こうちの自慢、安全でおいしい野菜づくり(環境保全型農業)
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- 環境保全型農業とIPM
環境保全型農業とは環境を保ちつつ行う農業のことで、農林水産省は「農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業」と定義しています。しかし、化学肥料や農薬の使用回数を減らして環境負荷を軽減できても、品質のよい作物がたくさん作れなくては意味がありません。そこで、環境保全型農業を行うためには「IPM」という考え方が必要になってきます。
IPMとはIntegrated Pest Managementの頭文字を取った言葉で、日本語に直すと「総合的病害虫・雑草管理」といいます。IPMの基本的な考え方は、農薬の代わりに天敵や農業用資材を使って病害虫被害を軽減することです。しかし、この考え方は時代とともに変化しており、現在では個別防除技術(耕種的防除、生物的防除、化学的防除、物理的防除)を柱にした考え方になっています。
高知県では1994年3月に環境保全型農業推進基本方針を策定し、併せて高知県特別栽培農作物表示認証制度(県認証)をスタートしました。現在ではこの制度は廃止していますが、全国的にも早い時期から環境保全型農業に取り組んでいます。
- 天敵ってなに?
ここで少し天敵についてご説明します。天敵とは害虫を退治してくれる生き物のことをいいます。例えば、昆虫や菌類(カビ)、細菌類、ウイルスなどが天敵に含まれます。天敵として扱われる昆虫には害虫を食べてくれる捕食性天敵と、害虫に寄生する寄生性天敵がいます。捕食性天敵はアザミウマやアブラムシなどの害虫を食べてくれる虫のことをいい、タバコカスミカメやタイリクヒメハナカメムシが捕食性天敵です。これらの捕食性天敵には「高温に強い」や「農薬に弱い」といった得意・不得意がありますので、作物の栽培管理に合わせた天敵の導入が必要です。
一方で、寄生性天敵は主に寄生蜂のことをいいます。寄生蜂とは他の昆虫の体内に卵を産みつけ、孵化した幼虫が宿主昆虫の内臓を食べ尽くして成長する蜂のことをいいます。
寄生蜂には一次寄生蜂と二次寄生蜂の2つのタイプがあり、一次寄生蜂はアブラムシなどの虫に寄生する蜂のことをいいます。ヒメカメノコテントウに寄生することもありますが、アブラムシにも寄生することから一次寄生蜂は天敵として扱われています。
しかし、二次寄生蜂は宿主昆虫内の一次寄生蜂の幼虫に寄生します。そのため、一次寄生蜂(天敵)の数が減ってしまうため、二次寄生蜂は害虫として扱われます。
高知県では捕食性天敵を多く利用しており、特に土着天敵(タバコカスミカメ、タイリクヒメハナカメムシ、クロヒョウタンカスミカメなど)の利用が盛んで、都道府県別に見ても群を抜いて利用戸数が多いです。(図は天敵購入額を表しています)
表 天敵の種類
昆虫 | 捕食性昆虫 |
タバコカスミカメ タイリクヒメハナカメムシ クロヒョウタンカスミカメ ヒメカメノコテントウ ナミテントウ など |
寄生性昆虫 |
アブラバチ ツヤコバチ ハモグリミドリヒメコバチ など |
|
カブリダニ類 |
スワルスキーカブリダニ ミヤコカブリダニ など |
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菌類(カビ) |
ボーベリア・ブロンニアティ トリコデルマ・アトロビリデ など |
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細菌類 |
バチルス・チューリンゲンシス(BT剤) バチルス・ズブチリス など |
|
ウイルス |
核多角体病ウイルス(NVP) 顆粒病ウイルス(GV)、 細胞質多角体病ウイルス など |
図 都道府県別天敵昆虫類購入データ
(「農薬要覧2013(日本植物防疫協会)」を元に算出)
- 高知市のキュウリでも活躍しています!
高知市春野地域の施設キュウリでは数年前から天敵の普及を開始し、年々天敵を導入する農家さんが増えています。(平成27年9月現在)
春野地域のキュウリではミナミキイロアザミウマの被害が深刻で、農薬による化学的防除や防虫ネット・UVカットフィルムなどによる物理的防除がとられてきました。しかし、ミナミキイロアザミウマの薬剤抵抗性が発達し防除が困難になってきたため、新たな防除技術として天敵に着目しました。現在はミナミキイロアザミウマ被害の実態把握とともに、土着天敵と購入天敵を組み合わせたIPM技術体系の改良と普及を行っています。
参考文献
下元満喜(2011):高知県におけるIPMの推進,植物防疫第65巻第7号
高知県安芸農業振興センター:土着天敵利用の手引き(土着天敵温存ハウス管理運営マニュアル)
天敵紹介>高知県農業技術センターホームページ(昆虫担当)
IPM>こうち農業ネット
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