グリーンフォーカス 令和7年9月号
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新規就農者の確保・育成を目指して ~JA高知県春野キュウリ産地維持への取組~
- 地域の現状
JA高知県春野胡瓜部会(高知市春野)は、全国有数の冬春キュウリ産地で、生産量は県内トップのシェアを誇っています。栽培技術の向上等により生産量に大きな減少は見られないものの、農家戸数や面積は、平成26年の233戸(53.2ha)をピークに減少しており、現在は生産者186戸、面積は42.9haで、部会員の年齢構成は60歳以上が過半を占めています(令和7園芸年度)。今後の産地維持のためには、新規就農者の確保や面積の維持が課題となっています。
- 活動内容
(1)JA高知県春野新規就農者支援チーム
新規就農者の確保対策として、JA高知県春野新規就農者支援チームを関係機関(JA高知県、高知市、(一社)高知県農業会議、高知農業改良普及所等)で立ち上げ、新規就農者の確保・育成に取り組んでいます。
チーム会は年5回開催し、就農予定者や新規就農者の情報を共有し、今後の活動や支援策について協議を行っています。
また、地元高校、大学での就農ガイダンスや県内外での就農相談会に参加し、新規就農者の募集活動も行っています。地元高校のガイダンスでは、将来農業に関わる職業を希望している学生を対象に、春野地区のキュウリ栽培の現状やデータ駆動型農業、新規就農者からのアドバイス等を紹介しました。

写真1 新規就農者支援チーム会の様子

写真2 地元高校ガイダンスでPR
(2)個別巡回指導
新規就農者の早期経営安定を目指して、就農5年目までの新規就農者を重点指導対象に位置づけ、普及所とJAとで定期的に個別巡回を行っています。普及所は巡回の際に、個人の目標出荷量に加え、実際の出荷量や販売金額を記載した経営シートを生産者ごとに作成し、生産者と共有しています。経営シートと栽培状況をもとに現状について話し合い、課題解決に向けた提案を行っています。また、年に1回、経営・栽培管理の目標設定面談を実施し、前作の振り返りと次作に向けた話し合いを行っています。

写真3 新規就農者個別巡回の様子
(3)営農基礎講座の開催
令和7年度は普及所主催の営農基礎講座(「加温機のメンテナンス」「農業経営の基礎(農業経営とライフプラン)」「土づくり、天敵活用について」)を、新規就農者及び学び直しをしたい方を対象に開催しました。参加できなかった生産者のために、加温機及び土づくり・天敵活用の講座について、動画を撮影・編集の後にQRコードを作成し、JAの協力により全戸へ配布しました。

写真4 営農基礎講座の様子
- 活動の成果
(1)JA高知県春野新規就農者支援チーム
令和6年度は延べ6名の就農相談を実施して、認定新規就農者2名を確保し、事業承継予定の親元就農者1名についても支援をしました。また、現在1名が農業担い手育成センターでの6ヶ月間の研修を修了して、令和8年度の独立自営就農開始に向け、指導農業士の下で1年間の農家研修を開始しています。また、令和7年度は、2名が農業担い手育成センターで研修し、将来の就農に向けた準備をしています。
地元高校、大学でのガイダンスは、就農を目指している学生もおり、就農への相談先として新規就農者支援チームがあることを認識してもらうことができました。
(2)個別巡回指導
令和5年から6年にかけて新規就農者7戸の個別巡回指導を実施しました。その結果、全戸で部会平均を上回る収量を達成することができました。また、令和6年度においては、対象の認定新規就農者6戸すべてが、青年等就農計画の目標収量を達成することができました。
(3)営農基礎講座の開催
講座には延べ25名が参加しました。特に、「加温機のメンテナンス」講座では、講座実施後に、農機センターへの問い合わせが増加するなど意識向上の効果が見られました。また、「天敵の活用」講座では、天敵昆虫をすでに導入されている生産者にも事例報告をしていただき、次作から天敵昆虫の導入を希望する生産者と、天敵昆虫の放飼時期や農薬との併用方法などの具体的な意見交換が行われました。
- 今後の展開
(1)支援体制の充実
JA高知県春野新規就農者支援チームでは、就農までの流れや支援体制を明記し、県内外から新規就農者を募集する「産地提案書」の改定を検討しています。春野地区の特徴等を加え、就農希望者の目にとまりやすい「産地提案書」の作成を目指し、引き続き新規就農者に選ばれる産地として、支援体制の充実とその情報を発信していきます。
(2)研修終了後の伴走支援
引き続き、就農5年目までを重点指導対象としてJAと普及所とで協力して経営シートを用いた個別巡回を実施し、適宜、病害虫防除や作業等について指導していきます。
また、新たな試みとして、JA高知県春野営農経済センターでは、研修を終了した新規就農者等に貸し出すサポートハウスを1棟、建設予定です。今後はこのサポートハウスも利用して、就農後の初期投資を軽減し、経営の早期安定に向けて支援していきます。
(3)営農基礎講座の開催
普及所主催の営農基礎講座については、積極的な意見交換の場として、農閑期に限らず必要に応じて開催していきます。
以上の取組により、今後も普及所は関係機関と協力しながら、促成栽培のキュウリ産地の維持に取り組んでいきます。
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