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グリーンフォーカス 令和3年4月号

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農業技術センター茶業試験場 : 2021/04/01

茶園管理が一人でできる自走式茶園管理機


  • はじめに

 県内の茶栽培面積は平成12年に680ha、荒茶生産量は604tでしたが、令和元年には179ha、206tになり、ともに大きく減少しています(社団法人日本茶業中央会調べ)。この理由は茶葉の単価が低迷していることや、多くの茶園が中山間地の傾斜地に点在し作業性が良くないことや、生産者の高齢化や地域の人手不足による労働力の低下等があげられます。
 茶園管理に利用する機械類は、可搬型で重量が10kg以上あり、管理作業に人手が2~3名必要なため、茶樹の樹勢維持を図る計画的な枝条管理がほとんど行われていない茶園が多くなっています。そのため、茶樹の芽数減少や茶葉の小葉化、薄葉化により、生葉収量の減少や荒茶品質の低下が問題となっています。
 そこで、この作業性を改善するため、中山間地向けに、摘採やせん枝作業が一人でできる自走式茶園管理機(写真1)がF社により開発されました。


  • 自走式茶園管理機の特徴

 この自走式茶園管理機は、軽トラックに積載できるように、全幅が1822mmで、本体重量が350kg程度と軽量にできています。走行部は油圧駆動のゴムクローラの自走式で、茶うねをまたいで走行できます。作業部は、市販のR3000型の可搬型摘採機および、整・せん枝機を装着します。作業方法は、半条刈りで、1うねを往路、復路で作業し、復路では刃を反転させて行います。刈り取り高は525~900mmの範囲で、1mm単位で高さが変えられます。
 茶園が中山間に点在し、山あいの狭く軽トラックしか通れないような道路が多い本県のような茶園で活用できます。そして、最大の特徴である1名で作業ができ、省力化が図られます。


  • 自走式茶園管理機の導入可能な茶園の必要条件

 当場でも平成27年にこの自走式茶園管理機を導入し、本県の茶園に適合する茶園条件や作業条件などを試験しているところで、これまでの試験成果を報告します。
 安全に使用するために、この機械の導入可能な茶園の条件を検討した結果、以下のような茶園で導入できることが判りました。
1) 安全で安定した作業ができるためには、茶園の傾斜角度は15度以下。
2) 軽トラックへの機械の積み降ろしのため、荷台側面に縦2m×横3mの昇降場所が必要。
3) 茶園に進入するため、この機械の通行可能な2.4m以上の侵入道が必要。
4) 機械移動・刃物反転作業のため、機械移動側に2.4m幅以上の通路、刃反転側に0.8m以上の通路が必要。
5) 茶うねは横うねで、うね幅は1500~1800mm。
6) この機器に装着可能な摘採機、せん枝機は弧状が3000Rの半条刈りタイプになるため、県内主流の1150Rの弧状の茶園では改造が必要。
7) 道路と茶園との間に段差があり、侵入が困難な茶園は、使用できないため、段差をなくすなどの改造が必要。


  • 自走式茶園管理機の導入効果

1)年間4回の作業で、のべ作業人員が6名削減できます。
 この自走式茶園管理機でできる作業は、摘採、せん枝(刈りならし、中切り、浅刈り、整枝)ができます。これらの作業は、現行機器の可搬型を使った場合は摘採が3人、せん枝が2人の人員が必要です。それに対し、この自走式茶園管理機では、すべての作業が1人でできます。
 年間の作業体系による実作業人員数の例をあげると、可搬型だと一番茶摘採に3人、整枝に2人、二番茶摘採に3人、秋整枝に2人の、のべ10人必要です。それに対し、自走式茶園管理機では各作業が1人で、のべ4人です(第1表)。そのため、この作業体系では、のべ6名の削減効果があります。

2)年間4回の作業でのべ作業時間が約4時間短縮されます。
 各作業時間を茶業試験場で調査しました。上記の作業体系で年間作業時間を合計すると、可搬型機器では合計約4時間2分に対し、自走式茶園管理機では秋整枝を2回行ったため約6時間になり、自走式茶園管理機の実作業時間は2時間多く、約1.5倍になりました。しかし、これを人員と作業時間を乗算した延べ作業時間を算出すると、可搬型では約9時間52分でした。これに対し、自走式茶園管理機では約6時間となりました(第1表)。この結果、自走式茶園管理機は可搬型に比べ、作業時間が60%になり、約4時間の短縮効果が認められました。

3)摘採面、整・せん枝面がほぼ均一になります。
 自走式茶園管理機による作業精度を調査しました。可搬型摘採機や整・せん枝機と自走式茶園管理機の作業後に作業面(摘採面、整・せん枝面)の樹高(地面からの高さ)を測定し、比較しました。その結果、自走式茶園管理機は樹高の標準偏差の平均値は一番茶摘採で0.5、二番茶摘採で0.5、秋製枝で0.4と高さがほぼ均一でしたが、可搬型機は各々1.9、1.9、1.7とふれ幅が自走式茶園管理機より大きくなりました(第2表)。このことより、自走式茶園管理機の作業精度は可搬型より高く、作業面がよく揃うことが判りました。

4)作業が楽になります。
 作業負荷を平坦地茶園、傾斜地茶園それぞれで計測しています。その結果、平坦地茶園の浅刈りでは可搬型機器の負荷が小さかったが、その他の作業では可搬型機器の作業負荷が大きくなったとの報告があります。このことから、自走式茶園管理機は、可搬型機器の使用と比較して作業負荷が軽減できることが判りました(佐賀県茶業試験場 茶業研究報告)。
 また、可搬型機器は直接手で持つため、振動が伝わり、体への負担がかかります。しかし、自走式茶園管理機はこの振動がなく、振動による体への負担は軽減できます。

 これらのことから、自走式茶園管理機で作業すると、摘採やせん枝が1人でできるようになり、作業が楽に行えるようになります。年4回の作業体系だと、年間のべ6人の人員が削減でき、のべ作業時間は4時間短縮でき、摘採面、整・せん枝面がほぼ均一になりました。そして、作業負荷を大きく軽減することが可能です。


  • おわりに

 この自走式茶園管理機は、現在(令和3年3月)、本県では仁淀川町、津野町、茶業試験場で合計3台導入されています。仁淀川町では生産者が令和元年に導入し、秋整枝と令和2年の一番茶の摘採に活用されました。津野町では津野山茶部会で平成30年より導入し、主に地域起こし協力隊の方が、茶園を借り受け、一番茶および二番茶の摘採、整枝に活用しています。
 今後ますます茶栽培者数は減少し、労働力の低下が予想される茶栽培のためには、一人で簡易に作業できる有意義な機械だと考えています。



表1


表2


写真1



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