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グリーンフォーカス 平成31年2月号

農業技術センター果樹試験場 : 2019/02/01

「土佐文旦」の人工受粉省力化技術

  • はじめに

 「土佐文旦」の着果安定のためには受粉作業が不可欠です。受粉作業は開花期間中の10日程度の間に、1花ずつ受粉に適した花を選んで梵天等で受粉しなければならず労力が集中します。近年は高齢化に伴い雇用が十分に確保できない事態が懸念される他、開花期間中に連続した降雨があり受粉作業が不十分となる年もみられています。そこで、従来の梵天等による受粉に代わる省力的な受粉技術を開発しましたので紹介します。

  • 電動受粉器とその使い方

 電動受粉器を利用すれば人工受粉作業を省力化できます。今回使用した電動受粉器はキウイフルーツやナシの受粉に利用されている電動花粉交配器のニューポーレンダスター((株)アグリ、写真1)です。手元のスイッチを押すだけで花粉が噴射され受粉することができます。電源はポケットに入るサイズの小型の充電式バッテリーです。また、つまみを操作すれば噴射させる風量を変えられます(写真2)。受粉を行うときは柱頭に狙いを定めて噴口を5cm程度の距離まで近づけて噴射し、石松子により柱頭が薄く色付くのを確認します。受粉する花は慣行法と同様に当日〜前日に開花した2〜3花を花房内で選びます。花粉は粗花粉から葯ガラを除き花粉粒だけを取り出した精製花粉を用い、発芽率45〜50%のヒュウガナツ花粉1に対して増量剤の石松子9の割合(希釈倍率10倍)で混ぜて使います。なお、希釈倍率は花粉の発芽率を調査したうえで調整することが必要です。


ニューポーレンダスター

               写真1 電動花粉交配器(ニューポーレンダスター)


つまみで風量を調整

               写真2 つまみで風量を調整

  • 粉末受粉による着果率と収量

 本稿では粉末を電動受粉器により噴射する方法を粉末受粉、梵天や筆(絵筆)などによる受粉を筆受粉と呼びます。「土佐文旦」に粉末受粉をした結果を表1に示しました。粉末受粉では筆受粉より着果率はやや劣りましたが、収量は同程度となりました。種子数は筆受粉よりやや少ないものの、平均果実重が同程度であり果実肥大への影響は小さいと考えられました。糖度やクエン酸含量など果実品質への影響はみられませんでした(データ省略)。


表1
  • 粉末受粉に必要な花粉の量

 粉末受粉を行ったときに使ったヒュウガナツ花粉は筆受粉に比べて4倍程度必要でした(表2)。したがって、受粉作業は省力化できるものの花粉の採取労力は増加します。花粉の希釈倍率を20倍にすれば花粉の使用量を10倍の半分に減らせますが、希釈倍率を高くすると着果がやや劣り、1果に入る種子数も少なくなります。受粉時に花粉の発芽率を確かめ、その発芽率を希釈倍率で割った値が3〜5%程度になるよう調整してください。例えば、発芽率40%の花粉を10倍希釈なら40%÷10=4%となります。


表2
  • 粉末受粉の所要時間

 粉末受粉の所要時間を表3に示しました。粉末受粉では筆受粉の31%の受粉時間で完了しました。受粉に回る回数については、1輪の花の適した受粉期間は3日程度で1樹の開花期間が10日間ほどであることから、粉末受粉でも3回以上は受粉に回りたいところです。


表3
  • まとめ

 「土佐文旦」において粉末受粉の着果効果は慣行法である筆受粉と同等であり、受粉作業にかける時間を減らせることがわかりました。花粉の使用量は多くなりますが、受粉労力が確保できない場合や、短時間で受粉をしたい場合には有効な受粉方法と考えます。ぜひ、ご活用ください。