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グリーンフォーカス 令和5年5月号

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中央西農業振興センター 高知農業改良普及所 : 2023/05/01

ナス栽培における品種特性把握と栽培技術の確立

  • 取り組みの背景

 高知市春野町では、キュウリ、トマト、新ショウガ、ナスなどの施設園芸が盛んに行われています。ナスにおいては、普通ナスや米ナスの促成、半促成(キュウリの後作)栽培が行われています。
 普通ナスの促成作型においては、近年、省力化技術の1つとして単為結果性品種‘PCお竜’の導入が進んでいます。通常、ナス栽培では、ホルモン処理や受粉を助けるマルハナバチなどの放飼が必要ですが、‘PCお竜’では、これらが不要となることから、労力や経費を軽減することができます。しかし‘PCお竜’は、初期着果が良いため樹勢が弱りやすく、これまでと同様の栽培方法では、慣行品種に比べ収量性が劣るとの声もあり、‘PCお竜’に合った栽培方法の確立が求められていました。
 また、普通ナスの半促成作型では、昭和53年から現在まで、‘春鈴’が栽培されてきましたが、‘春鈴’種子の生産が中止されることとなり、後継品種の選定が急務となっていました。

  • 活動内容と結果の概要

1.促成作型における単為結果性品種‘PCお竜’の仕立て本数の検討

 初期着果の負担軽減のため、株あたりの主枝の仕立て本数を、慣行の4本仕立てから3本仕立てとし、生育と収量への影響を調査しました。なお、単位面積あたりの主枝本数は同数(主枝3.3本/平方メートル)として試験を行いました。
 主枝摘芯までの主枝ごとの生育は、第1主枝、第2主枝はほぼ同等で、第3主枝、第4主枝の順に弱く推移しました。3本仕立てでは4本仕立てに比べ、開花数及び着果数の増減幅が小さく、栽培後期に向けて増加傾向で推移しました。収量は、1月は少なくなりましたが、その他の月は多く、合計で17%増の26,667kg/10aとなりました(図1~6)。

2.半促成作型における品種の特性把握

 ‘春鈴’の後継品種検討のため、単為結果性品種‘PCお竜’と、低夜温下でも収量性が高いといわれる品種‘慎太郎’の2品種における半促成作型での生育及び収量特性について調査しました。‘PCお竜’、‘慎太郎’では、‘春鈴’に比べ、主枝長は4月下旬以降短く推移し、平均摘心日は約3~4週間遅くなりました。また、4月以降、芽の動きが悪く、開花数、着果数は少なくなりましたが、落果数が著しく少なく、収穫果数はほぼ同様に推移しました。結果として、収量は‘PCお竜で’102%、‘慎太郎’で104%と、ほぼ同じになりました(図7~12)。
 さらに、‘春鈴’では6月中旬頃より、青べた果が多く発生しましたが、‘PCお竜’、‘慎太郎’では少ない傾向が見られました。


写真:左から‘PCお竜’、‘慎太郎’、‘春鈴’

写真:左から‘PCお竜’、‘慎太郎’、‘春鈴’

  • 具体的数値

1.促成作型における単為結果性品種‘PCお竜’の仕立て本数の検討


図1,2
図3.4
図5.6

2.半促成作型における品種の特性把握


図7.8
図9.10
図11.12
  • 部会の動きや生産者の声

 試験結果については、現地検討会などで生産者へ周知し、技術の普及を行いました。
 ‘PCお竜’及び‘慎太郎’の半促成作型での生育及び収量特性が明らかとなり、令和5園芸年度には、‘春鈴’の後継品種として両品種が栽培されることとなりました。
 また、令和5園芸年度には、春野地域の普通ナス栽培の約4割で‘PCお竜’が栽培されることとなりました。’PCお竜’を導入した生産者からは、「作業や経費の負担が減り大変楽になった」という声が多く、今後も導入面積は増えていくことが期待されます。

  • 今後の課題と展開

 3本仕立ての収量性が高いことは明らかになりましたが、4本仕立てに比べ、主枝の誘引方法が煩雑で導入しにくいという意見もあり、3本仕立ての簡易な誘引方法について検討する必要があります。また、整枝方法などについても検討し、さらに省力的で収量性の高い栽培技術の確立に取り組んでいきます。




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