グリーンフォーカス 令和8年2月号
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無核性ブンタン「瑞季(みずき)」の施設栽培における高品質安定生産技術
- はじめに
ブンタンは高知県の地域産業を支える特産果樹であり、県内の栽培面積は413ha、生産量は11,293t(令和6年産)といずれも日本一の産地です。しかし、主要品種である「土佐文旦」は、カンキツかいよう病に弱いことや種子が多いことが栽培や食味上での課題となっています。
「瑞季」は、「水晶文旦」を種子親として、無核紀州型無核性の「サザンイエロー」を花粉親として交配し、育成されたカンキツ新品種であり、ブンタン由来のさわやかな風味を有し、種子が少なくてカットフルーツに向き、黄色の外皮ごと食べることができます(写真1)。また、カンキツかいよう病に強く、人工受粉や受粉樹がなくても安定して着果する特性を有します。これまでに、育成地の広島県では、露地栽培において国産カンキツの端境期である4月中旬以降に出荷できることが明らかになっていますが、施設栽培における高品質安定生産技術は確立されていません。
そこで、施設栽培での成熟期の前進化や高品質果実の生産を目的として、「瑞季」の早期加温作型や省加温作型での異なる加温開始時期による栽培特性および早期収穫後の減酸処理による出荷時期について検討しました。
- 栽培特性
1月中旬から加温を開始する早期加温作型および3月上旬から加温を開始する省加温作型において、最低温度を18℃に設定して栽培特性や果実品質を調査しました(写真2)。
その結果、早期加温作型の発芽期は2月上旬、開花盛期は3月上旬で(データ省略)、11月下旬に完全着色となりました(表1)。翌1月17日時点では糖度が11.6°Brix、クエン酸含量が1.44g/100gで、官能評価により収穫適期は1月中旬以降と判明しました。
また、省加温作型の発芽期は3月上旬、開花盛期は3月下旬から4月上旬で(データ省略)、12月上旬に完全着色となりました(表2)。翌1月13日時点では糖度が11.4°Brix、クエン酸含量が1.52g/100gで、官能評価により収穫適期は1月中旬以降と判明しました。したがって、「瑞季」の施設栽培における収穫適期は1月中旬以降と考えられました。
写真1 「瑞季」果実 写真2 「瑞季」の施設栽培
表1 早期加温作型における「瑞季」の果実品質(2023)
表2 省加温作型における「瑞季」の果実品質(2021)
- 高温減酸技術
11月上旬に早期加温作型の果実を0.05mm厚の有孔ポリエチレンフィルムに入れて、貯蔵庫内で35℃に設定して2週間高温処理した後、常温で貯蔵を行いました。無処理は、果実を入れたコンテナをタイベック製貯蔵みかん用コンテナカバー(商品名:貯蔵名人、日本園芸農業協同組合連合会)で覆い、貯蔵庫内で常温貯蔵しました。
その結果、減量歩合はいずれの調査日も無処理で有意に高くなりました(表3)。糖度はいずれの調査日も無処理で高く、クエン酸含量は高温処理で減少しました。糖酸比は、いずれの調査日も高温処理で有意に高くなりました。果実障害は、12月6日および20日に無処理でしなびた果実の発生がみられました(表4)。したがって、11月上旬に早期収穫した果実を高温処理することで、短期間で減酸が進みました。また、糖酸比も高くなり、食味が向上したことから、11~12月の年内での早期出荷も可能であることが示されました。
表3 施設栽培「瑞季」における収穫後の高温処理が果実品質に及ぼす影響(2023)
表4 施設栽培「瑞季」における収穫後の高温処理が果実障害に及ぼす影響(2023)
- おわりに
「瑞季」は、露地栽培では通常無核となりますが、施設栽培などの高温となる栽培条件では、果実に種子が入りやすくなります。これまでの研究で、開花盛期から4週間までのあいだで28℃以上の高温積算時間が30時間を超えると、種子の発育が促進されることが示されました。このことから、施設栽培で種なし果実を安定して生産するためには、満開期~幼果期には28℃以上の高温に長時間遭遇しないよう、温度管理に留意が必要です。
なお、本研究の一部は、農研機構生研支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業(JPJ007097)」にて実施しました。
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