ページの先頭です。

メニューを飛ばしてメインメニューへ

2-1.水田の土壌改良目標値

>> ホーム >> 2-1.水田の土壌改良目標値

こうち農業ネット : 2012/10/30

表1-1 水田土壌の改良目標値(高知県)

 





   土壌の性質
             

 

     土  壌  の  種  類

 壌 質 土 

 粘質~強粘質土

  黒ボク土

灰色低地土、黄色土、褐色低地土、グライ土、黒泥土
 

多湿黒ボク土、黒ボク
グライ土、灰色低地土
下層黒ボク土

作土の厚さ(cm)

            15~20

すき床層のち密度(mm)

            14~22

主要根群域の最大ち密度(mm)

            22以下

日減水深(mm)

            10~30

腐植含有率(%)

  2以上  

  3以上

   5以上

pH(HO)

            5.5~6.5

陽イオン交換容量(me)

  8以上

 12以上

  15以上


 
塩基状態

 

塩基飽和度(%)

       60~80

  50~80


塩基組成
 

 カルシウム、マグネシウム及びカリウム含有量の当量比が
  (65~75):(20~25):(2~10)であること

有効態りん酸含有量(mg)

           10~30

有効態けい酸含有量(mg)

           15~20

可吸態窒素含有量(mg)

  5~10

        10~20

遊離酸化鉄含有量(%) 
 

            0.8~2.0

  1. 灰色低地土下層黒ボクは、作土にも黒ボク土が混入しているので、黒ボク土に分類した。
  2. 主要根群域は、すき床までの土層である。
  3. 腐植含有率は、全炭素含有率に1.724を乗じて得た数値である。
  4. 陽イオン交換容量は、塩基置換容量と同義で、pH7における測定値を乾土100g当たりに換算したものである。
  5. 有効態りん酸は、トルオーグ法による分析値を乾土100g当たりに換算したものである。
  6. 有効態けい酸は、pH4.0の酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液で浸出したけい酸量を乾土100g当たりに換算したものである。
  7. 可吸態窒素は、風乾土壌を湛水密閉状態にし、30℃で4週間放置し、生成したアンモニア態窒素を乾土100g当たりに換算したものである。
  8. カリウム(K2O)の含有量は乾土100g当たり最低15mgとする。

(1)作土の厚さ

 作土が浅い水田では、土壌の性質が良好であっても水稲の根群域が狭いために収量が停滞し、ときには秋落ち現象を生じることがある。このような水田では、一般に施肥量や施肥回数を増やすなど、きめ細かな肥培管理が必要になる。したがって、安定した収量を得るためには、根群域の拡大と養水分の保持力を増やす必要がある。
 耕うんはトラクタの走行速度を遅くしてロータリーでなるべく深く行う。特に必要があれば、深耕用のロータリー又はプラウを用いて耕うんする。

(2)すき床層のち密度

 水稲根は作土層だけでなく、すき床層以下にも伸びる。したがって、すき床層が硬(ち密)すぎると根の伸長は阻害される。しかし、機械の作業性および漏水防止の観点からは一定以上のち密度が必要になる。
 すき床層のち密度についての改善目標の下限14mm(山中式硬度計の指標硬度)は、トラクタ作業時の地耐力の下限(SR-2型貫入抵抗測定器で約4kg)にほぼ対応しており、改善目標の上限24mmは水稲根が容易に伸長し得る土壌の硬さの上限にほぼ対応している。
 裏作や転換畑作では、すき床層のち密度が大きいと根群が作土内に限られるため、過湿または過乾による障害を受けやすい。作溝などによる地表排水対策を講じるとともに、心土破砕を行ってすき床層の膨軟化を図る。水田に戻す場合には、代かきを十分に行って過度の漏水を防止する。

(3)主要根群域の最大ち密度

 主要根群域は地表下30cmまでの土層とされている。排水良好な水田ではすき床層が最大ち密度を示す場合が多い。すき床層の下に最大ち密度の層がある場合には、根群の発達や透水性の不良を起こす場合がある。このため、心土破砕などによってち密層を破砕する。

(4)日減水深

 日減水深は、透水性の良否を表すもので、10~30mmが適当である。透水性が良すぎる水田では、水稲が秋落ちし易く、また冷水の害も受けやすい。一方、透水が不良な水田では、潅漑水による酸素の供給が不足するために、土壌は強い還元状態になり、水稲は障害を受ける。
 下層に砂礫層が存在する土壌では、過大な減水深は代かきのみでは改善できないことが多い。このような場合には、ブルドーザーによる転圧または破砕転圧によって漏水防止を図る。土壌が粗粒質な場合や砂礫層の位置が高い場合は、客土を行うかベントナイトを施用する。ベントナイトの施用は過度の透水性を抑制するだけでなく、保肥力を増大させる。施用量は10aあたり1~3tであるが、効果の持続性は非火山灰沖積土壌では長く、火山性土では2~3年で効果が減退する。
 基盤整備水田では、作土直下の比較的浅い部分に透水性不良の土層が形成されることが多い。これに対しては、リッパーおよびサブソイラーによる下層土の破砕が有効である。
 不透水層が存在するために、透水性が悪くなっている場合には、心土破砕を行う。また、周辺の地下水位が低いにもかかわらず土壌が細粒質であるために透水性が悪い場合には、ほ場内小排水溝、弾丸暗きょ等を設置して土壌の乾燥化を図るとともに、堆肥等を施用して土壌の団粒化を促進する。

(5)腐植含有率

 水田土壌の腐植は、可給態窒素の主要な給源であるとともに、作土層の物理的性質を改善し、土壌中の微生物活性を高めると考えられている。
 腐植含有率を高めるには、稲わらや堆肥等の有機物を施用する。しかし、田植えの直前にこれら有機物を多量に施用すると、異常還元を起こして減収を招くことがあるのでなるべく早い時期に施用する。

(6)pH

 水田土壌の場合、非潅漑期間は畑土壌と同様に、塩基が溶脱されるので、土壌は酸性を呈する。しかし、湛水後、土壌の還元状態が進むにつれて土壌pHは上昇する。そして、落水によって酸化状態になるとpHは再び低下する。したがって、水稲作においてはpH自体による障害は生じ難いが、転換畑あるいは水稲以外の作物を栽培する場合には注意を要する。
 土壌pHが低い場合には、酸度矯正に必要な量の石灰質肥料を施用する。

(7)陽イオン交換容量

 陽イオン交換容量は、カルシウム、マグネシウム、カリウム、アンモニアなどに対する土壌の保持力の指標になる。すなわち、陽イオン交換容量が高い土壌では、これら肥料成分の保持力は強く、陽イオン交換容量が低い土壌では、保肥力が弱いためこれら成分が溶脱しやすい。
 陽イオン交換容量は、土壌の母材や粒径組成など、土壌の基本的な性質によって左右されており、これを短期間に改善することは困難である。しかし、有機物や土壌改良資材の施用によって、徐々に改善されることから目標値を定めている。
 陽イオン交換容量を高めるには、堆肥や腐植酸質資材等の有機質の土壌改良資材またはゼオライト等を施用する。

(8)塩基状態

 カルシウム、マグネシウム、カリウムなどの塩基類が少ない場合には、作物による吸収量が減少する。また、土壌のpHが低下するため、窒素、りん酸、微量要素の吸収も抑制される。
 塩基状態の改善には、塩基飽和度と塩基組成の改善が含まれる。塩基飽和度は、陽イオン交換容量のうち、どれくらいが塩基類で飽和されているかを示したものである。陽イオン交換容量が小さい土壌では、塩基類が不足することがあることから、下限をやや高めに設定している。また、塩基組成は、塩基組成の不均衡によって特定成分の吸収が抑制される、いわゆる拮抗作用を防ぐために必要な等量比の範囲として示してある。
 塩基バランス改善のためには、不足分に相当する石灰質肥料、苦土肥料またはカリ肥料を施用する。


image

(9)有効態りん酸含有量

 水田土壌では、火山灰土を除き、施肥したりん酸が土壌に固定されてりん酸欠乏を生じることはほとんどない。しかし、生育初期における水稲内のりん酸含量によって分けつの良否が決定されるので、土壌中に一定の量を確保する必要があるといわれている。
 りん酸含量の少ない土壌では、不足分に相当するりん酸質肥料を施用する。この場合、りん酸質肥料としては効果の持続するく溶性りん酸を主体とするものを選び、特に酸性の土壌の場合には、熔成りん肥などアルカリ性のものを施用する。
 

(10)有効態けい酸含有量

 けい酸は水稲の耐病性、耐倒伏性を増し、稔実歩合を高めると言われているが、けい酸の代謝、生理作用は必ずしも明らかではない。しかし、水耕試験によるとけい酸欠如区では生育が劣り、収量も低下するなど多くの障害が認められている。また、けい酸含量と水稲の秋落現象との関連性は大きく、けい酸含量の少ない土壌では、不足分に相当するけい酸質肥料を施用する。
 

(11)可給態窒素含有量

 土壌中の有機物が分解して生成される、いわゆる可給態窒素は水稲によく利用され、窒素肥料が施肥された場合でも、水稲が吸収する窒素の50~80%は可給態窒素に依存している。したがって、可給態窒素が少ない場合には施肥窒素に対する依存度が高まり、施肥法の失敗により減収を招くことが多い。安定した生産を維持するためには、有機物の施用などによって一定量の可給態窒素を維持することが必要である
 

(12)遊離酸化鉄含有量

 作土中の遊離酸化鉄は土壌の還元状態を弱め、土壌中の酸素不足による水稲根の障害を防ぐほか、硫化水素などの発生を抑制する。また、pHの急変に対して緩衝作用を示すなどの役割を果たしている。したがって、含鉄肥料などの施用によって、土壌中に一定量の遊離酸化鉄を維持する必要がある。
 




メルマガ・LINE登録

keyboard_arrow_down

メルマガ・LINE登録

ここに誘導する文章などが表示されます。
文章などが表示されます。文章が表示されます。
QR CODE

PAGE TOP