【高知普及所】ブルームレスキュウリの誕生
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- ブルームとは・・・
 
白い粉がついているキュウリを見たことありませんか?これはブルーム(bloom)と呼ばれるケイ酸を主成分とした物質です。以前は糖類を主成分とした物質だと言われていましたが、現在では少量の糖類とカルシウムに加え、多量のケイ酸が実に析出したものだということがわかっています。
多くの野菜類にとって、ケイ素は生育のための必須元素ではなく、あまり吸収されません。しかし、キュウリやカボチャのウリ類ではケイ素の吸収が多く、ブルームも発生しやすいです。冬季はあまり目立ちませんが、施設栽培では4月を過ぎると急速にブルームが発生しはじめます。
- 高知県でのブルームレスキュウリの導入
 
このブルームは正常な生理的現象のひとつですが、農薬の付着と間違われることもあり、日本の市場ではあまり好まれていませんでした。そこでケイ素の吸収が少ない台木でブルームを抑えるために、昭和58年(1983)にブルームレス台木(ブルームが析出しない品種の台木)の‘輝虎’が育成され、その後次々とブルームレス台木が育成されました。現在ではこの台木を用いたブルームレスキュウリが主流となっています。高知県では1989年にブルームレス台木が導入され、翌年にはほぼ全面的に利用が拡大されました。
- 台木とは・・・
 
先に出てきました、台木について少しお話します。市場の評価が高い品種や、病気に負けない作物を作るためには、接ぎ木を行います。ホームセンターなどで販売されている野菜の苗木もよく接ぎ木をされています。その時に接ぐ下の部分を台木といいます。台木には、根から侵入する病原体に強い性質や、根の張りが広い性質などがあります。今回のブルームレス台木は、ケイ素の吸収が極端に少ない性質があります。そのため、実ではケイ酸を主成分とするブルームの析出がありません。
- ブルームレスキュウリの問題点
 
良いことばかりのように思えるブルームレス台木ですが、いくつか問題がありました。
一つは、病害抵抗性が低いことです。ケイ素は作物の病害抵抗性を高める働きがあることは昔から言われています。これは、果実の細胞壁にケイ素が付着し、物理的に病原体の侵入を防ぐためです。また、ケイ素の働きで果実の細胞内に抗菌性物質が集まることが挙げられます。そのため、ケイ素の吸収が低いブルームレス台木では病気を防ぐ力が弱まります。
二つめは、低温下での成長が劣ることです。普通の台木に比べて、ブルームレス台木は根に低温伸長性がありません。そのため、低温下では根を広げにくくなります。
最後に三つめは、マンガン過剰症になりやすいことです。ウリ類はマンガン過剰に敏感で、ブルームレス台木を使用した場合は普通の台木に比べて、草勢が弱まります。
- 現在のキュウリは・・・
 
現在これらの問題は病気に強い台木の育成や栽培管理の面で対策が取られています。
ブルームキュウリは食味には問題なく、漬物にすると味が良いという人もいます。家庭菜園などで、もしブルームキュウリが栽培できましたら、ぜひ食べてみてください。
ブルームキュウリ(左)/ブルームレスキュウリ(右)
参考文献
山中律(1995):ブルームレス台キュウリのマンガン過剰症.高知県
稲山光男(2012):キュウリの生理生態と栽培技術(誠文堂)
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