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グリーンフォーカス 令和4年6月号

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須崎農業振興センター 高南農業改良普及所 : 2022/06/01

四万十町における散布用ドローンによる防除体制の確立に向けて


  • 地域の現状

 県中西部に位置する四万十町は、温暖な気候の海岸部、標高230mに広がる高南台地、急峻な地形の山間部から構成され、それぞれの自然環境に合わせた多様な品目が栽培されています。そのうち、整備された大区画の農地で栽培される水稲、大豆、ショウガを中心に、労働負担の軽減が期待できる「ドローンによる農薬散布」の普及が進みつつあります。
令和3年度では集落営農組織等8経営体において、延べ198haで散布用ドローンが活用されました。
 このような中、高南農業改良普及所では、関係機関とともに四万十町における散布用ドローンでの安全で効果的な防除体制の確立に取り組んでいます。


写真1

写真1 散布用ドローン


  • 活動の内容

1)四万十町散布用ドローン利用者連絡会の設立
 散布用ドローンの活用は始まったばかりで、各経営体のオペレーターは散布経験が少ないため、安全な運行や適正な農薬使用の啓発を積極的に行う必要があります。また、四万十町では従来、無人ヘリコプターによる農薬散布が行われてきました。ここにさらに散布用ドローンの導入が増加することにより、飛行状況を共有していない状態では飛行中の無人航空機同士の接近や衝突の危険性が高くなります。そこで、導入経営体に対する関係機関からの情報提供や導入経営体同士の情報共有の場として、JA高知県、四万十町役場、高知県農業共済組合等とともに「四万十町散布用ドローン利用者連絡会」を令和3年4月に設立しました。


2)散布用ドローンの散布精度評価
 散布用ドローンは無人ヘリコプターに比べ、ダウンウォッシュ(プロペラから下方へ吹き下ろす風)が小さく、風の影響を受け散布ムラが発生しやすいと考えられるものの、実際の生産現場において散布精度を評価した事例は多くはありません。そこで、散布用ドローンと無人ヘリコプターの散布精度の比較試験を実施しました。


写真2

写真2 散布精度試験の様子(散布用ドローン)


写真3

写真3 散布精度試験の様子(無人ヘリコプター)


3)四万十町における無人航空機マニュアルの作成
 飛行に係る届け出、操縦者と補助者との連携強化等について、四万十町での無人航空機の飛行・空中散布のルールを記載したマニュアルを令和4年2月に作成し、導入経営体に配布しました。


  • 活動の結果

1)四万十町散布用ドローン利用者連絡会の設立
 四万十町散布用ドローン利用者連絡会は令和3年度に2回開催され、延べ16経営体が参加しています。連絡会では、導入経営体に対し、安全な運行、適正な農薬の使用、飛行に係る届け出等の周知を図ることができました。また、従来、無人ヘリコプターによる農薬散布を行ってきた経営体からの「農薬散布前には毎年、操縦練習を実施している」との情報から、操縦練習の必要性を共有することができました。


写真4

写真4 連絡会の様子


2)散布用ドローンの散布精度評価
 感水紙(吸湿すると発色する紙)を等間隔で複数カ所設置した圃場に、散布用ドローン(AGRAS T-20)、無人ヘリコプター(FEZAR R)を用いて水を散布し、感水紙の発色面積を測定し、散布精度を評価したところ、機種間に散布精度の大きな差は認められませんでした。ただし、両機種ともに、散布時は1.5m/s程度の風速ではありましたが、風上より風下の地点の発色面積が大きくなっており、散布液が風により流されやすい実態を把握することができました。したがって、可能な限り風のない日時を選んで散布する必要があることが分かりました。


図1

図1 感水紙設置地点と飛行経路の模式図


図2

図2 各機種における感水紙発色面積率


 また、散布用ドローン、無人ヘリコプターそれぞれによる農薬散布の実施前と後に病害虫発生状況の調査を行い、防除効果に問題がないか確認したところ、両機種ともにカメムシ類に対する防除効果に問題はなく、散布用ドローンでも無人ヘリコプターと同じ防除効果が得られることが分かりました。ただし、いもち病、ウンカ類は防除前から発生が少なく、防除効果が判然としなかったため、継続した検討が必要です。


表1

表1 各機種による防除前後における病害虫発生状況


 これらの結果を、連絡会で報告し、参加者から「風がない日時に散布することの重要性をよく認識できた。」といった感想がありました。


3)四万十町における無人航空機マニュアルの作成
 本マニュアルを作成したことにより、四万十町におけるルールを効率的に伝達することができるようになるとともに、また、本マニュアルを必要に応じて更新していくことにより、今後、連絡会を通して設定する新たなルールを効率的に記録することができるようになりました。さらに、本マニュアルを、散布用ドローン導入経営体だけでなく、今後の導入に関心のある経営体にも配布することで、導入後の手続き等について事前に周知できるようになりました。


写真5

写真5 四万十町における無人航空機マニュアル


  • 今後の活動

 残念ながら四万十町において、令和3年度にはドローンによる農薬散布中の事故が2件発生しましたが、今後は農薬散布中の事故が発生しないように、引き続き、連絡会において必要な情報の周知や各経営体の経験を踏まえた重要な情報の共有を図っていきます。また、水稲以外の品目においても散布用ドローンの有用な活用方法について検討していきます。




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