グリーンフォーカス 令和6年12月号
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ユズにおける出荷量予測方法の開発
- はじめに
ユズは高知県を代表する果樹であり、県内の栽培面積は895ha、生産量は15,005t(令和5年産)といずれも日本一の産地です。出荷量の約20%は青果出荷用として取引されますが、これらは有利販売のために、収穫前に出荷量予測が県内各産地で行われています。
しかし、園地での収量、階級(果実の大きさによる区分)および品質調査は目視で行われており、調査に労力と時間を要するために調査数が少なく、精度が低いことが問題となっています。また、実際の出荷量が予測出荷量より多い場合、余剰分は単価の低い加工用として扱われるため、売上の損失となります。一方で、実際の出荷量が予測出荷量より少ない場合、欠品を引き起こし、市場および消費者の信頼を損なうことになります。そのため、産地からは、精度の高い調査方法の開発が求められていました。
そこで、果樹試験場では現在、一樹当たりの着果数および果実の大きさを短時間で予測できる技術の開発を進めています。
- 平均果実横径値を用いた階級別比率の予測方法
青果出荷用の出荷規格である「ユズ5kg」は、段ボールに入る果実数ごとに階級規格が決まっています(表1)。出荷量予測のための1果実ごとの計測は極めて労力がかかります。そこで、1果実ごとに階級を予測するのではなく、1樹ごとに階級比率を予測する手法を検討しました。
その結果、収穫直前の10月下旬~11月上旬に1園地当たり10樹以上、1樹当たり20果以上の果実横径をノギスで調査し、その平均値を予測式に代入することで、階級別比率を高精度で予測できる式を開発しました(表2)。この予測式は、1園地当たりの調査樹数を増やすほど精度が向上し、10樹以上調査することで誤差(各階級比率の誤差の絶対値の総和)が目標値とする10%以下となります。また、1樹当たりの調査果数を増やすほど精度が向上し、20果以上調査することで誤差が概ね目標値とする10%以下となります。果樹試験場内で取得したデータによって作成した予測式を、県内主要ユズ産地の5園地で検証した結果、誤差は概ね目標値とする10%以下となり、予測式の有効性を確認できました。
表1 青果出荷用ユズ(5kg)の階級規格
表2 青果出荷用ユズ(ユズ5kg)の階級比率予測式
- 樹体側面画像または空撮画像を用いた着果数の予測方法
着果数の計測は通常、カウンターを用いて行いますが、着果数の推定誤差が大きくなることが問題です。解決策として、AIを用いた物体検出技術によって、画像から着果数を推定する手法が有効だと考えられます。
そこで、着果数推定技術を開発するための基礎的知見を得るために、ユズの樹体側面画像または空撮画像を用いた着果数予測式を開発しました。これは、10月下旬~11月上旬の果実成熟期に、樹列に正対する2方向からの撮影画像または空撮画像から、樹毎の着果数を予測する式です(表3、写真1、2)。予測式を検証した結果、予測誤差(100-予測着果数/収穫果実数×100の絶対値)が10%以下となりました。
表3 着果数予測式
写真1 樹体の側面画像(2022) 写真2 樹上からの空撮画像
注 ) 2022年11月2日撮影。 注1) 2022年10月27日撮影。
2) 写真1で撮影した樹体と同一樹。
- おわりに
本研究の結果は主に、果樹試験場内の開心自然形のユズを用いて調査したものであり、階級比率予測式については着果数が少ない場合、予測精度が低下する場合があります。また、着果数予測式についても樹形が異なる場合、予測精度が低下する場合があります。現在、画像からユズの果実を正確に検出するための物体検出モデルを開発中であり、本研究結果と合わせて、総合的な出荷量予測技術の開発を目指します。
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