グリーンフォーカス 平成30年3月号
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東洋町のポンカン産地の振興について
- 〈地域の現状および取り組みの背景〉
東洋町のポンカンは高知県内で最大の産地(H28:面積35ha、生産者30名、生産量約1,000t)で食味の評価も高く、町の基幹品目となっています。
ポンカンの原産地はインドスンタナ地方とされており、日本には明治中期に導入されたといわれます。東洋町では古くから栽培されており、昭和7年頃にはすでに栽培されていたという記録が残っています。昭和43~46年に国のパイロット事業を導入し、山地の大規模造成が行われました。その後、昭和55年には東洋集出荷場が整備され、現在の産地の基盤ができあがりました。
東洋町のポンカン園地の多くは海岸に面した日当たりの良い傾斜地にあり、栽培に適した条件に恵まれています。ポンカンの収穫は、色付き始める12月上旬から始まり、寒害を避けるため年内に一気に収穫します。収穫直後のポンカン果実は酸味が強いため、一定期間貯蔵庫に入れて成熟させます。出荷は、酸味がまろやかになった果実から順次出荷し、12月下旬から2月下旬まで続きます。
従来の出荷は、各生産者が予備選果してJAの集出荷場に持ち込んだポンカンを箱詰して出荷していますが、多くの生産者が個人で宅配や直販所での販売、市場出荷を行っているため、JA出荷は生産量の3割にとどまっています。さらにポンカンは隔年結果をおこしやすいため、生産量は年により150tから400tと変動が大きく、そのうえ単価も安定しておらず、生産者の所得に大きく影響を及ぼしています(図1)。また、生産者の高齢化に伴い、平成16年には44haあった栽培面積が平成28年度には35haまで減少しています(図2)。
このような販売・生産状況の中、生産者からはロットを拡大して安定した販売につなげたい意向がありました。また、選果作業が人の目による等級選別のため、生産者間の糖度・酸度のバラツキが多く、市場関係者からは果実品質のバラツキをなくし、食味を揃えてほしいという強い要望が寄せられていました。特に出荷果実に酸味の強い果実が混ざるとポンカン全体の評価が下がるため、ポンカン産地を維持するためには解決しなければならない課題でした。
出荷果実の食味・品質を揃えるためには、他の柑橘類ブランド産地では装備が常識となっている光センサー選果機の導入が必須ですが、産地が縮小している中、多額の導入コストがかかると生産者の負担が大きく、賛同が得られないことが予想されました。
そこで関係機関と協議・連携し、コストを抑えた光センサー選果機の導入と一元出荷による出荷ロットの確保に取り組み、ポンカン産地の維持を図りました。
- 〈活動内容〉
1 関係機関との連携と基礎データの収集
ポンカンの集荷を行っている東洋町のJA集出荷場が他の集出荷場と統合することが決まったことを受け、平成25年度に改めて光センサー選果機の導入についてJAと協議を開始し、光センサーの導入を部会に提案していくことを確認しました。併せて、果実分析を行い、糖度・酸度等の基礎データの収集を開始しました。
2 部会の合意形成
平成26年度からは普及計画にも位置づけ、より計画的な取り組みを開始しました。光センサー選果機の導入コストを抑える方法として、安芸市にある安芸ユズ加工場の既存のユズ選果ラインの一部を活用することをJAと協議・検討しました。ユズの選果は12月中旬には終了するため、この時期以降にポンカンの選果を行うことで選果機の稼働率向上にもつながることから、ユズ選果ラインへの光センサー設置と一元的な出荷・販売に取り組むことにJAの合意が得られ、具体的な計画の作成を開始しました。
その後、JAと作成した光センサー選果を活用した販売戦略、生産者負担等の試算、東洋町から安芸ユズ加工場への横持ち方法等の詳細な計画を生産者へ提示しました。併せて光センサー選果機の導入に対するアンケートも実施しました。アンケートの結果から、導入に対して反対意見の生産者や十分に内容を把握できていない生産者もいたため、全戸を対象に個別訪問を実施しました。この中で前年から収集していた果実分析結果のデータをグラフで示し、光センサー選果の必要性とメリット等について丁寧に説明しました。これにより、多くの生産者の合意が得られ、一元出荷及び光センサー選果機導入に対して部会の承認が得られました。
光センサー選果機導入についての部会への説明
3 光センサー選果機の導入実現
平成27年度には光センサー選果機の整備事業について検討が始まりました。コストを抑えるために補助事業の活用を検討する中で、国の補助事業である「攻めの農業実践緊急対策事業(集出荷・加工処理合理化プラン)」の活用が望ましいと思われたため、事業費負担割合の資料等を作成し、JA、東洋町、同様にポンカン産地である室戸市に対して説明・調整を行いました。これにより市町村の継ぎ足し補助の予算が組まれ、平成28年3月末に安芸ユズ加工場のユズ選果ラインに、光センサー選果機が設置されました。
4 光センサー選果機の活用と一元出荷による新ブランドの確立
平成28年度の出荷果実から光センサー選果機を活用することとなりましたが、ポンカンの選果基準値(糖度・酸度の数値)が不明確でした。そこで、平成25年度から継続して収集した果実分析結果の基礎データを基に、光センサー選果基準値を作成するとともに、実際の選果機の運用方法や出荷規格の決定等を支援したことで、新出荷体制へのスムーズな移行につながりました。これにより、平成28年12月から本格的な光センサー選果が開始され、食味のバラツキが少ない新ブランド「土佐よさこいポンカン」の市場出荷が始まりました。
たわわに実ったポンカン 「土佐よさこいポンカン」の箱
- 〈活動成果〉
1 市場ニーズに応じた販売の実現
市場から要望されていた「果実品質・食味の均一化」を実現することができ、市場ニーズに応じた販売につながりました。また、東洋町、室戸市のポンカンを安芸の柚子集出荷場に集めるよう出荷を一元化したことで、出荷ロットが増大し、販売力の強化が図られました。
2 出荷果実の品質の見える化
光センサー選果機の導入により、生産者が出荷した果実の内容品質(糖度・酸度)を等級毎の出来高で一定把握できるようになりました。特に出荷開始すぐの果実は、成熟が十分にされておらず酸度が高いものが比較的多くあるため、そういった果実の割合がどの程度あるのか、その年の果実がどういった傾向にあるのかを客観的に見れるようになりました。
- 〈今後の課題〉
1 選果基準値の再検討
光センサー選果機を活用した出荷の取り組みはまだ開始したばかりです。平成28、29年度と取り組んだところ、気象条件等により年によって果実の糖度・酸度が大きく異なることが分かりました。平成29年度に28年度の選果基準値で選果をしたところ、食味のバランスがとれていても、下級品に落ちる果実が多くでました。この結果を受け、基準値を再検討していくことが課題となっています。
2 等級毎の出来高データの活用方法の検討
果実の酸度が高く、等級が下がる割合は生産者によって異なります。これは果実の酸の抜けやすさや、抜ける時期は栽培管理や収穫時期、園地の条件によって差があるためです。そこで、この等級毎の出来高データを生産者に提示し、収穫時期や出荷時期、初期に出荷をする園地の選定や栽培管理の指導・支援に活用できる方法を検討していきたいと考えています。
3 担い手の確保
生産者の高齢化が進み、栽培面積の減少に加えて栽培管理が行き届いていない園地が増加しつつあるため、部会・関係機関と連携して担い手確保・育成に向けた仕組み作りに早急に取り組んでいきたいと考えています。
光センサーの基準値を確かめる様子 未来の後継者?の保育園児の収穫体験
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