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グリーンフォーカス 平成28年8月号

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農業技術センター果樹試験場 : 2016/08/01

「土佐文旦」の白色透湿性シートマルチとエチクロゼート乳剤散布による糖度の向上

  • [背景]

土佐文旦のマルチ栽培

 平坦地における「土佐文旦」の栽培では、傾斜地と比べて糖度が低く、樹冠下の白色透湿性シートマルチ(以下シートマルチ)により糖度を0.6程度向上させる技術が確立されています。しかし、生育期間の天候によってはシートマルチの効果が認められない年があることから、天候に左右されず安定的に糖度を向上させる技術が求められています。そこで、ウンシュウミカンでシートマルチと併用することで糖度向上が認められているエチクロゼート乳剤との併用効果について「土佐文旦」でも検討したのでご紹介します。

  • [成果の内容・特徴]

1.8月中旬~11月下旬に樹冠下にシートマルチを行い、エチクロゼート乳剤を散布することで、それぞれを単用で処理するよりも「土佐文旦」の糖度が向上しました(表1~3)。

2.エチクロゼート乳剤の散布時期を検討した結果、満開後80日・110日の2回散布が、満開後110日・140日の2回散布よりも糖度向上効果が高いことがわかりました(表1)。


表1 シートマルチとエチクロゼート乳剤の散布時期が果実品質に及ぼす影響(2009)

 

処 理 果肉歩合
(%)
果汁歩合
(%)
Brix
(%)
クエン酸含量
(g/100g)
マルチ+エチクロゼート乳剤(満開後80・110日) 58 64 11.9 1.20
マルチ+エチクロゼート乳剤(満開後110・140日) 59 63 11.6 1.17
マルチ単用 59 62 11.3 1.18
エチクロゼート乳剤単用(満開後80・110日) 60 66 11 1.14
エチクロゼート乳剤単用(満開後110・140日) 60 64 10.4 1.14
無処理 59 64 10.9 1.14
有意性z) マルチの有無 n.s. * ** **
エチクロゼート乳剤の散布間 n.s. n.s. n.s. n.s.
注) 1区4樹、1樹5果、12月7日分析。シートマルチ期間:8月19日~12月8日。
  エチクロゼート乳剤の散布:7月27日(満開後80日)、8月26日(満開後110日)、9月25日(満開後140日)、1,000倍。
z) 分散分析により、*:5%、**:1%の危険率で有意差あり。n.s.:有意差なし。

3.また、満開後50日・80日散布と満開後80日・110日散布では糖度に差が認められないことから(表2)、満開後50~110日の間に30日間隔で2回散布を行うとが糖度向上効果があることがわかりました。


表2 シートマルチとエチクロゼート乳剤の散布時期が果実品質に及ぼす影響(2010)

 

処 理 果肉歩合
(%)
果汁歩合
(%)
Brix
(%)
クエン酸含量
(g/100g)
マルチ+エチクロゼート乳剤(満開後50・80日) 59 70 10.6 1.13
マルチ+エチクロゼート乳剤(満開後80・110日) 60 71 10.6 1.17
マルチ単用 56 68 10.2 1.13
エチクロゼート乳剤単用(満開後50・80日) 62 71 10.2 1.13
エチクロゼート乳剤単用(満開後80・110日) 62 72 10.2 1.17
無処理 62 71  9.8 1.13
有意性z) マルチの有無 ** * ** n.s.
エチクロゼート乳剤の散布間 n.s. n.s. ** n.s.
注) 1区4樹、1樹5果、12月6日分析。シートマルチ期間:8月18日~11月15日。
  エチクロゼート乳剤の散布:6月28日(満開後50日)、7月28日(満開後80日)、8月28日(満開後110日)、1,000倍。
z) 分散分析により、*:5%、**:1%の危険率で有意差あり。n.s.:有意差なし。

4.エチクロゼート乳剤の希釈倍数は、1,000倍の方が2,000倍よりも糖度向上効果が高いことがわかりました(表3)。


表3 シートマルチとエチクロゼート乳剤散布濃度が果実品質に及ぼす影響(2011~2013)

 

処 理 果肉歩合
(%)
果汁歩合
(%)
Brix
(%)
クエン酸含量
(g/100g)
マルチ+エチクロゼート乳剤(1,000倍) 60 66 11.7 1.27
マルチ+エチクロゼート乳剤(2,000倍) 59 65 11.3 1.25
マルチ単用 60 65 11.2 1.21
エチクロゼート乳剤単用(1,000倍) 61 68 11.0 1.18
エチクロゼート乳剤単用(2,000倍) 62 66 10.8 1.22
無処理 61 66 10.6 1.22
有意性z) マルチの有無 ** * ** *
エチクロゼート乳剤の散布間 n.s. n.s. * n.s.
注) 1区4樹、1樹5果を分析。分析日:2011年は12月12日、2012年は12月10日、2013年は12月10日。
  シートマルチ期間:2011年は8月22日~11月28日、2012年は8月31日~11月28日、2013年は8月23日~11月27日。
  エチクロゼート乳剤の散布日:2011年は8月2日と9月1日、2012年は8月2日と9月1日、2013年は8月2日と9月5日。
z) 分散分析により、*:5%、**:1%の危険率で有意差あり。n.s.:有意差なし。

5.クエン酸含量は、シートマルチにより高くなりますが、エチクロゼート乳剤の影響は認められませんでした。果肉歩合と果汁歩合は、シートマルチにより低下しました(表3)。

  • [参考情報]

1)エチクロゼート乳剤の1,000~2,000倍散布は、夏秋梢伸長抑制の目的で、新梢萌芽期、但し収穫60日前まで、2回以内でカンキツに登録されており、「土佐文旦」でもその効果が認められます。また、5ヵ年連用でも樹勢の衰弱や根量の減少は見られませんでしたが、1,000倍散布で5年目に果実がやや小玉化しました(データ省略)。
2)試験は褐色森林土の植壌土で実施し、シートマルチは樹冠下を4m幅で被覆しました。
3)シートマルチにかかる10a当たりの年間償却費は約5.8万円(シート3年、その他副資材5年使用)、エチクロゼート乳剤の農薬費は2.3万円です(1,000倍、300L/10a、2回散布で試算)。
4)エチクロゼート乳剤は、他の農薬と混用しないでください。適用範囲は、糖度が上がりにくい平坦ほ場です。




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