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グリーンフォーカス 平成30年6月号

中央東農業振興センター 嶺北農業改良普及所 : 2018/06/01

   若手農業者の定着で地域活性化〜有機栽培トマト農家の経営安定に向けた取組〜

  • 地域の現状(背景)

 高知県長岡郡大豊町は、四国の中央部、吉野川の上流域にあり、標高200〜1,400mの山岳地形です。経営耕地は、標高200〜800mの中山間地に点在しています。  
 農業経営の中心は、水稲、夏秋野菜(シシトウ、ミニトマト等)、ユズ等となっており、近年、県内市町村の中で高齢化率が最も高い状況(2015年で55.9%)となるなど高齢化が急速に進んでおり、担い手の減少が続いています。
 一方、近年、IターンやUターンによって夏秋ミニトマトを中心とした有機農業を志向する新規就農者が増えています(図1)。 
 これら農業者は、20〜50歳代の青壮年で意欲的ではありますが、栽培技術が未熟なため経営が不安定な状況にありました。
 そこで、農業改良普及所では、平成25年度から「有機栽培トマト農家の経営安定」を課題化し、JAや大豊町と連携して、地域に適した有機栽培ミニトマトの栽培指針作成や講習会等による栽培技術向上への支援の他、組織化への誘導などに取り組んできました。


大豊町での有機栽培農家推移
  • 活動内容

1 有機栽培と慣行栽培の実態把握及び「栽培指針」の作成・改訂
 有機栽培でのミニトマトの栽培技術が体系化されていなかったことから、「栽培指針」作成に向けて有機栽培と慣行栽培の実態を把握しました。その結果、有機栽培の栽培方法は慣行栽培と変わらないが、病害虫防除に使用できる薬剤が限定されるため、早期防除がより重要であること、また、出荷規格の厳格化によって収穫が遅れ、契約販売以外の販路がないため「収穫遅れ」による裂果が発生しており、出荷先の拡大が必要であることが明らかになりました。
 実態把握で得られた情報を基に有機JAS認証に対応させた「栽培指針」を作成しました。
 また、「栽培指針」に基づく実証ほを設置し、病害虫防除等の改善点を加え「栽培指針」を改訂しました。
 さらに、出荷規格を簡素化するため、JAへの出荷を誘導し、3戸がJAミニトマト部会に入会しました。


栽培指針

        「栽培指針」

2 収量増加に向けた取組
 作成した「栽培指針」に基づき、基本栽培技術や病害虫の早期防除を徹底しました。
 また、土壌のpH値やEC値、植物体の硝酸イオン濃度を定期的に測定し、生育中期以降に肥料が不足していることを確認しました。個別巡回指導や現地検討会等でデータに基づく施肥管理改善を指導しました。

3 農家間の交流推進と組織活動推進
 有機栽培農家は個人出荷しており、農家間で情報交換する場が少ない状況でした。
 そこで、農家間の交流を推進するため、現地検討会等を開催し、意見交換する場を設定しました。その後、交流を繰り返す中で、農家から「トマト農家が集まり、栽培技術を研鑽しあえるような組織を作ろう」という声が出ました。そこで、普及所が調整役となって、関係機関とも連携しながら農家の意見を集約し、組織の目的や将来方向について合意形成し、規約の作成など組織設立に向けて支援しました。


現地検討会

       現地検討会

  • 地域の動きや活動の成果

1 対象農家の経営安定へ向けた取組の成果
 「栽培指針」を実践した農家では10a当たりの収量が平成25年には3tでしたが、平成28年には6tと倍増しました。また、対象農家全体の10a当たりの平均収量は、平成27年には3.8tでしたが、平成28年には4tに増加しました。

2 農家間の交流推進と組織活動推進の成果
 平成28年5月に有機栽培農家が中心となった組織「大豊とまと」が設立されました。この組織の目的は、栽培技術の相互研鑽、収量向上による経営安定、共同出荷による有利販売です。同組織では、自主的な勉強会や県内外の先進地視察などを開催し、技術向上に向けた取組を開始しています。農家からは、「一人で悩むより、仲間と教え合えるのは勉強になる」という声がでるなど、組織化による効果が見られ始めています。


設立総会 視察研修

     「大豊とまと」設立総会               「大豊トマト」視察研修


3 JAミニトマト部会加入による販路拡大と部会活性化
 現在5名の有機栽培農家がJAミニトマト部会に所属していますが、このことが部会活動の活性化につながっています。平成25年にはJAミニトマト部会のほとんどの生産者が70〜80歳代の高齢者で、生産者数が減少していました。
 有機栽培農家の加入により、(1)JA部会では「若い人の参加で活気ができる」、(2)有機栽培農家では「新たな販路の確保につながる」等、双方にとってメリットがありました。現在、全ての部会役員を有機栽培農家が務めており、部会の先導役として活性化につながっています。


JAミニトマト部会目慣らし会

      JAミニトマト部会目慣らし会

  • 今後の展開

 今後の課題として、収量が増加したものの、依然として農家間の収量差が大きいので、更なる収量向上と生活が安定する収益の確保が求められています。このため、各農家に応じた経営改善、夏期高温対策技術や病害防除コントローラによる病害対策技術などの新技術導入等による収量向上や生産の安定に取り組む必要があります。また、産地の規模を維持・拡大するためには、新規就農者の確保・育成が求められます。