ページの先頭です。

メニューを飛ばしてメインへ

>> ホーム >> グリーンフォーカス 平成31年4月号

グリーンフォーカス 平成31年4月号

高知県農業技術センター : 2019/04/01

酒造適性と酒質が優れる水稲早生酒造好適米品種‘土佐麗(とさうらら)’の育成と普及


  • 1.はじめに

 近年、高級酒生産では原料の原産地が注目されるようになっており、本県産酒造好適米のニーズは高まっていますが、酒造原料用県内産米の使用率は約3割にとどまっています。この理由の一つに、県内の水稲生産の中心である平坦部での普及を想定して育成された早期栽培用品種‘風鳴子’は醸造適性は優れるものの、高度精白時の砕米が多く、酒造メーカーからの要望は増えず、また、生産者側も品質や収量が安定しない‘風鳴子’を積極的に導入しなかったことが挙げられます。このことから、県産酒造好適米の使用割合の更なる拡大を図るため、酒造メーカー、生産現場から求められる平坦部向け新品種の開発に着手し、2018年に高度精白可能な酒造適性の優れる多収性品種‘土佐麗’を育成しました。



比較1

写真1 草姿の比較「土佐麗」(高育酒80号)   写真2  玄米の比較(左:土佐麗、右:風鳴子)」



  • 2.品種育成の経過

‘土佐麗’は2009年に高知県農業技術センターにおいて、高精白しても砕米率が低い酒造適性の優れる好適米品種の育成を目的に、「高系酒326(風鳴子/杜氏の華)」を母本、‘ひとめぼれ’を父本として人工交配を行った組合わせから育成されました。2010年にF1を養成し、葯培養を行いました。2011年3月にA1世代の自然倍加個体から採種し、69系統をえたのち、2012年にはA3世代で立毛評価と品質により、6系統を選抜し、A4世代で熟期、品質、タンパク質含有率が良好であった4系統に「高育酒356〜359」の高系番号を付与しました。2015年から奨励品種決定調査基本調査予備調査に供試し、その結果も良好であった「高育酒356」を「高育酒80号」と名付け、2017年に奨励品種決定調査基本調査本調査に供試し、併せて現地調査に編入しました。  
2013年以降、葉いもち、穂発芽性、耐冷性の評価を、2015年からは工業技術センターにおいて、酒造適性、小仕込み醸造特性試験を実施した結果、有望と認め、2018年9月に育成を完了し、同年11月には品種登録の申請を行っています。
なお、‘土佐麗’は、「高知とわかりやすい、また、優しさとうるわしさをもつお米、女性の間で日本酒の人気が高まる中、愛着を持てる名前にしたい。」との想いから名付けられました。


  • 3.品種の特性(表1)

1) 形態的特性(標肥栽培での比較)
草型は偏穂重型で、稈の太さ、稈質は「中」で、‘風鳴子’と比較し、稈長は5cm程度、また、‘コシヒカリ’より11cm程度短く、穂長は‘風鳴子’よりやや短いですが、穂数はやや多い特徴があります。また、芒は無く、ふ先色は「黄」、穎色は「黄金色」で、粒着密度は「中」です。

2) 生態的特性(標肥栽培での比較)
成熟期は‘風鳴子’と同じかやや早く、‘コシヒカリ’より4日程度早く、温暖地西部では「かなり早(早生の中)」に属する粳種です。耐倒伏性は「中」で‘コシヒカリ’より強く、収量性は‘風鳴子’より高くなっています。葉いもち圃場抵抗性は、‘風鳴子’と同じの「中」、脱粒性は「難」、穂発芽性は「中」を示し、穂ばらみ期の耐冷性は「極強〜強」で‘風鳴子’より強いことも大きな特徴です。

3) 品質、酒造適性
玄米千粒重は‘風鳴子’より1g程度軽いですが、‘コシヒカリ’より5g程度重くなっています。品質は‘風鳴子’と同程度に良好で、‘コシヒカリ’より優れています。玄米タンパク質含有率は‘風鳴子’と同程度で、‘風鳴子’と比較して、粒長は短いものの、粒厚はやや厚く、粒厚2.2mm以上の玄米粒厚割合が高いことも特徴です。また、‘風鳴子’より、心白の発現程度は高く、心白の大きさを示す心白率も「中」に分類されます。なお、工業技術センターで実施した酒造適性、醸造適性試験において、‘風鳴子’に比べ、砕米率が低く、カリウム含有率が高いことがわかりました。



  • 4.普及の見通しとブランド化に向けて

 ‘土佐麗’は‘風鳴子’に比べて、収量性が優れ、心白の発現は良好です。また、心白は大きすぎず粒厚も厚いため、精米時の砕米率が低く、小仕込み醸造試験での官能評価も‘風鳴子’並に優れます。このように多収性で高度精白が可能なオリジナル品種であることから、生産農家においては所得の向上が、また、酒造業においては県産特定名称酒のブランド化への寄与が見込まれ、現状では低い県産原料米使用率の向上が期待されます。2018年には搗精工場による精米(玄米2t、50%搗精)でも砕米率が低いこと、また、工業技術センターが開発した新酵母を用いて、酒造メーカー(1社)による試験醸造が実施され、「フレッシュでスッキリとした味わい」との評価を受けています。酒造メーカーからの評価が高まり生産の要望量が増えれば、県内の水稲生産の中心である平坦部でニーズに対応した作付け拡大を図ることができます。


  • 5.おわりに

‘土佐麗’は2019年2月に奨励品種として採用され、4ha程度平坦部に導入し、段階的に作付けを拡大して2023年には40ha普及の予定です。農業技術センターでは、県内の関係機関と連携して普及していくなど、新たな酒造好適米ブランド品種の定着に向けて取組を進めていきます。


表1