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グリーンフォーカス 令和3年12月

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中央東農業振興センター 農業改良普及課 : 2022/01/12

オオバの難病害虫防除の取り組み

  • 地域の現状

 高知県中央東農業振興センター農業改良普及課の管内は、物部川流域に位置する南国市、香南市、香美市の3市からなり、販売農家戸数は2,623戸で県内の22%、経営耕地面積は3,441haで24%を占めています(2020年農林業センサス)。管内では、水稲、野菜、果樹、花きといった多くの品目が栽培されており、園芸品目では露地栽培、施設栽培ともに盛んです。

  • 取り組みの背景

当地域における施設栽培のオオバ(青じそ)は、南国市と香美市香北町で栽培されており、令和3園芸年度は南国市が20戸で3.2ha、香美市が8戸で1.6haとなっています。南国市では、難防除害虫であるミナミキイロアザミウマの発生が多く、他方の香美市では、褐色から黒褐色の斑点症状が葉に見られる斑点病の発生が多く、両市とも病害虫による品質低下とそれに伴う出荷量減少が問題となっています。
 そこで、当農業振興センターでは施設栽培オオバの病害虫対策の課題に取り組むこととしました。

  • 活動内容

 (1)ミナミキイロアザミウマ防除対策
 ミナミキイロアザミウマは、化学農薬による防除が困難な難防除害虫であること、オオバは毎日収穫する品目であるため、薬剤散布すると数日収穫ができなくなることから、ぎりぎりまで防除したくないという農家心理が多発生に拍車をかけていました。そこで、従来の化学農薬のみに頼らないIPM技術を活用した新たな防除体系を実証し、普及させることとしました。
 まず、当農業振興センターは農薬メーカーと協力して、難防除害虫にも効果があり、かつ回数制限なしで収穫前日まで使用できる生物農薬のボーベリア・バシアーナ乳剤を月に3~4回、予防的に散布する実証区と、ミナミキイロアザミウマの天敵であるスワルスキーカブリダニを放飼する実証区を設置しました。
 また、部会活動等を通じて、ミナミキイロアザミウマに対する薬剤感受性の低下を回避するために、RACコードを活用した防除ローテーションや防虫ネットの設置、栽培終了後の施設蒸し込みによる熱殺処理について指導しました。

 (2)斑点病防除対策
 斑点病防除対策として、登録農薬だけでの防除は難しいことから、結露センサーを用いた加温による湿度低下技術を普及してきました。しかし、雨天が続くと防除効果が不安定になってしまうことや、夏秋期の高温時に加温するため、施設内が暑くなり過ぎることが技術面の課題となっていました。
 そこで、2019年度に県の補助事業を活用してヒートポンプエアコンの導入を図り、これを利用した場合の防除効果について検討しました。

  • 具体的な成果

 (1)ミナミキイロアザミウマ防除対策
ボーベリア・バシアーナ乳剤を用いた実証区では、ミナミキイロアザミウマの発生および食害痕は見られず、防除体系に活用できることが明らかとなりました(図1)。一方、スワルスキーカブリダニを用いた実証区では、調査場所によりミナミキイロアザミウマを抑えられた場合と抑えられない場合があり、スワルスキーカブリダニの定着程度やミナミキイロアザミウマの増加速度によって効果に差が現れてしまうことが明らかとなりました。
RACコードを活用した薬剤ローテーションについては、同一コードの農薬を連用しないことが農家に認識され、意識して農薬を使い分ける生産者も現れました。また、防虫ネットは香美市で普及していますが南国市では導入されていないことから、生産部会において防虫ネットの補助事業を紹介したり、1戸の農家に栽培終了後の施設蒸し込みによる熱殺処理をモデル的に実施してもらうことで関心が高まってきました。


図1

   図1 ボーベリア・バシアーナ乳剤を用いた防除体系による害虫および食害葉の発生推移


写真1 写真2

写真1 スワルスキーカブリダニの実証区の様子     写真2 施設蒸し込み後のオオバの様子


(2)斑点病防除対策
 香美市ではヒートポンプエアコンを3戸の農家が導入しました。いずれの農家とも夜間や降雨時などの多湿条件下に施設を閉め切って冷房運転することで、施設内の湿度低下と温度の上昇抑制を両立し、斑点病の発生をほぼゼロにすることができました。ヒートポンプエアコンを導入した農家からは「斑点病の被害葉が少なくなったことで前年と比べて2~3割出荷量が増えた」と好評価でした。



写真3

              写真3 ヒートポンプ導入ほ場で検討会を開催

  • これからの課題

 スワルスキーカブリダニを利用した防除体系については今後も引き続き検討していくこととしています。
また、オオバでは、ミナミキイロアザミウマ以外の病害虫としてヨトウムシ類の防除が課題となっています。防除対策として交信かく乱剤の利用がされていますが、効果が安定しない事例があります。そこで栽培に利用している電照設備を利用して、行動抑制や忌避効果のある黄色LEDランプの実証・導入について検討する予定です。




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