【高知普及所】敵を知って対策を!(ミナミキイロアザミウマ編)
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- 日本にきた侵入害虫!
ミナミキイロアザミウマはキュウリの葉や実を食害し、病気も広めてしまうため、とても厄介な害虫です。この虫は日本在来の虫ではなく、東南アジアを中心に分布していました。1978年に宮崎県のピーマンほ場で初めて食害被害が見つかりました。続いて1979年には高知県、1980年には静岡県、1993年には40都道府県にまで広がり各地で被害が出ています。今回はこの厄介な害虫について少しご説明します。
- ミナミキイロアザミウマの生態
ミナミキイロアザミウマは生長点などの柔らかい葉に卵を産みつけます。幼虫は2齢幼虫(一度脱皮をした幼虫)までで、2齢幼虫が成熟すると地表面に落下し、土の中で蛹になります。湿度の高い条件では蛹の生存率が高く、蛹になるためには物陰が必要です。産卵から羽化までは約14日かかり、1匹の雌は25日間生存でき、その間に約100個の卵を産みます。低温には弱く、露地では越冬できない虫と言われていますが、高知県の場合は施設内で越冬します。
- どんな植物が好物なの?
ミナミキイロアザミウマは極めて広食性で、キュウリなどのウリ科野菜のほかにナス科野菜や花、果樹なども食害します。(表1)しかし、トマトではミナミキイロアザミウマは増殖しません。トマトの葉には摂食阻害物質(トマチン)が含まれているため、ミナミキイロアザミウマは増殖できず、蛹になることはありません。
(表1)ミナミキイロアザミウマが食害する植物
農作物 |
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雑草・野草 |
イヌビユ、イヌガラシ、カラスノエンドウ、オランダミミナグサ |
- どうやって防除する?
黄化えそ病のページでもご説明しましたが、ミナミキイロアザミウマは薬剤が効きにくく、薬剤防除はとても困難です。高知県では主に蒸しこみ処理、シルバーマルチ、防虫ネット、紫外線カットフィルムなどを利用する耕種的防除を取り入れています。さらに、ミナミキイロアザミウマの幼虫を捕食するタバコカスミカメやスワルスキーカブリダニを使い、数を減らすこともしています。
ミナミキイロアザミウマは広食性でいろんな作物を食害しますが、キュウリにとっては黄化えそ病の病原体を運ぶことの方が問題になっています。黄化えそ病の拡大を抑えるためにもしっかりとした防除が必要になります。
ミナミキイロアザミウマの成虫
参考文献
河合章(2001):ミナミキイロアザミウマの個体群管理,日本応用動物昆虫学会誌39-59
平野千里,八隅慶一郎,伊藤栄治,金哲史,堀池道郎(1994):トマトの葉に存在するミナミキイロアザミウマの摂食阻害物質:単離と同定, 日本応用動物昆虫学会誌,第38巻第2号109-120
写真提供
高知県農業技術センター 昆虫担当
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