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グリーンフォーカス 令和7年6月

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中央東農業振興センター 農業改良普及課 : 2025/06/01

露地ミカン産地の担い手の育成と生産基盤の強化に向けて  ~JA高知県香美地区果樹部露地みかん部会の取り組み~

【地域の現状と課題】

 JA高知県香美地区果樹部露地みかん部会は、栽培面積153ha、部員数165名(令和6年度)で構成され、高知県内唯一の温州みかん産地として知られています。生産されたミカンは「山北みかん」として、その品質の高さから県民に広く親しまれており、近年は市場を通じてシンガポール等へ輸出するなど、販路拡大にも取り組んでいます。また、新たな担い手を確保するため、新規就農を目指す地域おこし協力隊の受入を行っています。
 その一方で、生産者の高齢化とそれに伴う労力不足が深刻化しており、作業性の悪い園地も多く存在するため、病害虫防除などの管理作業に遅れが生じるケースが見受けられます。また、栽培面積は産地構造改革計画の目標を下回っており、長年培ってきた「山北みかん」ブランドの維持が危惧される状況にあります。
 このような現状を踏まえ、中央東農業振興センターでは、将来にわたって高品質なミカンを安定的に生産していくため、新規就農者の早期経営安定などの生産基盤強化支援に取り組みました。



【生産基盤強化に向けた取り組み】

1.新規就農者の早期経営安定に向けた取り組みについて

 地域おこし協力隊の任期満了と同時に就農できるように、部会役員を中心に園地(成園)確保に取り組みました。また、新植用として確保できた園地は棚田だったため、中央東農業振興センターは部会役員や地域おこし協力隊に対して県営農地耕作条件改善事業を活用した基盤整備を提案しました。
 また、栽培技術習得のため、部会での現地検討会や個別対応により技術指導を行いました。


2.園地条件の改善と規模拡大に向けた取り組み

 生産者の現状を把握するため、JA営農指導員と協力して露地みかん部会員を対象に営農意向アンケートを実施・取りまとめを行い、作業性や排水性の悪い園地の改善や規模拡大を希望する生産者に対して個別に関連事業を周知し、活用を提案しました。


園地整備に向けた希望者との面談の様子

園地整備に向けた希望者との面談の様子



3.省力化に向けたスマート農業技術の活用支援

 民間企業と協力してドローン防除の実証試験や実演会を実施し、ドローンによる防除効果や省力効果の実証試験結果や防除時の注意点、活用ポイントについて周知を行いました。また、ドローン防除のみでは対策が難しいカイガラムシ類やハダニ類に対しては手散布も行うなど、ドローンと手散布を組み合わせた年間の防除体系を提案しました。


写真2

ドローン防除実演会の様子



【活動の成果】

1.新規就農者の早期経営安定に向けた取り組みについて
  
 R6年、R7年にそれぞれ1名が地域おこし協力隊の任期満了後に就農し、成園と新植園地の両方を確保して営農を開始しました。
 新植園では、県営農地耕作条件改善事業による基盤整備に加え、R8年2月にはシカによる食害防止のためのワイヤーメッシュの防護柵も設置できる見込みで、R8年3月の定植に向け、生産基盤の整備が進んでいます。


写真3

整備前の基盤整備実施予定園地



2.園地条件の改善と規模拡大に向けた取り組み

 今回の取り組みを契機として、R7年度以降にはさらに3名の生産者が農地整備事業を活用して園地条件の改善や規模拡大に向けて取り組むことになりました(合計面積0.7ha、令和7年3月末時点)。


3.省力化に向けたスマート農業技術の活用支援

(1) ドローンによる防除効果と省力効果

 防除効果については、黒点病の発病果率と発病度はドローン区の方が手散布区と比較してやや高い結果となりましたが、秀品率への影響が大きい発病指数3以上の発生果数は低く抑えることができました(表1)。実証試験に協力していただいた生産者からも十分に防除効果があるとの評価を得ることができました。さらに、カイガラムシ類やハダニ類については、手散布とドローンを組み合わせた年間防除体系で防除することにより、被害を抑制できました。実証試験後は、実際にドローンで防除した果実を生産者の目に触れやすいJAの購買課に展示することで、ドローン防除効果を周知しました。生産者からは「このレベルで防除できるなら利用しても良いかもね」等の意見があり、ドローン防除への関心を高めることができました。

 省力効果については、手散布で約180分かかる園地の防除が、ドローン防除では7分20秒と散布時間を大幅に短縮できました(表2)。実証試験に協力いただいた生産者からは、「手散布と比べ黒点病の発生はやや多いものの、防除効果としては十分である。夏場の防除をドローンで実施できれば非常に楽になるため、来年もドローンを活用したい」との意見がありました。


写真4

ドローン防除した果実の展示




表12


(2) 令和6年度のドローンによる防除の実績

 現地研修会に合わせてドローンの実演会を行うことで、81人の生産者に対してドローンの防除・省力効果や活用事例等を周知することができました。その結果、令和5年度のドローン防除利用者は0人でしたが、令和6年度にドローンでの委託防除を利用した生産者は、4名となりました。ドローンを利用した生産者はハウスミカンと露地ミカンの両方を栽培している場合が多く、「ハウスミカンの収穫期と露地ミカンの防除が重なる夏場にドローンで防除できると助かる」という意見がありました。ドローン防除の省力効果は特に高く評価されており、今年度のドローン利用者は、次年度も継続して利用する予定です。



【今後の展開について】

1.担い手の確保・育成と早期経営安定に向けた取り組みについて
 R7年度より、新たに2名の地域おこし協力隊の受け入れを予定しています。(株)山北みらいで研修後に露地みかんで就農できるよう、関係機関や部会役員とも連携し園地確保に取り組んで行く予定です。

2.園地条件の改善と規模拡大に向けた取り組みについて

 引き続き関連事業の周知を行い、園地条件の改善や規模拡大に向けた取り組みを支援していきます。令和7年3月末時点で、新たに園地整備を検討する生産者が2名いますが、より多くの生産者から園地整備や規模拡大の希望があれば、より大規模な基盤整備に向けた取り組みを推進していく予定です。また、令和6年度は鳥獣被害が多かったため、鳥獣害対策として活用可能な事業の周知を現地研修会や個別巡回を通して実施していく予定です。

3.スマート農業の取り組みについて

 ドローン防除については、令和7年3月末時点で新たに2名の生産者が活用する予定です。一方、利用者からは「普段使用している薬剤がドローン散布用の登録がなく、薬剤の選定が難しい」といった意見があるため、ドローンで使用できる薬剤の情報提供や年間の防除例などを現地研修会や個別巡回で周知していきます。また、ドローン防除を実施する中で使用可能な薬剤が少ないという意見もあったため、ドローン防除で利用できるよう薬剤の登録拡大要望を上げていきます。
 新たなスマート農業の取り組みとして、土壌水分センサーの試験を令和7年度から予定しています。土壌水分センサーを活用したかん水基準を検討し、マルチ被覆栽培とも組み合わせることで高品質なみかんの生産を目指します。

 これらの取り組み等により生産基盤を強化し、「山北みかん」ブランドの持続的な維持・発展を目指していきます。




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