2-3.施設畑の土壌改良目標値
>> ホーム >> 2-3.施設畑の土壌改良目標値
土壌の性質 |
土 壌 の 種 類 |
|||
砂 質 土 |
壌質~強粘質土 |
黒ボク土 |
||
砂丘未熟土 |
褐色森林土、褐色低地 土、灰色低地土、黄色 土、赤色土、暗赤色土 グライ土、黒泥土 |
多湿黒ボク土、黒ボクグライ土、灰色低地土下層黒ボク |
||
作土の厚さ(cm) |
20以上 |
|||
土壌の物理性 |
孔隙率(%) |
55~70 |
60~70 |
60~75 |
粗孔隙率(%) |
20~35 |
25~35 |
25~40 |
|
主要根群域の厚さ(cm) |
40以上 |
|||
主要根群域の最大ち密度(mm) |
22以下 |
|||
主要根群域の粗孔隙率(%) |
10以上 |
|||
主要根群域の透水係数(cm/秒) |
10-4以上 |
|||
主要根群域の易有効水分含有率(%) |
5以上 |
|||
地下水位(cm) |
50以下 |
|||
グライ層の位置(cm) |
50以下 |
|||
腐植含有率(%) |
2以上 |
3以上 |
5以上 |
|
pH(H2O) |
6.0~6.5 |
|||
陽イオン交換容量(me) |
8以上 |
15以上 (壌質土は12以上) |
20以上 |
|
塩基状態 |
塩基飽和度(%) |
70~90 |
60~90 |
|
塩基組成 |
カルシウム、マグネシウム及びカリウム含有量の当量比が (65~75):(20~25):(2~10)であること |
|||
有効態りん酸含有量(mg) |
30~100 |
注
- 灰色低地土下層黒ボクは、作土にも黒ボク土が混入しているので、黒ボク土に分類した。
- 作土の厚さは、根菜類では30cm以上とする。
- 粗孔隙は水が自重で降下できる粗大な孔隙で、通気透水性に関係する。
- 腐植含有率は、全炭素含有率に1.724を乗じて得た数値である。
- 作物別のpHは表3-2を参照のこと。
- 陽イオン交換容量は、塩基置換容量と同義で、pH7における測定値を乾土100g当たりに換算したものである。
- 有効態りん酸は、トルオーグ法による分析値を乾土100g当たりに換算したものである。
- カリウム(K2O)の含有量は乾土100g当たり最低15mgとする。
(1)作土の厚さ
基本的には普通畑と同様である。しかし、潅水や液肥供給の施設を設置している圃場が多く、作土が浅くても普通畑ほどの影響力はない。また、トマトやメロンなどの栽培では隔離床や防根透水シートを用いて根域を制限し、糖度の向上に取り組んでいる事例も多い。
(2)作土の物理性
普通畑に比べて、稲わらや堆肥などの有機物を施用して土づくりを実施している圃場が多く、目標値以下の場合は比較的少ない。しかし、基盤整備直後の圃場や新規造成地では、物理性が不良なことが多く、有機物の施用などによって改善に取り組む必要がある。
(3)主要根群域の厚さ
高糖度の果実生産を目指す場合を除き、一般には安定した生育、収量を得るためには主要根群域が大きいほうが望ましい。根群域が浅い場合には、乾燥など栽培環境の影響を受けやくなる。主要根群域が少ない場合やち密層が厚いために根群域が浅くなっている場合には、深耕ロータリーやトレンチャーで深耕を行う。
一方、トマトやメロンなどの作物で高糖度果実の生産を行う場合には、根が深くまで伸長していると灌水量を少なくしても作物は下層の水分を吸収するため、糖度は上昇しにくい。このため、防根シートの埋設や隔離床の利用により、根群域を制限して栽培することもある。その場合には、よりきめ細かい養水分管理が必要となる。
(4)主要根群域の最大ち密度
施設においても、下層土の土壌改良が十分に行われている圃場は少ない。安定した作物生産を行うためには、作土だけでなく、下層土の土壌改良も必要であり、深耕および有機物の施用が必要である。天地返しなどによって、養分含量が少なく、微生物相も貧弱な下層土が多量に作土に混入すると、作物の生育不良などを生ずることがある。このため、深耕の際には毎年徐々に耕うん深度を大きくしていくのが望ましい。
(5)主要根群域の粗孔隙率
粗孔隙とは、水で飽和した後の土壌から水が流出したために生じた孔隙、つまり、重力にさからっては水を保持することができない大きさの孔隙である。pF1.5の気相率で示すことが多い。粗孔隙量は根の伸長と密接な関係があり、粗孔隙量が一定の値よりも小さくなると根群の分布は急減する。
このような土壌では、耕うんや有機物施用を行い、土壌の孔隙量を多くする。
(6)主要根群域の透水係数
排水不良な圃場では、根痛みや土壌病害の発生を招きやすいので、透水性の改善が必要となる。透水性は、土壌の物理性、特に粗孔隙率や地下水位の高さと密接な関係がある。
透水性が悪い圃場では、暗きょの施工や有機物施用による土壌物理性の改善を行う。
(7)主要根群域の易有効水分含有率
易有効水分は、土壌に保持されずに下方に流れる重力水や、作物が吸収できないほど強い力で土壌に結合している水を除き、作物が比較的容易に吸収できる水分量のことである。
土壌に大きな孔隙が多いために易有効水分含有率が小さくなっている場合には、ベントナイトなど粘土質の土壌改良資材を施用して粗孔隙の充填を図る。また、泥炭などの保水性に富む土壌改良資材を施用するのも有効である。
(8)地下水位
施設栽培圃場は、水田からの転換畑が多く、地下水位の影響を受けやすい。地下水位が高い圃場では、過湿による根傷みや土壌病害の発生を招きやすい。このため、ハウス周辺への排水溝の設置や止水シートの埋設を行うとともに、ハウス内に暗きょを施工して透排水性を高める。
(9)グライ層の位置
地下水位が高く、還元状態になっている圃場では、灰青色のグライ層が出現するため、透排水性の良否を示す指標の1つとして重要である。
下層に盤層があるために水が停滞して還元状態となっている場合には、サブソイラなどによって盤層を破砕し、透排水性の向上を図る。
(10)腐植含有率
土壌中の腐植は、土壌の易耕性や緩衝能、微生物活性を高めるなど、土壌の生産力にとって重要な役割を果たしている。腐植含量を一挙に高めることは困難であるが、多量の腐植が集積している黒ボク土は別にして、一定量を維持する必要がある。
(11)pH
土壌pHが高いと鉄や亜鉛、マンガンなどの欠乏症、アンモニアガス害などが発生しやすい。逆にpHが低すぎると、マンガン過剰症や亜硝酸ガス害などの発生が多くなる。塩基の集積によってpHが高くなっている場合には、石灰質資材の施用を中止し、湛水やクリーニングクロップの栽培による除塩を行う。一方、pHが低い場合には、石灰質資材の施用などによってpHを適正に保つようにする。
(12)陽イオン交換容量
陽イオン交換容量が大きい土壌では、保肥力が大きく、濃度障害を受けにくくなる。陽イオン交換容量は、土壌の粘土や腐植の質および量によって左右され、その値を大幅に高めることは容易ではない。しかし、有機物の補給や優良粘土の施用などを行うと少しづづ増大する。
(13)塩基状態
施設畑では降雨の影響を受けないため、塩類が集積しやすい。このため、石灰、苦土、加里などの塩基が量的に不足することはほとんどないが、バランスを崩している圃場が多い。キュウリのグリーンリング症をはじめ、塩基バランスの悪化によって障害が発生した事例も多い。塩基バランスの悪い圃場では、まず湛水除塩などによって過剰な塩類を除去した後、不足している成分のみを補うようにする。
(14)有効態りん酸含有量
普通畑に比べ、りん酸が集積している圃場が多い。果菜類では、葉菜類よりもりん過剰害が現れにくく、有効態りん酸量が多くても作物に悪影響を及ぼすことは少ない。しかし、りん酸蓄積土壌では、施肥りん酸よりも土壌蓄積りん酸を多く吸収するという報告もあり、施肥効率の点からは、過剰なりん酸施肥は控えたほうが良い。
ツイート