでしたが、剪除本数は119%に増加し、ノコギリの使用回数は0回となりました。アンケート調査の結果では、100%の農家が負担軽減効果を感じており、多くの農家が導入を希望しています。


写真5オートモア実証ほ 機械稼働25日後

写真5 オートモア実証ほ 機械稼働25日後


図1アシストスーツの負担軽減効果について

図1 アシストスーツの負担軽減効果について


図2電動剪定バサミの負担軽減効果について

図2 電動剪定バサミの負担軽減効果について


  • 今後の活動

 農業改良普及所では、佐川町スマート農業推進協議会の活動支援を継続しながら、産地にあったスマート農業の検討を重ねていくとともに、今年度作業の省力化・軽労化に対して成果のあった機械については導入を働きかけていきます。
 農業用無人車については、遠隔操作により農薬被爆リスクの軽減効果はあるものの、操作者不在の無人作業は認められていないため、農業者の防除作業の労力がゼロになることではありません。令和3年度の実証では防除精度や薬液補充の効率化を図るプログラム走行等は未実証となっています。令和4年度は、農業用無人車の効果的な散布モードの実証を行っていきます。
アシストスーツは、説明会での試着体験のみとなっているため、実際に現地の運搬作業等で検証を行い、連続作業の中での疲労軽減効果の検証を行います。
以上、これらの取組を実施しながらスマート機器の課題を整理し、地域に即した機器の導入を図っていきます。




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