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グリーンフォーカス 令和元年11月号

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中央西農業振興センター 高知農業改良普及所 : 2019/11/01

露地ショウガの生産安定に向けて

  • 地域の現状(背景)

 JA高知市の基幹品目である露地ショウガは、JA高知市マル朝生姜生産組合を中心に45戸の生産者、約48haで栽培されています。栽培ほ場は、高知市を中心に四万十町から香南市まで広範囲にわたっています。普及所では露地ショウガの生産安定に向け、JAやマル朝生姜生産組合と連携し、ほ場の排水および土壌病害対策に取り組んでいます。

  • 活動内容

1.ショウガチーム会
 課題解決を行うため、毎月JA高知市営農渉外員とチーム会を行っています。チーム会では、課題毎に取り組み状況確認等の進捗管理、今後の活動について検討しています。また、ショウガの生育状況や病害虫の発生状況等、情報共有の場としても役立っています。

2.排水対策の検討
 ショウガは土壌病害が発生した場合、連作が困難になります。また、排水性が悪いと病害発生の要因となり栽培には不向きになります。高知市内には排水性の悪いほ場が多くあり、排水対策が大きな課題となっています。そこで昨年から、新地下水位制御システム(以下「フォアス」)を設置し水管理性を向上させたほ場においてショウガ栽培を行い、フォアスの有効性を検討しました。

3.低濃度エタノール土壌還元処理の実施
 土壌病害として、青枯病や根茎腐敗病などが深刻な問題となっていますが、特に青枯病については、有効な土壌消毒剤がないのが現状です。管内では青枯病の発生は少ないものの、発生ほ場ではショウガの休耕もしくはアブラナ科作物などを輪作して対応しています。昨年、青枯病既発ほ場において、農業技術センター協力のもと低濃度エタノールを用いた土壌還元処理を行い、土壌深部までの防除効果を検証しました。低濃度エタノール土壌還元処理とは、有機物としてエタノール水溶液を利用し、透明フィルムを土壌表面に被覆する太陽熱消毒を組み合わせた土壌消毒技術です。エタノールは粘性の低い液体なので、フスマや糖蜜よりも土壌深くまで浸透し、処理効果が期待されます。

 課題解決を行うため、毎月JA高知市営農渉外員とチーム会を行っています。チーム会では、課題毎に取り組み状況確認等の進捗管理、今後の活動について検討しています。また、ショウガの生育状況や病害虫の発生状況等、情報共有の場としても役立っています。

  • 地域の動きおよび活動の成果

1.ショウガチーム会
 今年度は、新たにショウガ病害事例集を作成することになりました。病害発生初期や典型的な症状は判断しにくいため症状を写真でわかりやすく示し、農家が病気を推定できるような冊子を目指しています。農家から持ち込まれたショウガをJA営農渉外員と一緒に検鏡し、病気を診断することで営農渉外員の資質が向上しています。



写真1 病気の診断

                    写真1 病気の診断


2.排水対策の検討
 昨年度、フォアスにおける1年目の栽培試験を行いました。フォアス設置ほ場では、未設置ほ場と比べて明らかに排水性が改善されていました。フォアスでの栽培は、病気の発生はみられませんでしたが、非設置区に比べ生育は劣り、収量は少ない結果となりました。これは、フォアス設置時重機によって土壌が硬くなり、生育初期から根張りが悪かったことが原因と考えられ、作土層を改善してから栽培するのが望ましいことがわかりました。成果は今年度の高知市営農技術会議で発表しました。農家や関係者から多くの質問があり、関心の高さがうかがえました。今年度は、深耕による作土層の改善を行い、2年目の栽培試験に取り組んでいます。



写真2 収量調査(左:フォアス設置区、右:非設置区 写真3 高知市営農技術会議での報告

 写真2 収量調査                  写真3 高知市営農技術会議での報告

(左:フォアス設置区、右:非設置区)



図1 フォアスでの生育調査

 図1 フォアスでの生育調査


3.低濃度エタノール土壌還元処理およびその効果の確認
 昨年処理した実証ほは、平成28年に露地ショウガを栽培中青枯病および根茎腐敗病が発生し、収穫時ほ場北側の約半分に被害が及んだほ場です。昨年7月26日、農業技術センター協力のもと低濃度エタノール土壌還元処理を行いました。処理前日までに実証農家が耕うん、畦立て、かん水チューブ設置を行い、処理前日に、流量計設置、ポリ被覆、酸化還元電位計の設置、事前かん水を行いました。当日はエタノール(商品名「エコロジアール」)施用、事後かん水を行い、かん水量は合計して10a当たり93.6トン、施用エタノール濃度は0.694%(総かん水量中のエタノール濃度換算)でした。地下20cmおよび50cmの地温は、施用前日7月25日から9月中旬まで30℃を上回っていました。処理前は土壌中から青枯病菌が検出されていましたが、処理後には選択培地で検出限界以下であり、Bio-PCR(fliC)でも菌は検出されませんでした。今作ショウガ栽培を再開していますが、10月現在病害は発生しておらず生育は順調です。今年、実証農家自ら低濃度エタノール土壌還元処理を実施しており、4ほ場、34.5aで処理を行っています。農家の声として、「土がリフレッシュされたのか生育が旺盛だ。」、「栽培中雑草の発生が少なくて良い。」など好評価でした。



写真4 低濃度エタノール土壌還元処理 写真5 今年度栽培全景

 写真4 低濃度エタノール土壌還元処理        写真5 今年度栽培全景

  • 今後の展開

 フォアスの作土層を改善し、継続して試験を行っていきます。
低濃度エタノール土壌還元処理は地温の確保が効果を左右することから、処理の適期は6~9月となります。そのためショウガの栽培が1作お休みとなります。また、青枯病に対して効果があることが示されましたが、最も発生が多く問題となっている根茎腐敗病に対しては効果が不明瞭です。多くの事例を収集し、根茎腐敗病に対して効果的な処理法を確立していく必要があります。引き続き普及所では、根茎腐敗病に対して早期発見による抜き取りとローテーション薬剤処理、土壌消毒の実施を指導していきます。
 さらに、長年の課題として、毎年貯蔵中に塊茎が腐敗する障害が問題となっています。貯蔵中に発生が進行する病気として、疫病、立枯病、紅色根茎腐敗病および貯蔵根茎腐敗病などがあります。中でも貯蔵根茎腐敗病は、収穫後茎落ち部から褐色水浸状に腐敗が進行し、症状が進むと内部に向かって楔形に陥没し問題となっています。複合感染により白色の菌糸が増殖するなど、市場事故の面からも対策が必要になっています。そこで今年から、主に貯蔵中腐敗対策をJAと協力し実施しています。



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