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グリーンフォーカス 令和8年8月号

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中央東農業振興センター 嶺北農業改良普及所 : 2026/08/01

夏秋産地における高温対策 ~米ナス・カラーピーマン・甘長とうがらし・ミニトマトの取り組み~



  • 地域の現状(背景)

 嶺北地域は、雨よけハウスを活用した夏期の野菜類の生産が盛んであり、生産組織であるJA高知県れいほく園芸部では「れいほく八菜」のブランドで主に米ナス・カラーピーマン・甘長とうがらし・ミニトマト等が栽培されています。
 令和8年3月の時点でれいほく園芸部会の農家戸数は68戸、前述野菜の総栽培面積は500.8aです。近年では生産者の高齢化や担い手不足により生産者数と栽培面積は減少傾向にあり、特にここ数年間の、夏期の高温による作業負担の増加はその要因の一つとなっています。また、強い日射や高温による生育障害も発生し、作物の品質低下や減収の要因になっています。
 そこで、嶺北農業改良普及所では、JA、県関係機関、資材メーカーと連携して、効果が期待される資材を活用した高温対策と、それによる省力化に取り組み、安定生産に対する支援を行っています。


  • 活動内容

(1)これまでの主な取り組み
 平成26年および平成27年には遮熱フィルム(「ハイベールクール」など)、平成29年および平成30年にはダクトファンによる外気導入での高温抑制効果の実証を行いました。
 遮熱フィルムの実証試験では、カラーピーマンで日焼け果の発生が抑えられ、暑さによる作業負担も軽減されました。しかし遮熱フィルムは慣行のフィルムよりも2~3割程度資材価格が高く、導入費用の回収が難しいため、普及には至りませんでした。また、ダクトファンによる外気導入では晴天時以外では十分な効果は確認されませんでした。
 これらの結果から、遮熱・遮光資材を活用した高温対策の検討が継続されることとなりました。



写真1

写真1 ダクトファンによる外気導入実証ほの様子



写真2

写真2 ダクトファンによる外気導入実証ほの様子



写真3

写真3 ダクトファンによる外気導入実証ほの様子


(2)令和6年からの取り組み
 夏期の高温化がさらに進み、高温による生育障害や品質低下が地域の大きな課題となったことから、令和6年からは様々な品目で高温対策の取り組みを重点的に行いました。
 米ナスでは、遮熱塗布資材「レディヒート」の試験を開始しました。手作業での塗布には転落の危険性がある点や、塗りムラが発生する点が課題となったため令和7年の実証試験ではドローンでの「レディヒート」塗布試験を行いました。
 また、令和7年からは甘長とうがらしやカラーピーマン、ミニトマトでは、新たな素材の遮熱資材「クールネクスト(東レ社製)」の実証試験を開始し、それぞれの品目で高温抑制効果を検証しました。



写真4

写真4 ドローンでの塗布の様子



写真5

写真5 レディヒート塗布後の様子


  • 活動の成果

(1)米ナスでの高温抑制効果
 令和6年の試験では、日中の温度が2~4℃下がり、令和7年の試験では平均最高気温が0.9℃下がることが確認され、「レディヒート」による高温抑制効果が確認されました。
 「レディヒート」は20%程度の遮光率でしたが、作物体に遮光の影響はなく、単価の高い8~9月に収量が向上する効果がありました。
 また令和7年の試験では、ドローンでの塗布を行ったことで手作業では約6時間かかっていた作業時間が約3時間に短縮できました。そして塗布作業を委託したことにより、生産者はドローン飛行中に収穫作業を行うことができ、屋根に登る危険な作業も避けることができました。
 ドローンによる塗布作業は部会内外からの関心が高く、多くの方が塗布作業の様子を見学しました。また、塗布後は部会での現地検討会や県内の米ナス生産者交流会で現地視察も開催されました。

(2)新素材「クールネクスト」の高温抑制効果
 令和7年は資材メーカーの協力を得て、甘長とうがらし、カラーピーマン、ミニトマトで(株)東レ社製の新素材「クールネクスト」による高温抑制効果を検討しました。
 甘長とうがらしでは、「クールネクスト」を内張りで設置した試験区と無被覆の対照区を比較したところ、最高気温を4.9℃低く抑えることができました(表1)。
 また、甘長とうがらしで深刻な問題となっている高温による尻腐れ果の発生について、平均発生率は対照区で53.3%でしたが試験区では33.1%に抑えることができ、品質向上の効果も確認されました。
 カラーピーマンでは、「クールネクスト」をハウスに外張りした試験区は無被覆の対照区に比べて最高気温は1.2℃低いという結果で、体感でも試験区の方が涼しく感じられました(表1)。
 一方、「クールネクスト」を被覆した区の日射量は、野外の約3割(約70%カット)だったため、曇天・雨天時は日射量がやや不足気味となる可能性があることが分かりました。
 ミニトマトでは、「クールネクスト」を外張りし遮光資材「ワリフ明涼」を内張りした試験区と、「レディヒート」を塗布し、「ワリフ明涼」を内張した対照区を比較しました。
 高温抑制効は両区で大きな差は見られませんでした(表1)。しかしながら、高温障害である黄変果の発生は両区でほとんど確認されず、品質向上の効果が確認されました。
 黄変果は緑熟期後半から催色期の果実が33℃以上の気温に96時間遭遇すると発生することが知られています。この試験結果から、遮熱資材を利用したことで33℃を超える時間帯が少なく、黄変果の発生が抑えられたことが推察されました。
 ただし、着花・着果数の合計が試験区の方が少ない結果でした。この原因として、試験区は対照区より資材の遮光率が高く、日射量が不足したためと推察されました。



表1

表1.「クールネクスト」による高温抑制効果



写真6

写真6 クールネクストを外張りした様子


(3)明らかになった課題
 「レディヒート」の塗布については、資材コストやドローン操縦の委託費が高額であること、「レディヒート」を日射量が減少する梅雨時期に塗布したり、10月以降まで塗布したままにすると日照不足となります。このため塗布時期の見極めや除去作業が必須であることが今後の課題です。
 また、「クールネクスト」については、従来の遮熱資材と比較して高額であることに対して、資材の耐久性が不明なため資材コストの回収が可能な耐用年数であるかを明らかにする必要があります。
 加えて、遮熱資材の利用をすることで高温抑制効果は得られますが、遮光率も高いことから、天候によっては生育に必要な日射量が不足する可能性が高い点も今後の課題として上げられます。


  • 今後の展開

 今後も夏期の気温は上昇することが予想されており、効果的な高温対策の導入は急務となっています。
 令和7年の試験結果から、遮熱資材や塗布資材の活用による高温抑制効果は確認されましたが、日射量の減少への対応も必要であり、資材を開閉できる設備の導入も求められていいます。しかし、資材・設備の導入コストは高齢化が進む産地には大きな負担となることから、より低コスト化を進めることが必要です。
 また、遮熱資材を利用してもハウス内温度が35℃超える日があり、熱中症の危険性が高く収穫・防除作業ができなくなりつつあります。作業者の負担への対策もさらに検討が必要です。
 安定生産と生産現場の安全性や負担軽減を目指して、今後も高温対策に取り組んでいきます。




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