ページの先頭です。

メニューを飛ばしてメインへ

>> ホーム >> グリーンフォーカス 平成29年5月号

グリーンフォーカス 平成29年5月号

中央西農業振興センター 高知農業改良普及所 : 2017/06/30

1.地域の概要と課題の背景

JA高知市三里園芸部(高知市仁井田)は、昭和55年からグロリオサの栽培を開始し、現在は39戸延べ39ha(平成29園芸年度)で年間約350万本の生産出荷をしています。出荷量は国内主要市場の7割を占めており、花き産地では全国でも少ない共撰共販体制をとることで、生産の効率化と品質の安定を図っています。
現在の主力品種である赤色大輪系品種の‘サザンウィンド’は、茎の硬さとボリューム感において、市場評価が高い一方、他の品種よりもミカンキイロアザミウマの被害が大きく、効果的な薬剤も少ないことから、農薬に頼らない害虫防除技術の確立が求められていました。周年栽培するグロリオサにおいては、アザミウマの侵入を防ぐ防虫ネットの設置は、夏場の高温による徒長や蕾の壊死といった品質低下や、労働環境の悪化が懸念され、導入が進んでいない状態です。
そこで、防虫ネットとハウス内温度を上げにくくする遮熱資材を併用することで、夏場にも品質を低下させないアザミウマ防除技術を検討しました。


防虫ネットと遮熱資材の実証ほの外観 切り花品質調査時のハウス風景

2.課題解決に向けた活動内容と成果

(1)ハウス内温度の確認
0.8mm目合いの赤色防虫ネットと、遮光率20%の遮熱資材を併用することで、ハウス内温度が慣行栽培同等に維持できるかを確認しました(なお、防虫ネットは天窓・側窓部に導入、遮熱資材はハウス上部全面に展張)。その結果、野外の最高気温が30〜35℃程度の時期でも、慣行栽培である6mm×8mm青色防風ネットのハウスとほぼ同等の温度を維持することができました。しかし、2℃程度高くなる日も数日あることがわかりました。


(2)ミカンキイロアザミウマの発生推移の確認
青色粘着トラップを使い、試験区、対照区、野外のアザミウマの発生推移を確認し、ハウス内への飛び込みが軽減されるかを調査しました。その結果、試験区では調査期間中、ごくわずかしか捕殺されなかった一方で、対照区は野外と類似した発生傾向であったことから、0.8mm目合いの赤色防虫ネットが、ミカンキイロアザミウマ防除対策として有用であることが確認されました。

(3)切り花品質と新塊茎品質への影響を確認
遮熱資材を併用しても、ハウス内が高温になることが懸念されたことから、切り花と養成後の新塊茎に高温の影響があるかを確認しました。その結果、蕾の壊死や徒長といった高温による影響はなく、アザミウマの被害が減少したことで、品質は大きく改善されました。また、新塊茎の肥大程度も対照区と差がなく、高温期に発生しやすい二次茎の発生も対照区よりも少なかったことから、高温期でも遮熱資材を併用することで、切り花品質の影響がないことが確認されました。


調査した掘り上げ直後の新塊茎 二次茎ができた様子

(1)実証ほでの現地検討会
花卉部会の中で、実際に防虫ネットと、防虫ネットに遮熱資材を併用した2つのハウスに入ってもらい、暑さや明るさを体感してもらいました。ハウスの中では、「やはり防虫ネットを張ると、防風ネットのハウスより暑い」「思ったよりも暑くない」「天窓にも防虫ネットを張った方が効果は高いだろうが、暑さとの戦いになりそうだ」「遮熱資材は遮光資材とは違ってかなり明るい」といった様々な意見がありました。このように、ハウスを体感してもらい、実際に使った生産者の声を聞くことで、より防虫ネットへの理解を深めることができました。

(2)勉強会での実証ほの試験結果報告
勉強会の中で、切り花品質や新塊茎品質にも高温の影響はなく、暑さも概ね慣行と同等であることを報告しました。また、経営試算の結果、秀品率が20%向上すると、防虫ネットと遮熱資材の導入コストが増えても、年間で11万円の売り上げアップが推定されることを報告しました。
その結果、新たに8名が防虫ネットを導入することになり、それまで3戸23aだった防虫ネット導入率がH29年3月末には11戸1.5haまで拡大しました。

3.残された課題と今後の展開

今回の実証試験は、初めての試みであったことから、切り花品質とハウス内温度に比較的影響が少ないと思われる、0.8mm目合い防虫ネットと、最も遮光率が低い20%遮光の遮熱資材を使いました。その結果、品質を上げながら概ね慣行同等の温度を維持することができましたが、猛暑日が続くような時期には、対照区よりも高温になる日もあり、より安定した温度抑制効果を得るためには、遮光率の高い遮熱資材の検討が必要であると思われました。
 そこで、今後は防虫ネットを導入した場合の最適な遮熱資材の検討が必要であり、より安定的に温度抑制効果が期待できる遮光率30〜40%の遮熱資材の温度抑制効果と品質への影響を調べ、グロリオサに最適な遮熱資材を選定する予定です。この結果をもとに、防虫ネットと遮熱資材の普及を図り、今以上に安定した品質で市場から信頼される産地となるよう、支援していきます。


防虫ネットハウスでの現地検討会