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グリーンフォーカス 令和8年7月号

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中央東農業振興センター 農業改良普及課 : 2026/07/01

土壌改善によるやっこねぎ生産安定への取り組み ~適正施肥で産地の力を底上げする~


  • 地域の現状

 高知県香美地区園芸部やっこねぎ部会の小ネギ(商品名:やっこねぎ)は、栽培面積31ha・生産量942t(R7園芸年度)を誇り、県内出荷量の73%を占める県内最大の産地です。しかし、土壌の塩類集積や塩基バランスの崩れが生産現場では長年の課題となっており、生育不良や収量低下の一因となっています。実際にH31園芸年度の部会反収に対してR7園芸年度は6.6%減少しています。土壌環境の悪化は、長年にわたる施設栽培の連作や過剰施肥が積み重なった結果と考えられます。産地としての競争力を維持・向上させるためには、土壌環境の改善が不可欠であることから、農業改良普及課とJAが連携し、実態調査と改善指導に取り組みました。


写真1:小ネギほ場の様子1

写真1:小ネギほ場の様子1


写真2:小ネギほ場の様子2

写真2:小ネギほ場の様子2


  • 活動内容

(1)土壌分析による実態の把握
 R6〜7年度にかけて、やっこねぎ部会員60戸のほ場において土壌分析を実施し、塩類集積の程度や塩基バランスの状態など土壌環境の実態把握に努めました。


(2)改善に向けた取り組み
 R6年度は、その時点で得られた分析結果を基に、湛水処理や緑肥の利用による除塩を解決策として提案しました。しかしこれらの技術は、実施にあたって1作休む必要があるため、普及には至りませんでした。そこで対策の方向性を見直し、R7年度からは、より取り組みやすい方法として、適正施肥指導の徹底と、塩類集積が少なく窒素成分を多く含む肥料の推奨へと方針を転換しました。推奨肥料については、青年部のハウスで実証試験を実施するとともに、JA購買課と連携して推奨・供給体制の整備を進めました。


(3)生産者への周知
 土壌分析の結果や改善技術については、ほ場巡回・栽培講習会・部会役員会での報告に加え、JA出荷場への掲示を通じて広く周知しました。周知にあたっては、生産者が塩類集積の問題を自分ごととして捉えられるよう、R7年度は、土壌中に残留している肥料成分を金額に換算して示すなど、経済的な損失として可視化する工夫を行いました。R8年度は、土壌の化学性を人間に例えて、過剰に肥料成分が蓄積していることを肥満傾向であると例えるとともに、高ECは高血圧にあたり、健康診断(土壌分析)や食事改善(施肥設計の見直し)が重要であると訴えかけました。


  • 活動の成果

(1)土壌分析による実態の把握
 分析の結果、97%のほ場で塩類集積が確認され、62%のほ場では塩基バランスの崩れも確認されました。肥料成分が土壌中に過剰に蓄積しており、これが養分吸収の妨げとなって生育不良を引き起こしていると考えられます。客観的なデータとして産地全体の実態が明らかになったことで、関係機関が共通の認識のもとで改善策を検討・提案できる土台が整いました。


表1:やっこねぎ部会員60戸の土壌分析結果の平均


表1

※適正範囲は、JA高知県営農指導部営農企画課の返却シートを参考


(2)改善に向けた取り組み
 青年部での実証試験において、推奨肥料による生育への悪影響は確認されませんでした。この結果を受けてJA購買課での取り扱いを依頼し、生産者が購入できる体制を整備しました。


写真3

写真3:試験肥料を確認するJA青年部員


(3)生産者への周知
 土壌分析結果を基にした施肥設計の見直しを個別巡回で推進しました。また、栽培講習会では、肥料成分の金額換算による可視化や肥満、高血圧など人体に例えた土壌化学性の講習により、生産者の関心を効果的に高め、施肥管理を見直すきっかけとしました。その結果、現在7名の生産者が推奨肥料の使用を開始しています。適正施肥指導と推奨肥料の普及を両輪として、過剰な肥料成分の蓄積を防ぐ取り組みが動き始めました。


写真4:個別巡回の様子

写真4:個別巡回の様子


写真5:栽培講習会の様子

写真5:栽培講習会の様子


  • 今後の展開

 今回の取り組みにより、産地における土壌環境の実態が明らかになり、生産者の土壌改善意識も着実に高まってきました。今後は、推奨肥料の実証データをさらに積み重ねながら使用者の拡大を図るとともに、適正施肥指導を継続的に強化することで、塩類集積の蓄積を低減し、土壌環境の改善を産地全体に広げていきます。また、窒素成分が過剰に蓄積しているほ場への対策として、基肥無施肥を基本とし、生育終盤に液肥の葉面散布で葉色を出す栽培法も検討しており、今後、技術の検証を行っていきます。施設栽培における土壌環境の維持・改善は一朝一夕には実現できませんが、生産者一人ひとりが土壌の状態を正しく把握し、適切な施肥管理を継続することが、やっこねぎ産地の持続的な発展につながります。関係機関が連携しながら、土壌改善の取り組みを粘り強く推進してまいります。




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