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グリーンフォーカス 令和6年7月号

中央西農業振興センター 高知農業改良普及所 : 2024/07/04

促成キュウリにおける適正な土壌水分率の検討

  • 地域の現状

 高知農業改良普及所の管内である高知市春野町は、キュウリ、トマト、新ショウガ及びナスなどの施設園芸が盛んに行われています。特に、キュウリは全国4位の出荷量を誇り、全国的にも珍しい10月~6月まで植え替えをしない長期間の作型で栽培されています。
 近年、環境測定機器の普及により、ハウス内環境の見える化が進み、環境制御が生育及び収量に与える影響が明らかになってきています。その結果、温度や湿度などのデータに基づいた栽培管理に取り組む生産者が増えており、収量の向上への関心が高まっています。一方で、根の生育状況、土壌水分及び養分濃度など、地下部の見える化は十分に進んでおらず、データに基づいた管理が進んでいるとは言い難い状況です。根は地上部の支え、養水分の吸収など、大きな役割を担っており、地下部を適正に管理することで、より一層の収量の向上が期待されます。
 そこで、現地キュウリほ場において、土壌水分が根の分布などの生育及び収量に与える影響について調査を始めました。今回は途中経過をご紹介いたします。

  • 活動内容

1)根の分布調査
 ほ場内に通常区と排水不良区を設け、根の動きを撮影できるよう、それぞれの畝にアクリル板で作成した箱(ルートボックス)(写真1)を埋め、内部に暗視カメラ(写真2)を設置することで、栽培期間を通じて、根の動きや広がりを調査しました(図1)。


キャプチャ1

2)土壌水分の調査
 1)と同様、通常区と排水不良区のそれぞれの畝に土壌水分センサー(写真3)を設置し、栽培期間を通じて、土壌水分率を調査しました。また、pFメーター(写真4)の数値を参考に、生産者にかん水時間を記帳してもらうことで、かん水量を調査しました。


キャプチャ2
  • 活動の成果

1)A氏ほ場
 土壌水分率は、12月上旬~1月中旬にかけて排水不良区で50%以上と、通常区に比べ土壌水分率が高まりました(図2)。また、通路は水であふれており、排水不良による生育不良及び作業性の低下が懸念されました(写真5)。なお、冬期のかん水量は1t/10a/日とやや少なかったです。


キャプチャ3

2)B氏ほ場
 土壌水分率は、1月中旬まで通常区、排水不良区ともに50%以上で安定して推移していました(図3)。通路は少し湿っている程度で、排水性は問題ないと考えられました(写真6)。なお、冬期のかん水量は2.5~3t/10a/日とやや多かったです。


キャプチャ4

 これらの結果から、同程度の土壌水分率であっても、ほ場ごとに土壌状態は大きく異なっていることが明らかとなりました。

  • 今後の展開

 同程度の土壌水分率であっても、ほ場ごとに土壌状態は大きく異なっている要因として、土壌の種類や有機物の投入量、地下水位の高さなどが影響している可能性が考えられました。引き続き、栽培終了時まで調査を継続するとともに、根の動きや収量への影響を検討していきます。




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