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グリーンフォーカス 平成30年9月号

中央西農業振興センター 高吾農業改良普及所 : 2018/09/01

ニラ産地を守る!〜調整作業の共同化による経営発展〜

  • 1 普及活動の課題・目標

(1)対象の概要
 当普及所の管内は、日高村、佐川町、越知町、仁淀川町の四町村であり、高知県の中央部を流れる仁淀川上流域から中流域に位置する中山間地域です(図-1)。
ニラは昭和50年に佐川町で導入され、越知町、仁淀川町まで栽培が拡大しました。佐川町は、主にハウス栽培で6月を中心に定植、年6回程度収穫し、露地栽培と組み合わせて周年栽培しています(写真-1)。越知町、仁淀川町は、主に露地栽培で年4回程度収穫しています。
 JAコスモスニラ生産部(以下、生産部)の平成28年度の栽培面積は12.8ha、栽培戸数は44戸です。栽培面積、栽培戸数ともに減少傾向にあり、特に、露地栽培では高齢化により大幅に減少しています(図-2)。
 一方、ニラは初期投資が少なく、栽培しやすいため、平成22年以降毎年1名以上がハウス栽培を中心に新規就農しています(表-1)。



図-1 写真1 図2 表1

(2)活動の背景、課題・目標の設定
 ニラの生産では、総労働時間の85%以上を調製作業(”そぐり”と呼ばれる外葉などを取り除く作業と100g束にする計量結束作業)が占めています(写真-2)。調製作業の労働力不足は、収穫遅れによる品質低下や、収穫できず刈り捨てにつながり、経営が不安定となります。
管内では半数以上の生産者が調製作業を外部労働力に委託していますが、近年、調製作業者が高齢化のため減少しており、新たに確保することが難しくなってきています。このため、ニラ栽培で新規就農者を積極的に産地に呼び込むこともできなくなってきました。
生産部の課題である、(1)調製作業労働力の確保、(2)品質向上と生産安定、(3)担い手の確保、を解決するためには、機械化も含めた共同出荷調製作業の仕組みづくりが必要でした。数戸の生産者は個別にそぐり機を導入していたものの、自動計量結束機(以下、結束機)までの導入に至っておらず、調製作業の省力化にはつながっていませんでした。そのため平成27年に、調製作業の労働力不足で困っている生産者から調製作業の委託体制として、そぐり機と結束機を備えた共同出荷場整備の要望がJAに出されました。
そこで、普及所は4カ年計画で「ニラ産地力の強化と経営安定」として、調製作業の共同化による生産者の経営安定に取り組むこととしました。


写真2
  • 2 普及活動の内容

(1)共同調製作業の仕組みづくり
 ア.支援体制の整備
 普及所の野菜担当、経営・担い手担当、JAコスモス営農指導員、佐川町役場の事業担当者で、ニラチームを構成しました(図-3)。チーム会で検討した出荷場整備の内容や進捗状況を生産部共同出荷場検討会で報告し、生産部月例会や役員会の場を活用することで生産者と関係機関が意見交換を行い、整備計画に生産者の意向を反映させました。


図3

イ.生産部員の意向及び出荷経費の実態調査
 生産部全戸を対象に「共同出荷場を利用する意向」についてアンケートを実施したが、回収率は60%と低く意向が十分に把握できませんでした。そのため、再度個別巡回による聞き取り調査を行いました。その結果、委託希望量を把握することができました。また、共同出荷場を利用したくない生産者が経費の上昇を懸念していることが明らかとなりました。
そこで、そぐり機の個人所有や外部労働力の有無など条件の異なる6戸を抽出し、出荷経費の詳細な聞き取りを行いました(写真-3)。その結果、生産者が出荷経費と考えていなかった外部労働力の委託先への配達労賃や配達専用車の維持費、運搬経費などを含めた試算から、1束当り9.6〜13.1円であることを説明しました(図-4)。


写真3 図4

ウ.先進事例調査
 生産部員と共に県内外の先進事例調査を行いました。県内ですでにそぐり機と結束機を導入しているJA高知はた集出荷場の訪問を重ね、作業員や生産者から導入後の出荷体系や作業体制などの変化を聞き取りました(写真-4)。先進地の取り組みを生産者自身が直接確認できたことで、共同による機械化の必要性や効果の理解が深まり、共同出荷場整備に向けた動きが加速しました。
また、県外結束機メーカーに依頼し説明会を開催しました。新型結束機の情報を収集し、処理能力をもとに運用コストを試算、生産部役員に提示して、機種の選定を促しました。


写真4

エ.共同出荷場利用経費の試算と周知
 個人でそぐり機を所有する生産部員の協力を得て、調製作業未経験の普及指導員、営農指導員が機械の処理能力を調査しました。その結果、処理量は機械性能の7割程度となりました。あわせて処理量と委託希望量から、出荷場のライン規模を試算しました(写真-5)。
これにより、共同出荷場利用経費(以下、出荷場経費)は、作業員の習熟度やニラの品質により機械の処理能力が変動するため、1束当り9.2〜13.3円と試算しました。また、人件費の占める割合が大きいため、葉先に障害や曲がりのない作業性の良い高品質なニラを出荷することでコストの低減につながることを共同出荷場検討会で強調しました。説明資料は、1束当りに換算して作成し生産者が理解しやすいように工夫しました。
出荷場経費が現状の出荷経費を極端に上回らないことが理解され、生産者の経費上昇への懸念を払しょくすることができました。また、出荷場経費に関わる具体的な条件を説明することで、作業動線や出荷体制など経費を下げる工夫について農家から意見が多く出されるなど、話し合いが活性化しました。


写真5

(2)品質向上に向けた栽培管理の徹底
 平成28年に、月毎の落等要因を調査した結果、黄化葉や葉先の障害であることが明らかとなりました(図-5)。落等により販売単価は1割程度下がることから所得に大きく影響します。また、調製作業効率が極めて低下するため、共同出荷場への受け入れができない恐れもあります。このため、月例会では、目慣らし会を行い、当月の落等原因を明らかにするとともに、それらの対策として肥培管理や適期収穫、病害虫対策など先取って指導し、品質向上を目指しました。


図5

(3)産地主導の新規就農者募集の開始
 ニラの経営規模20aでは、調製作業の労働力として3名程度が必要です。近年生産部は、産地内では新たに調製作業者の確保が難しいことから、新規栽培者を積極的に参入させることに難色を示していました。しかし、共同出荷場が整備され、労働力の確保に心配がなくなったことを契機に、生産部として新規就農者を募集することにし、産地が望む人材や産地の研修体制等を記載した「産地提案書」を作成しました。平成29年には、県外の新規就農フェアに初めて生産者が参加し、Uターン、Iターン希望者にニラでの新規就農者の募集を開始しました。

  • 3 普及活動の成果

(1)共同出荷場の整備
 生産部の合意が形成され、平成29年3月に共同出荷場である、JAコスモスそぐり・計量結束センター(以下、そぐりセンター)が設立され、同5月に稼働を開始しました(写真-6)。

(2)支援体制の強化
 平成30年に、より活動を活発にするためにこれまでのニラチームに生産部員も参画する形で、そぐりセンター運営委員会を立ち上げ、利用実績の確認や効率的な運営方法の検討を行っていくこととしました。

(3)部会平均収量の増加
 そぐりセンターに安定的に調製作業を委託できるようになり、生産者は栽培に集中できるようになりました。これまで収穫が遅れて刈り捨てていたニラを収穫することができるようになるなど、適期に収穫できることから収穫回数が増え、生産部の10a当たり平均収量は、平成27年度の4.0tから、平成29年度に4.9tまで増加しました。
また、平成30年の委託量調査から、平成30年6月〜平成31年4月のそぐりセンターへの委託量は168tになり、平成29年の同時期と比べ2.2倍に増える見込みです。
 そぐりセンターの作業効率を上げ、出荷場経費を下げるためにも「品質の良いニラを作ろう」という声が多く聞かれはじめ、生産者の品質向上への意欲は高まっています。

(4)産地主導の新規就農者募集の開始
 県外の新規就農フェア等で、Uターン、Iターン希望者にニラでの新規就農者を募集した結果、平成29年、30年の2カ年で、4戸が新規就農した。調製作業を委託できるそぐりセンターが大きなアピールポイントとなり、2戸が全量委託する計画です。そぐりセンターの存在が当地域でのニラでの就農を後押ししています。

(5)規模拡大意向生産者の増加
 そぐりセンター稼働開始から1年が経過した平成30年6月に、50歳代までの生産者を対象に規模拡大について意向調査を実施しました。その結果、そぐりセンターを利用している3戸が新たに規模拡大の意向を示し、そのうち1戸は31年に新たに施設を増築します。

 以上のように稼働開始1年で、生産部が主体となった活動となり産地が活性化しました。また、当初そぐりセンターの利用を予定してない生産者が調製作業の労働力が不足した時や、急病で入院した時など、困ったときの受け皿としても機能を発揮しています。


写真6
  • 4 今後の普及活動に向けて

(1)生産者の経営安定
 出荷場経費について、そぐりセンターの稼働前後を比較して、出荷場経費の低減効果をデータで示します。現在そぐりセンターを利用していない生産者に利用を誘導し、経営安定を目指します。

(2)品質向上への支援
 明らかになった落等要因をもとに、引き続き月例会を通して事前の対策等の栽培指導を徹底します。

(3)新規就農者の確保・定着支援
 就農希望者の研修を受け入れる指導農業士を育成し、生産部の受入れ体制を充実させるとともに、県内外の新規就農フェアに積極的に参加して新規就農者を確保します。また、定期的な個別巡回による栽培管理指導と経営面談により、経営実態の把握、課題の整理、今後の方向性を検討し経営安定させることで新規就農者の定着を支援します。


(4)そぐりセンターの作業効率改善
 ニラの委託量が多い時期には調製作業に時間がかかるため、作業効率の改善が課題です。ビデオ撮影等によって作業工程を診断、分析し、改善を支援します。
 
 以上の四点によって、高品質なニラの出荷、新規就農者の確保・定着、そぐりセンターの安定した運営を支援することで、ニラ産地の維持・拡大と生産者の経営発展を目指します。