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グリーンフォーカス 平成25年8月号

(旧)環境保全型畑作振興センター : 2013/08/01

促成ナスにおける土着天敵等の有効利用と環境保全型施肥技術の実証展示


nas

 環境保全型畑作振興センターでは平成22〜25年度にかけて促成ナスにおける土着天敵等の有効利用と環境保全型施肥技術の実証展示を実施しました。各実証内容の結果のとりまとめおよび考察をしましたので、ご紹介します。
 なお、ナスの生育および収量については、並行して実施した一般展示課題「促成ナスにおける重油代替エネルギー利用技術の実証展示」(平成22〜23年度)および同「促成ナスにおける株元温水加温システムの検討」(平成24年度)による影響が大きかったことから、ここでは対象外としました。

  • 実証結果および考察
  • タバコカスミカメの放飼頭数の検討

tabako tabako2

写真 タバコカスミカメ


(1) 目的:促成ナス栽培において土着天敵であるタバコカスミカメを導入する場合、定植直後から1m2当たり1頭程度を放飼するのが慣行的な放飼密度とされていますが、温存ハウス等での維持・増殖や捕獲などに要する負担は少なくありません。そこで、害虫防除効果を維持しつつ導入頭数を減らすことが可能かどうかについて検討しました。

(2) 結果:
a) 平成22年度:タバコカスミカメの放飼頭数を0.2頭/m2として定植7日後に導入した場合、慣行の1.0頭/m2とした場合に比べてコナジラミ類やアザミウマ類の被害が著しく大きくなりました。
b) 平成23年度:タバコカスミカメの放飼頭数を0.5頭/m2として定植6日後にスワルスキーカブリダニ等の市販天敵剤と同時に導入した場合、慣行の1.0頭/m2と同様にコナジラミ類の被害は抑制できましたが、アザミウマ類の被害は大きくなりました。
c) 平成24年度:前年度と同様に、タバコカスミカメの放飼頭数を0.5頭/m2として定植7日後に市販天敵剤と同時に導入したところ、コナジラミ類の被害は抑制できましたが、アザミウマ類の被害は認められました。

(3) 考察:タバコカスミカメの温存や捕獲に要する負担の軽減を目的に、導入頭数の削減をはかったところ、慣行の1/5まで減らした場合にはコナジラミ類やアザミウマ類の被害が著しく大きく、実用性は無いことが確認されました。そこで、タバコカスミカメの放飼頭数を慣行の1/2とし、スワルスキーカブリダニ等の市販天敵と併用したところ、コナジラミ類の被害は抑制できましたが、アザミウマ類の被害は抑えきれませんでした。
 これらのことから、促成ナス栽培においては、市販天敵類との併用を前提としても、タバコカスミカメの放飼頭数を0.5頭/m2以下とすることは、コナジラミ類の被害は抑えられるもののアザミウマ類の被害リスクが大きくなり、実用技術とするには問題があるものと考えられました。

  • タバコカスミカメの産地間リレーの実証

(1) 目的:土着天敵であるタバコカスミカメは野外での採集、ゴマなどのバンカー植物や温存ハウスの利用または促成栽培地域と雨よけ栽培地域での産地間リレーなどの方法により生産者自らが維持・増殖する必要があります。そこで、当センター内で有機栽培実証をおこなっている雨よけ果菜類ハウスを利用して、タバコカスミカメの産地間リレーについて実証しました。

(2) 結果:
a) 平成22年度:平成22年9月14日に促成ナスハウスへ農業技術センターよりタバコカスミカメを導入し、栽培終期の平成23年6月21日に、促成ナスから雨よけ米ナスへリレーしました。タバコカスミカメはおもにナスの花から採取しました。
b) 平成23年度:平成23年9月13日に、雨よけ米ナス栽培ハウス内で維持したタバコカスミカメを米ナスの花およびゴマ植物体上から採取し、促成ナスへリレーしました。また、平成24年5月31日には再び促成ナスから雨よけミニトマトへリレーしました。
c) 平成24年度:平成24年9月13日に雨よけミニトマト栽培ハウスで維持したタバコカスミカメをミニトマトおよびセイヨウフウチョウソウの植物体上から採取し、促成ナスへリレーしました。

(3) 考察:3年間の実証期間中に促成ナスと雨よけ果菜類との間でタバコカスミカメのリレーを繰り返しましたが、全く途切れることなく個体群が維持されました。
これらのことから、バンカー植物としてゴマまたはセイヨウフウチョウソウを活用した促成ナスおよび雨よけ果菜類(米ナスまたはミニトマト)のハウス間での産地間リレーは十分可能であることが実証されました。

  • タバコカスミカメの冬季バンカー植物の検討

フウチョウソウ

写真 セイヨウフウチョウソウ


(1) 目的:促成ナス栽培ハウス内で土着天敵のタバコカスミカメの個体数を維持するためには、ナス植物体のみでは不十分であり、何らかのバンカー植物の混植が必要であり、ゴマが最も適していることが知られています。しかし、ゴマは高温性の植物であり、促成ナスのハウス内でも冬季には枯死するため、タバコカスミカメの維持が困難となります。そこで、ゴマに代わる冬季のタバコカスミカメのバンカー植物の候補として、種子での入手や栽培が容易な草花類や野菜類から、耐寒性や、草姿(叢性、分枝性など)、含有成分(セイヨウフウチョウソウやカラシナに含まれるカラシ油配糖体など)を考慮して選んだのべ33種についてタバコカスミカメの寄生程度や害虫被害の有無などを調査しました。

(2) 結果:
a) 平成22年度:前年度までにタバコカスミカメの近縁種であるコミドリチビトビカスミカメを用いた予備調査で有望性が示唆されたハーブ類2種について調査したところ、ムラサキサルビア(ペインテッドセージ)ではタバコカスミカメの寄生や葉の吸汁痕が認められましたが、キンレンカ(ナスタチウム)では全く確認されませんでした。
b) 平成23年度:ハーブ類を中心とした13種について調査したところ、ソライロサルビアおよびバーベナではタバコカスミカメの寄生や葉の吸汁痕がやや多く認められましたが、いずれもゴマで一般に認められる程度よりは著しく少なかったです。一方、ムラサキサルビアでの寄生はわずかであり、バーベナなど数種ではアザミウマ類などの害虫被害が大きく、抜き取り処分を要しました。
c) 平成24年度:ゴマを対照とし、ソライロサルビア、ゴマに次いでタバコカスミカメの寄生が多いことが知られるようになったセイヨウフウチョウソウおよびその近縁のアブラナ科6種など18種の草花類について調査しましたが、セイヨウフウチョウソウの有用性が極めて高いことが確認されたほかは、いずれの種もタバコカスミカメの寄生は少ないか全く認められませんでした。

(3) 考察:3年間で33種の植物について調査した結果、ソライロサルビアやムラサキサルビアなどではわずかに幼虫の寄生や葉の吸汁痕が認められたものの、ゴマやセイヨウフウチョウソウに代わるような有望種は見出すことができませんでした。
これらのことから、冬季の促成ナス栽培ハウス内でタバコカスミカメを維持するためには、セイヨウフウチョウソウが最も適していることが確認されました。

  • リン酸肥料を無施用とした場合の有効態リン酸含量の推移

(1) 目的:リン酸肥料は資源の枯渇による輸入量の減少や価格高騰などにより入手が困難となりつつある一方で、施設果菜類の圃場などでは土壌中に投入されたリン酸の過剰蓄積が問題となっています。そこで、すでに土壌中に一定量以上のリン酸が蓄積している圃場において、リン酸肥料を連年無施用として促成ナスを栽培した場合の土壌中の有効態リン酸含量の推移およびナスの生育に及ぼす影響について検討しました。

(2) 結果:
a) 平成22年度:土壌分析結果よりナスの生育には十分な量の有効態リン酸含量があるものと考えられたため、減リン酸区ではリン酸を無施用として調査を開始しました。その結果、リン酸無施用での栽培期間中の有効態リン酸含量の平均は147mg/100gとなり、施肥基準準拠区の164mg/100gに比べてやや少なく推移しましたが、ナスの生育への影響は認められませんでした。
b) 平成23年度:2年連続でリン酸を無施用として促成ナスを栽培したところ、栽培期間中の有効態リン酸含量の平均は130mg/100gで、施肥基準準拠区の131mg/100gとほぼ同等でした。ナスの生育にも影響は認められませんでした。
c) 平成24年度:3年連続でリン酸を無施用とした圃場で促成ナスを栽培したところ、有効態リン酸含量は、リン酸無施用区では平均で126mg/100gとなり、施肥基準準拠区の137mg/100gに比べてやや少なく推移しましたが、ナスの生育への影響は認められませんでした。

(3) 考察: 3年連続でリン酸を無施用とした圃場で促成ナスを栽培した結果、圃場の有効態リン酸含量の平均は、1年目の147mg/100gから、2年目が130mg/100g、3年目が126mg/100gと徐々に減少する傾向は認められましたがその差は約20mg/100gとわずかでした。一方、施肥基準に準拠して毎年リン酸を施用した圃場でも有効態リン酸含量が年度毎の平均で131〜164mg/100gの範囲内と差が小さく、さらにリン酸無施用の場合と大きな違いはないことが認められました。また、いずれの年のいずれの区でも、ナスの生育にはリン酸欠乏などの生理障害は確認されませんでした。