2-2.普通畑の土壌改良目標値
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土壌の性質 |
土 壌 の 種 類 |
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砂 質 土 |
壌質~強粘質土 |
黒ボク土 |
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砂丘未熟土 |
褐色森林土、褐色低地土、灰色低地土、暗赤色土、黄色土 |
多湿黒ボク土、灰色低地土下層黒ボク |
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作土の厚さ(cm) |
20以上 |
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土壌の物理性 |
孔隙率(%) |
55~70 |
60~70 |
60~75 |
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粗孔隙率(%) |
20~35 |
25~35 |
25~40 |
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主要根群域の厚さ(cm) |
40以上 |
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主要根群域の最大ち密度(mm) |
22以下 |
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主要根群域の粗孔隙率(%) |
10以上 |
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主要根群域の透水係数(cm/秒) |
10-4以上 |
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主要根群域の易有効水分含有率(%) |
5以上 |
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地下水位(cm) |
50以下 |
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グライ層の位置(cm) |
50以下 |
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腐植含有率(%) |
2以上 |
3以上 |
5以上 |
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pH(H2O) |
6.0~6.5 |
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陽イオン交換容量(me) |
8以上 |
15以上 (壌質土は12以上) |
20以上 |
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塩基状態 |
塩基飽和度(%) |
70~90 |
60~90 |
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塩基組成 |
カルシウム、マグネシウム及びカリウム含有量の当量比が (65~75):(20~25):(2~10)であること |
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有効態りん酸含有量(mg) |
20~80 |
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可給態窒素含有量(mg) |
5~15 |
注
- 転換畑を含む。
- 灰色低地土下層黒ボクは、作土にも黒ボク土が混入しているので、黒ボク土に分類した。
- 作土の厚さは、根菜類では30cm以上とする。
- 粗孔隙は水が自重で降下できる粗大な孔隙で、通気透水性に関係する。
- 腐植含有率は、全炭素含有率に1.724を乗じて得た数値である。
- 作物別のpHは表2-2を参照のこと。
- 陽イオン交換容量は、塩基置換容量と同義で、pH7における測定値を乾土100g当たりに換算したもの である。
- 有効態りん酸は、トルオーグ法による分析値を乾土100g当たりに換算したものである。また、しょうが、ばれいしょ、キャベツの改良目標は30~50mgである。
- 可給態窒素は、風乾細土を畑水分状態にし、30℃で4週間放置し、生成したアンモニア態窒素を乾土100g当たりに換算したものである。
- カリウム(K2O)の含有量は乾土100g当たり最低15mgとする。
(1)作土の厚さ
作土の厚さは土壌の生産力と密接な関係がある。多くの場合、作土が浅いと乾湿などの影響を受けやすく、生産が不安定となる。
畑の耕うんは、一般にはロータリー耕が行われている。しかし、通常のロータリー耕では軟かい土でも18cm程度が限度であるから、耕深をこれ以上にする場合には、深耕ロータリーやプラウを使用する。
急激に作土を厚くすると、新たに耕起される土層の性質によっては作物の生育不良等を生ずることがあるので、徐々に耕うん深を深くするとともに、必要に応じて堆肥等を施用する。土が軟らかい場合には、播種作業時にトラクタが沈下して作業精度が低下するので、耕起後にデイスクハローで砕土鎮圧し、ツースハローなどで整地を行う。
長根作物を栽培するためには、一般にトレンチャーなどを使用して塹壕状に植え溝を掘る。耕深60~100cm程度の深耕ロータリーもあるが、耕幅は40~16cm程度の部分耕となる。火山灰土壌や砂質土壌のような耕しやすい土壌では、耕深40~50cm、耕幅1.4~1m程度の深耕ロータリーを利用する。
作土下に礫層がある場合には客土を行う。その際、大量の客土を一度に行わず、数回に分けて、石灰やりん酸肥料と共に有機物も施用し、地力増強を図りながら進める。作土下に細粒質のち密な土が存在する場合には、プラウ耕などで耕起し、ロータリーで撹拌砕土する。礫層が存在する場合には、客土またはリッパー、サブソイラーなどを用いた礫層の破砕と破砕後の除礫を行う。
(2)作土の物理性
孔隙率は土壌三相のうち、固相(土壌)を除いた割合、すなわち、気相(空気)と液相(水)の合計量である。孔隙率が小さい土壌では、硬くて通気性に乏しく、作物の生育は不良となる。また、粗孔隙率はpF1.5時の気相率で示すが、この値が小さいと透水性が悪く、過湿の害を受けやすい。
粗大有機物の施用は、土壌の大孔隙を増加させるとともに、団粒の形成を促進させる。また、ポリエチレンイミン系やポリビニルアルコール系の高分子化合物の施用も土壌の団粒形成を促進し、孔隙率や粗孔隙率を向上させる。その場合、高分子化合物の単用よりも有機物との併用がより効果的となる。
(3)主要根群域の厚さ
安定した生育、収量を得るためには主要根群域が大きいほうが望ましい。根群域が浅い場合には、乾燥など栽培環境の影響を受けやくなる。主要根群域が少ない場合やち密層が厚いために根群域が浅くなっている場合には、深耕ロータリーやトレンチャーで深耕を行う。
(4)主要根群域の最大ち密度
土壌の粒子がいろいろな原因によって結合すると硬くなるが、この硬さをち密度と呼んでいる。根群が分布する主要な土層内に、ち密度が大きい土層が介在すると、通気性や透水性を悪化させるだけではなく、根の伸長をも阻害する。畑作物では、多くの場合、ち密度が24以上になると根群の分布は急激に減少する。ただし、根菜類の場合には、岐根を生じるなど品質が低下するのでち密度は18以下が望ましい。
主要根群域の最大ち密度は山中式硬度計で22mm以下とされている。作土下のち密度が大きいと根の発達が悪く、過湿や過乾により生育が抑制されやすい。
圧縮されたり礫層があるためにち密度が大きい土壌の場合には、心土破砕や客土を行う。また、土壌が細粒質であるために粗孔隙量が過小の場合には、堆肥等を施用することにより土壌の団粒化を図る。
(5)主要根群域の粗孔隙率
土壌の粗孔隙は、作物の生育に必要な土壌の膨軟性、通気性、透水性を維持するために重要な役割を果たしている。粗孔隙とは、水で飽和した後の土壌から水が流出したために生じた孔隙、つまり、重力にさからっては水を保持することができない大きさの孔隙である。pF1.5の気相率で示すことが多い。粗孔隙量は根の伸長と密接な関係があり、粗孔隙量が一定の値よりも小さくなると根群の分布は急減する。
このような土壌では、耕うんや有機物施用を行い、土壌の孔隙量を多くする。
(6)主要根群域の透水係数
排水不良な圃場では、根痛みや土壌病害の発生を招きやすいので、透水性の改善が必要となる。透水性は、土壌の物理性、特に粗孔隙率や地下水位の高さと密接な関係がある。
透水性が悪い圃場では、暗きょの施工や有機物施用による土壌物理性の改善を行う。
(7)主要根群域の易有効水分含有率
易有効水分は、易効水あるいは易有効水分とも言われ、作物に容易に吸収される水分である。易有効水が作土で不足しても、作土下の主要根群域に存在していれば作物は吸収できる。したがって、主要根群域全体の目標値を設定している。
目標に達していない場合は、根域を広げるかあるいは有機物施用などの処理をしやすい表土部分の三相分布の改良を図る。また、作物が有効水を効率よく利用できるように、降雨の効果的な土壌中浸透と土面蒸発を防ぐような措置、たとえばわらマルチなどが必要である。
粗孔隙量が過大であるために易有効水分含有率が過小の場合には、ベントナイト等の粘土質の土壌改良資材を施用して粗孔隙の充填を図る。また、パーライト、泥炭等保水性に富む土壌改良資材を施用するのも有効な方法である。
(8)地下水位
地下水位が高いほ場では、過湿による根傷みや土壌病害の発生を招きやすい。このため、ほ場周辺に明きょを設置して過剰な水がほ場内に侵入しないようにするとともに、ほ場内にも暗きょを施工して透排水性を高める。
(9)グライ層の位置
地下水位が高く、還元状態になっている圃場では、灰青色のグライ層が出現するため、透排水性を示す指標の1つとして重要である。下層に盤層があるために水が停滞水して還元状態となっている場合には、サブソイラなどによって盤層を破砕し、透排水性を向上させる。
(10)腐植含有率
土壌中の腐植は、土壌の易耕性や緩衝能、微生物活性を高めるなど、土壌の生産力にとって重要な役割を果たしている。腐植含量を一挙に高めることは困難であるが、多量の腐植が集積している黒ボク土は別にして、一定量を維持する必要がある。
(11)pH
作物の生育に好適なpHは、作物の種類によって異なる。pHが低い酸性土壌では土壌中のカルシウム、マグネシウムなどの塩基欠乏症が現れやすいだけでなく、鉄やアルミニウムがりん酸と結合する結果、有効態のりん酸含量が減少する。また、モリブデンが不可給態になる反面、アルミニウム、マンガンが溶解し易くなり、アルミニウムによる根の障害やマンガン過剰による障害などが生じやすくなる。一方、pHが高いアルカリ性の土壌では、マンガン、ホウ素、銅、亜鉛などの微量要素が不可給態になり易く、要素欠乏による生育障害を生ずる原因となる。
(12)陽イオン交換容量
陽イオン交換容量が大きい土壌では、保肥力が大きく、濃度障害を受けにくくなる。陽イオン交換容量は、土壌の粘土や腐植の質および量によって左右され、その値を大幅に高めることは容易ではない。しかし、有機物の補給や優良粘土の施用などによって少しづづ増大を図る。
(13)塩基状態
塩基状態の改善には塩基飽和度と塩基組成の改善が含まれる。塩基飽和度はpHを6.0~6.5に維持するとともに、作物に必要な塩基の量を保持するという観点から目標値を設定している。また、塩基組成については、それぞれの塩基に対する作物の吸収量、および吸収量に対応した適正な比率を維持するという両方の観点から設定している。
塩基の含有量が不足する場合には、不足分に相当する石灰質肥料、苦土肥料又はカリ肥料を施用する。
塩基の含有量が過剰な場合には、過剰な成分を含む肥料の使用を控えるとともに、塩基含量の低い下層土と混合するか、または塩基吸収力の強いイネ科作物などのクリーニングクロップを栽培し、ほ場外へ搬出することで塩類濃度の低減化を図る。
(14)有効態りん酸含有量
りん酸は土壌中で鉄やアルミニウムと結合して難溶性になり、作物に吸収され難くなる。このようなりん酸の固定は黒ボク土で著しく、また、土壌が酸性になると助長される。そのため、畑土壌では一般にりん酸が欠乏し易く、一定量以上の有効態りん酸を維持する必要がある。しかし、りん酸は、他の養分とは異なり、過剰に伴う障害が現われ難いことから、土壌中に十分な量があっても施肥されることが多く、蓄積してきている。りん酸が多く蓄積している圃場では、作物は施肥りん酸よりも土壌蓄積りん酸を多く利用するといわれており、施肥効率が低下する。
(15)可給態窒素含有量
可給態窒素含有量は有機物の施用によって増加する例が多いが、それは主として有機物の分解によって生成した窒素に基因している。しかし、有機物を多量に連用しても常に増収に結びつくとは限らない。つまり、有機物の施用量、連用年数には適正値があり、それは、地域や土壌の種類、土壌の来歴によって異なっている。改善目標の窒素含有量は、作物の生育にとって必要な窒素含有量というよりも、この程度の窒素が生成される土壌条件が必要だという意味での目標である。
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