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グリーンフォーカス 令和4年3月号

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中央西農業振興センター 高知農業改良普及所 : 2022/03/01

グロリオサの輸出拡大に向けた取り組み


  • 地域の現状(概要)

 JA高知市三里園芸部花卉部会(高知市仁井田)は、昭和55年からグロリオサの栽培を開始し、現在は生産者33戸、延べ32haで年間約271万本を出荷しています(令和3園芸年度)。
平成14年からは輸出を開始し、オランダの国際園芸博覧会「フロリアード」での金賞受賞や海外での商談会への参加等により世界的な評価と人気を獲得し、令和3園芸年度はコロナ禍にありつつも、輸出本数は15万本に達しました(図1)。
 一方で、輸送コストの低減や欠品の回避、切り花品質の向上等、輸出本数の増加に伴う課題も見つかり、JAや関係機関と連携した取り組みを行っています。


図1

  • 活動内容

1.輸送コストの低減に向けた輸送シミュレーション試験
 三里産のグロリオサは、アメリカやオランダ等の海外に輸出されており、輸送コストが高いことが問題となっています。そこで、輸送コストの低減を図る方法の一つとして、つぼみ状態での輸送の有効性について検討するため、本県農業技術センターおよび花市場とともに輸送シミュレーション試験を実施しました。今回の試験では、切り前の違いの他、前処理剤の使用、1束当たりの本数、梱包方法等を違えて、また海外着荷時(想定)の切り花品質と品質保持日数を調査しました(表1)。


表1

2.日持ち性向上対策
 輸出の拡大には、長距離の輸送でも劣化が少なく、日持ち性が向上することが必要です。通常、収穫したグロリオサは、生産者のハウスや作業小屋で60~90分間の水あげ処理を行っていますが、品目によっては、水あげ用水の清浄度がその後の日持ち期間に影響することがわかっています。そこで、グロリオサについて、(1)水あげ用水の清浄度の違いによる日持ち期間への影響、(2)水の交換頻度や桶の洗浄頻度と清浄度の関係等を調査し、品質保持に必要な対策を検討しました。清浄度の指標として、ルミノメーターで相対発光量(RLU値)を測定しました(写真1)。
(1)清浄度が異なる水で90分間水あげした場合の開花数および花蕾数への影響を調査し、しおれを低速度撮影カメラ(タイムラプスカメラ)を用いて撮影しました。
(2)水あげに関して、用水の種類、水替え頻度、桶の置き場所、桶の洗浄頻度等について聞き取り調査を行い、実際に現場の水や桶の清浄度を調査しました(写真2~3)。

3.球根数の早期確保に向けた球根養成ほ場の設置と効果の検証
 三里花卉部会の年間出荷量の約90%は赤色品種ですが、海外ではピンク色や白色等、赤色以外の需要が高く、球根数の不足から欠品が発生しています。そこで、球根数の早期確保に向けて、海外で人気の高い‘カプリスロゼ’について、「球根養成専用ほ場」を設置し、その効果を検証しました。なお、慣行では、切り花収穫後の切り下を45~60日間据え置いて、球根を養成します。
 1年目は、養成により小さい球根がどの程度肥大するかを調査し、2年目は、栽植密度を慣行(44株/坪)および慣行の2倍と1.5倍で比較し、密植による球根肥大への影響を調査しました(写真4)。


  • 活動の成果

1.輸送コストの低減にはより安価で省力的な方法の検討が必要
輸送シミュレーション試験の結果、つぼみ状態での輸送でも着荷時の切り花品質に差はなく、前処理剤を使用することで品質保持日数は長くなる傾向がみられたものの、慣行よりも資材経費が24~45円増加することが分かりました(写真5、表2)。また、海外着荷時はつぼみ状態であるため、数日のストック期間が必要と考えられました。
課題としては、より安価な資材の検討や、出荷場で新たに増加すると想定される作業工程の省力化等が挙げられました。
2.日持ち性向上対策
 (1)清浄度の低い水で水あげした場合、清浄度の高い水の場合と比較して開花数が少なく、画像撮影によるしおれ程度の比較でも、調査8日目頃から葉の黄化およびしおれが顕著になり、日持ちが短いことが分かりました(表3、写真6)。
 (2)生産者への聞き取り調査結果から、日持ち性の向上には、水あげに水道水を使用し、毎日の水替え及び桶の洗浄を行い、桶は直射日光の当たらない小屋等に置くことが望ましいと考えられました。また、水よりも桶の清浄度が低いことから、桶に付着したバクテリアの繁殖を防ぐ対策として、夜間に水を溜めたままにしない事が考えられました。
3.慣行との違いにより球根数の早期確保が可能
‘カプリスロゼ’は通常、30g以上の球根を使用しています。今回、約10gと約25gの親球根を用いて養成を行い、新塊茎の肥大率を調査した結果、いずれの調査回においても、小球根でも養成後の平均重量は約30g以上となりました。また、採花と収穫位置を低くするために行われている茎の曲げにより球根の肥大率が低下したことから、養成中は摘心のみとし、茎の曲げは行わずに管理することが望ましいと考えられました。
 栽植密度を違えた試験では、養成後の新塊茎の平均重量は慣行区>1.5倍区>2倍区となり、密植にすると肥大率が小さくなりました(写真7)。また、うねの内側の株は、通路側と比較して肥大率が小さく、慣行区よりも球根の大きさにばらつきがみられました。
 以上の結果から、1作球根の養成を行うことで、採花用の球根数の早期確保につながり、密植栽培は小さい球根ほど有効であると考えられました。

  • 部会の動きや生産者の声

 輸送シミュレーション試験を実施したことで、部会とJA出荷場とでこれまでよりも輸送コストの低減に関して検討されるようになり、部会と花市場との連携も強化されました。
 また、個別巡回により水や桶の清浄度をリアルタイムに提示したことで、生産者の新たな気付きとなり、水あげの処理時間のみでなく、出荷後の日持ちや品質に対する関心が高まりました。生産者からは、「共選・共販のため、全員が取り組まなければ個々のメリットが得られない」との声があり、日持ち性の向上に向けて部会として取り組まなければならないと改めて確認されました。



表2


表3
  • 今後の課題と展開

 三里花卉部会のグロリオサは、令和2年度に国の輸出重点品目に指定され、輸出事業計画に基づく取り組みが実施されています。その中では、これまでにも取り組んできましたが、依然としてミカンキイロアザミウマによる被害が秀品率を下げる主要因となっていることから、害虫対策に継続的に取り組みます。今年度、農薬散布に関する聞き取り調査や散布方法の検証を行った結果、改善の余地が見つかったため、今後は適正な散布量や散布方法の普及を図ります。
 また、これまでは各生産者が個別に選抜・育種して新たな品種を作出していたことから、有望な品種が普及しづらいといった欠点がありました。今後は、農業技術センターと連携し、生産者と検討を重ねながら、選抜、育種、増殖を行い、海外ニーズに応じた新品種の開発に取り組む予定です。




写真1

                      写真1 ルミノメーター


写真2

                    写真2 小屋での水あげの様子 



写真3

                   写真3 水あげに使用される桶



写真4

                  写真4 密植区(慣行の2倍の栽植密度)



写真5

                   写真5 各処理区の梱包状態
           (左からつぼみ・開花液3倍区、つぼみ・開花液5倍区、慣行区2、慣行区1)





写真6

           写真6 調査8日目(10月15日)(左:高RLU区、右:低RLU区)



写真7

             写真7 養成後の新塊茎(左から2倍区、1.5倍区、慣行区)





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