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グリーンフォーカス 令和元年9月号

中央東農業振興センター 嶺北農業改良普及所 : 2019/09/01

酒米生産の振興による地域活性化〜地元酒造会社と連携した特色のある酒米作り〜

  • 地域の現状(背景)

嶺北地域は、ブランド米「土佐天空の郷」、「相川米」をはじめとして、県内でも有数の米産地として知られています。しかし、食の多様化等の影響で米の消費量は全国で年間約14万tずつ減少しており、今後、主食用米を巡る状況は一層厳しくなっていく事が懸念されます。
そこで、水稲の大規模農家、集落営農組織、中山間農業複合経営拠点などでは、安定した価格が見込める酒米への期待が高まっています。
 一方、地元酒造会社「土佐酒造」は、付加価値の高い酒づくりとして、キレイな水で栽培した地元産の米を原料に、ストーリー性を持った日本酒を製造したい意向がありました。
加えて、海外向けに減農薬・減化学肥料で作られた米が欲しいという要望がありました。
 そこで、農業改良普及所では、「土佐酒造」、JA、県関係機関と協力して、酒造好適米‘吟の夢’の高品質安定生産及び特別栽培に対する支援を行いました。


  • 活動内容

)‘吟の夢’の高品質化に向けた栽培指導

 

 個別巡回及び現地検討会を通じて、施肥管理、病害虫防除、収穫適期などの栽培管理を指導しました。また、高知県酒米品評会に管内全生産者から‘吟の夢’のサンプルを出展し、酒米生産への意識向上を図りました。さらに、栽培方法(施肥方法、栽植密度等)が玄米千粒重やタンパク質に与える影響について解析し、結果を反省会等で生産者に報告し、栽培技術の向上を促しました。



現地検討会(穂肥検討) 現地検討会(収穫適期検討)

   現地検討会(穂肥検討)                     現地検討会(収穫適期検討)


(2)特米栽培基準に併せた出荷体制の整備

 

 初めて特別栽培に取り組む生産者もいたため、栽培開始前に勉強会を開催し、「農林水
産省特別栽培農産物表示ガイドライン(特別栽培農産物の基準、製品への表示、管理記録の作成等を記載)」について説明しました。併せて、「土佐酒造」への出荷体制を協議しました。
 ‘吟の夢’には良好な心白発現、低タンパクといった酒造適性を有する反面、いもち病に弱い、倒伏しやすい等の弱点があります。そこで、品種の特性を踏まえた病害虫防除、施肥方法等、特別栽培に応じた栽培方法を検討し、生産者が使用している肥料や農薬に応じた特別栽培‘吟の夢’の栽培暦を作成しました。



勉強会(特別栽培の説明) 特別栽培‘吟の夢’栽培暦

   勉強会(特別栽培の説明)                特別栽培‘吟の夢’栽培暦


(3)「土佐酒造」と生産者の交流

 

 平成30年度から栽培圃場、生育状況を確認するため、現地検討会には「土佐酒造」の職員にも参加してもらい、葉色、幼穂長、籾の黄熟、病害虫の発生程度を協力して調査しました。また、反省会には、「土佐酒造」の社長に参加してもらい、海外での日本酒の需要を紹介しました。令和元年には、「土佐酒造」主催による「桂月感謝祭」が開催され、海外の品評会での受賞歴やレストランやデパートで評価が高いことを知り、生産者はより良い酒米生産に向けてさらに意識を高めました。



反省会(土佐酒造との交流) 桂月感謝祭(松本社長と生産者)

  反省会(土佐酒造との交流)                  桂月感謝祭(松本社長と生産者)


  • 活動の成果

(1)栽培面積、生産量の増加

 

 ‘吟の夢’の栽培面積、生産量は、平成28年度には9.8ha、49.3t(特別栽培は未実施)でしたが、平成30年度には25.5ha、89.4t(うち特別栽培7.9ha、28.2t)まで増加しました。さらに令和元年度には栽培面積、生産量とも拡大見込みです。
 地産外商に向けた高知県産業振興計画地域アクションプランでは、「地元酒米にこだわった酒造り」として、酒造会社が新工場を整備し、生産体制が強化され新たな雇用が創出されました。


(2)玄米品質の向上

 

 平成29年度には、度重なる台風が収穫期に襲来したことから、収穫時期を早めたり、倒伏等により一等米比率は16.9%でした。その後、生産者個々に品質と栽培状況を分析し、施肥管理等を見直したことで、平成30年度の一等米比率は、45%に向上しました。
 高知県酒米品評会‘吟の夢’部門では、平成29年度には入賞者がいませんでしたが、平成30年度には3名が入賞しました。



第3回酒米品評会表彰式

                   第3回酒米品評会表彰式


(3)特別栽培基準に併せた出荷体制の整備

 

 特別栽培が生産者に理解され、確認責任者2名を設け、生産ほ場の状況や、栽培管理記録を確認する体制が整いました。


(4)「土佐酒造」と生産者の信頼関係の構築 

 

 「土佐酒造」の職員が 現地検討会に参加する体制となったことで、生産現場の苦労、課題を共有することが出来るようになりました。また、反省会では社長と直接意見交換することにより、地産外商に対する「土佐酒造」の想いや目指すべき方向性を共有出来るようになりました。


  • 今後の展開

 平成30年度の一等米比率は向上しましたが、農家間の品質差が大きいことが課題となっています。そこで、施肥方法の統一や、適期に病害虫防除を行うことで、品質の高位平準化を図っていきます。また、日本酒の高付加価値には、化学合成農薬を使用せず、有機質肥料で栽培した酒米についても検討していく必要があります。さらに、令和元年度には、大規模農家の労力分散や高標高地での栽培適性を検討するため、県育成酒米新品種‘土佐麗’の現地試験を実施しています。収量・品質面が良好であれば、次年度には「土佐酒造」と連携して醸造試験を実施し、新品種の導入に向けて検討していく予定です。