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グリーンフォーカス 令和2年5月号

農業技術センター果樹試験場 : 2020/05/01

施設「水晶文旦」の10月収穫作型

  • はじめに

 「水晶文旦」は施設で栽培(6ha、2018年農業振興センター調べ)され、9〜12月まで出荷されている高知県の特産カンキツです。作型は幅が広く、1月上旬加温・9月中旬収穫から無加温・12月上旬収穫までありますが、9月収穫作型を除いて栽培管理基準は確立されていません。また、近年は重油高騰により、加温時期を遅らせたり加温温度を下げることで重油使用量を削減して10月以降に収穫する作型(10月収穫作型)が増加しています。しかし、この作型における加温時期は2月上旬〜3月上旬、加温温度は無加温〜18℃と生産者によって異なり、糖度向上のための節水処理時期・期間等も異なるため収穫果実の品質格差が著しくなっています。さらに、収穫期が10月下旬以降になると、収穫前に果実の酸含量が0.3%以上上昇する現象(酸戻り)がみられ、品質格差が発生して市場評価を低下させる大きな要因となっています。
 そこで、10月収穫作型における生育期間中の施設内温度および果実のクエン酸含量の推移を9月収穫作型と比較して、果実の酸戻りの実態と原因を明らかにしました。また、施設「水晶文旦」の10月収穫作型では、栽培管理基準がなかったため、加温の開始時期および設定温度、節水管理の時期等の栽培管理基準も明らかにしました。さらに、収穫後から出荷するまでに減酸させる技術および減酸させた果実の品質を保つ貯蔵技術も開発しましたので、紹介します。


  • 酸戻りの実態と原因

 実態調査として、2015〜2017年に現地および場内で、9月収穫作型と10月収穫作型における加温開始日、満開日および収穫開始期を調査しました。その結果、10月収穫作型では加温、無加温に関わらず満開日が3月中旬から4月初めであることがわかりました。収穫開始期は10月下旬で、満開後日数は200日前後、満開後の日平均の積算温度は4,600〜4,800℃と、9月収穫作型とほぼ同程度でした(表1)。また、10月収穫作型における収穫期の果実品質は園地により差が認められたものの、糖度計示度は平均12.1で9月収穫作型の平均12.4と差はありませんでした。しかし、クエン酸含量は1.16g/100mLで9月収穫作型の0.93g/100mLよりも高くなりました。10月収穫作型の経時的な果実のクエン酸含量は、いずれの園地においても一度低下した後、再び上昇する現象が認められました。図1、2からみるとクエン酸含量の増加が始まった時期は、2015年は満開後140日、2016年は満開後180日、2017年は満開後170日頃で、10日間の日平均温度が25℃程度になった時期とほぼ一致しました。一方、9月収穫作型では果実のクエン酸含量の上昇はみられず、満開後200日の収穫始めにおいても10日間の日平均温度が25℃を下回ることはありませんでした。よって、酸戻りは施設内の日平均温度の低下に伴い果実内の代謝が低下し、クエン酸の生成が消費を上回ることが原因と推察されました。この現象は、酸含量上昇前に収穫した果実を低温貯蔵した場合にも発生し、一種の生理的な現象と考えられました。なお、10月収穫作型において収穫21日前(満開後190日頃)から夜温18℃で加温を行いましたが、酸戻りは防止できず、さらに収穫を1か月遅らせて満開後235日としても酸戻りした状態は続きました。


表1

  • 栽培管理基準

 2012〜2018年に場内の「水晶文旦」における10月収穫作型の加温開始日、設定温度および満開日を調査したところ、10月下旬に収穫するためには、4月初めまでに満開を迎える必要があり、加温開始の時期は夜温14℃設定では2月下旬、夜温18℃設定では3月初めが望ましいことが明らかになりました。日中の温度管理は加温開始〜生理落果期は28℃換気、生理落果終了後は30℃換気で管理し、特に開花期間中は、花粉の発芽率を高めるため夜温18℃以上として、果形を腰高にしないために温度の日較差が10℃程度となるように管理する必要があります。かん水については、果実の初期肥大促進およびクエン酸含量の上昇を抑えるため、満開後30〜110日頃までは2〜3日おきに15mm程度のかん水を行います。節水管理は満開後140日頃〜収穫時までとすることで、4L級(横径12.0cm、果実重680g)、糖度11.5以上、クエン酸含量1.3g/100mL未満の果実生産が可能となります。満開後100日頃〜収穫時までの節水管理では、糖度が13.5以上の果実を生産できますが、2L級(横径11.0cm、果実重480g)と小さく、クエン酸含量も1.3g/100mL以上の酸高となり、収量も小玉化に伴い2割程度減少することが明らかになりました(図1、2)。しかし、かん水量および節水管理の効果は圃場条件によって大きく異なるので、それに応じて程度を調整する必要があります。


図1
図2

  • 収穫果実の減酸および貯蔵技術

 収穫果実の減酸技術として、果実を有孔ポリ袋などに入れて湿度を保ち、35℃に設定した貯蔵庫で2週間高温処理すると、減量歩合は5%程度で、果皮の萎凋、ヘタ枯れおよび粒化症もほとんど発生せず、クエン酸含量を約0.2g/100g低下させることができました(写真1、写真2)。2週間の高温処理により果皮色はやや赤みを増す傾向がみられました。なお、高温処理は3週間以上行うと果皮が萎凋しました。また、減酸させた果実を有孔ポリ袋に入れたまま5℃で貯蔵すると、減量や果皮の萎凋、ヘタ枯れおよび粒化症の発生はほとんどなく、クエン酸含量および果皮色の変化も小さく、貯蔵前の状態を1か月程度維持できることが明らかになりました。しかし、5℃で1か月以上貯蔵するとこはん症が発生しました。


写真1 写真2

写真1 果実を有孔ポリ袋に入れて高温処理中の     写真2 左から高温処理区、常温処理区、樹上区
   様子(2017)                     の処理開始2週間後の状態

  • まとめ

 施設「水晶文旦」の10月収穫作型では、酸戻りを抑制するために、4月初めまでに満開にする必要があり、加温開始の時期は夜温14℃設定では2月下旬、夜温18℃設定では3月初めとします。節水管理は満開後140日頃〜収穫時までとして、糖度の上昇を図ります。
 収穫果実の減酸・貯蔵技術として、果実を高温処理することでクエン酸含量を低下させ、その後5℃で貯蔵すると、1か月程度品質維持が可能です。