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グリーンフォーカス 平成25年6月号

中央西農業振興センター 農業改良普及課 : 2013/06/01

ヒートポンプを有効活用したオリエンタルユリの夜冷栽培について

1.背景・目的

 JAとさしはオリエンタルユリの施設栽培が盛んです。特に高石支所花き部会は、冬期の高品質産地として市場から高い評価を得ています。冬場の加温はこれまで重油ボイラーを使用していましたが、近年は燃油高騰対策によりヒートポンプ暖房機の導入が進んでおり、農家は稼働していない夏場も基本料金を支払っているのが現状です。
 ヒートポンプは暖房機能と冷房機能を併せ持つことから、高知県農業技術センターでは平成22〜23年度に冷房機能を活用した研究「高温期定植作型におけるヒートポンプエアコン(冷房機能)を利用したオリエンタル系ユリの高品質生産技術の開発」を行い、小規模の試験ではありましたが、草丈の伸長やガク割れの減少など、品質面で良好な結果が得られたことが報告されました。この成果に対する農家の関心は高い半面、栽培現場の施設規模で同様の効果が得られるか不安の声も多かったことから、当振興センターでは関係機関の協力のもと、実証ほを設置して技術導入の可能性を検討しました。

2.実証ほの内容

 高温期に定植する作型(8月下旬〜9月上旬定植、11月下旬〜12月上旬収穫)でヒートポンプを活用して、夜間冷房(夜冷)による切り花品質の向上(ボリュームアップ)効果の有無を確認しました。
 実証ほ場は、面積11.7a鉄骨ハウスで、ヒートポンプは計4台20馬力(冷房出力14kW2台、冷房出力10kW2台の計48kW)が設置されており、夜冷処理は設定温度19℃で、午後6時から午前6時の12時間処理を基本とし、定植直後の8月29日〜9月18日(20日間)実施しました。なお、日中は自然換気+循環扇としました。
 なお、実証した施設と比較のための対象施設の状況及び調査内容等は以下のとおりです。
1) 耕種概要
(実証施設)
 ・使用球根:オランダ産カサブランカ冷凍球 球周22cm〜
 ・定植日:平成24年8月29日〜30日(3,600球/4.5aが品質調査対象分)
 ・栽植密度(栽植本数、うね幅、条間など)
   栽植本数:8,000本/10a(うね幅:200cm 条間:35cm 株間:25cm 4条植え)
 ・元肥(10aあたり):なし
 ・追肥(10aあたり):適宜
 ・ヒートポンプ:冷房出力14kW2台、冷房出力10kW2台、計48kW
 ・温度管理:夜冷時間18時〜翌日6時を目安、目標設定夜温19℃
 ・夜冷処理期間:8月29日〜9月18日
 ・収穫:11月8日〜19日
 ・ハウス構造:鉄骨ハウス
     面積11.7a、間口6m、奥行き39m、5連棟、南北棟、軒高2.3m、棟高4.2m
 ・被覆資材:外張り(固定) PO 0.15mm、内張り天 PO 0.15mm
 ・遮光:遮光ネット 50%
(対照施設)
 ・使用球根:新潟産カサブランカ冷凍球 球周24〜26cm
 ・定植日:平成24年8月29日(4,000球/6aが品質調査対象分)
 ・栽植密度(栽植本数、うね幅、条間など)
   栽植本数:8,500本/10a(うね幅:200cm 条間:35cm 株間:26cm 4条植え)
 ・元肥(10aあたり):(N:P:K=2.3kg:5.4kg:0.8kg)
 ・追肥(10aあたり):なし
 ・温度管理:保温開始まで天張りフルオープンによる自然換気
 ・収穫開始:11月17日〜29日
 ・ハウス構造:APハウス
     面積12.96a、間口5.4m、奥行き48m、5連棟、東西棟
 ・被覆資材:外張り PO 0.15mm
       サイド PO 0.15mm
 ・遮 光 寒冷紗2重被覆(60%遮光相当)
2) 調査項目
   夜温の変化及び外気温との温度差
   地温の推移
   品質調査(収穫時)
   等階級別出荷割合(H23年の出荷実績及び対象区との比較)
   コスト(電気代)

3.調査の結果(成果)

1) 夜温の変化及び外気温との温度差
 夜冷期間中の日最低温度(1時間毎の平均温度のうち最低の温度、以下同様)は、19〜22℃の範囲まで低下し、外気温より1.8℃程度低くなり、終了後は外気温や対象区とほぼ同じ温度で推移しました(図1)。


図1 最低気温の変化

2) 地温の推移
 夜冷区と対象区を比較すると、最低地温は地表から5 cmの深さの地点(ユリの上根が伸びる)では、夜冷区が夜冷期間中1.8℃程度低くなり、夜冷終了後すぐ同じになることはありませんでした(図2)。


図2 最低地温の推移

3) 品質調査
 生育中盤の10月15日の時点では草丈に違いが見られ、収穫時点では20cmを超える差となりました。また、生育中盤に各区の平均的な1株を掘り上げ、根の状況を観察したところ、対照区は上根の発生量が少なく偏っていましたが、夜冷区は複数節から発生し、根量の違いが観察されました(図3、表1)。


図3 生育中期の草丈と根張りの様子 表1 生育調査結果

4) 等階級出荷割合
 出荷時の調査では、夜冷区のユリは規格外品の割合が、試験農家の前年(H23年11月)の実績(慣行表記)及び対照区より少なく、上位等級にあたる優品の出荷量が多く(図4)、茎長でも1m規格の品が大半を占め、前年実績や対照区より多くなりました(図5)。


図4 等級別出荷割合 図5 階級別出荷割合

5) コスト(電気代)
 ランニングコストを試算すると、約半月のヒートポンプ冷房に要した電力量は3,109kWhで、その間の低圧電力料金は41,846円と試算されました(H24.10現在の料金体系による計算で基本料金は含めていません)。

4.今後の展開

 夜冷栽培では、毎日ハウスの開け閉め作業が発生するため負担になるとの声もありましたが、担当した農家からは「サイド等開口部の開け閉めの労力は必要だが、農作業の区切り(作業の開始、終了)として考えれば、それほど苦にならなかった」との感想もいただきました。電気料金に関しては、今回の事例では試算上1本当たりの電気料金は5円程度となりました。ヒートポンプは稼働の有無にかかわらず基本契約料金が発生することが多く、夜冷栽培により上位階級品が増えることを考えると十分取り組む価値があるのではないでしょうか。ただし、夜冷実施=単価上昇とはならないことも予想されます。この技術の導入にあたっては、上位等階級率の増加を目標にすることを留意点として周知・普及を図りたいと考えます。なお、中央西農業振興センターでは今後も数年かけての検証・事例収集を行う予定です。