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グリーンフォーカス 令和2年11月号

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中央東農業振興センター 嶺北農業改良普及所 : 2020/11/01

カイゼン手法を使った花き出荷調整作業の効率アップ


  • 地域の現状

 嶺北地域は標高250~900mの中山間地に位置し、夏秋期を中心に野菜・花きが栽培されています。JA高知県れいほく花き部会の出荷販売額は約1億4千万円(令和元年度、普及所調べ)あり、中でもオリエンタル系ユリは収益性が高く、主要な品目となっています。
 対象農家はオリエンタル系ユリとトルコギキョウを栽培し、規模拡大、出荷量の増加にともなって作業者を雇用しており、出荷作業場での人員配置や作業の効率化が課題となっていました。
作業の効率化に向けて、外部アドバイザー(カイゼンマイスター)を活用しながら課題解決に取り組んでいます。


  • 令和元年度までの活動内容

1.現状分析
 出荷調整作業を撮影するなどして現状分析を行ったところ、
(1)調整前に調製済み桶と作業台の間を往復する必要があり、作業者の動線が重なる
(2)桶を移動させることが多く作業者の負担が大きい
(3)選別が終わった花を煩雑に置いているため規格が混在し、作業性が低下している

 など、カイゼンマイスターから指摘がありました。
 効率化に向けて、作業場のレイアウト改善が急務であることから、まずは、人や物の動きを見える化して、動線の重なりや移動距離の削減を検討することになりました。

 調整作業場の配置を図にし、花と作業者それぞれの動きを確認したところ、移動が長く、動線が交差していることが確認できました。


改善前の作業配置図

   図1:改善前の作業場配置図と動線


2.改善案の検討
 他地域の花き農家の作業場を視察したり、実際の作業の様子を動画で確認し、また、作業場の模型を作成してレイアウトの改善を検討しました。


作業場模型写真

写真1:普及指導員が作成した作業場の1/50模型


 また、カイゼンマイスターの現地指導を参考に、作業場のレイアウトを図2のように変更して検討しました。


改善後の配置図

   図2:改善後の作業場配置図と動線




3.作業場の改善
(1)作業台の撤去、桶の配置、規格別ラベル吊り下げ
 作業台を減らし、選別した花を等級ごとに桶に入れ作業台を囲むように配置しました。改善後の作業場では作業者の動線が交わらず、歩行距離が短くなりました。また、規格の混入がなくなったほか、水揚げが維持され、品質を保ったまま箱詰めできるようになりました。
(2)作業台や包装機等の可動化
 固定式の作業台や包装機にキャスターをつけ移動可能にしました。これにより収穫量や作業者に合わせてレイアウトを変更しやすいようにしました。
(3)運搬作業負担の軽減
 桶を台車に乗せて持ち運び作業を軽減しました。



作業場全体の様子

   写真2:作業場全体の様子


ユリ動線改善

  図3:動線の改善



  • 活動の成果

(1)カイゼンの効果
 カイゼンの結果、そぐり工程では1本あたり2秒短縮され、年間で46時間の短縮となりました。花束作成工程では、作業場内での移動距離が64%削減でき、作業時間が短縮されるとともに身体的な労力負担も軽減されました。
 作業全体では、1束あたりの作業時間が約30%削減され、年間労働時間に換算すると898時間の削減につながりました(時間等は推計値)。
 また、レイアウト変更で作業者同士が近くなり、作業の助け合いができるようになりました。全員が作業の効率化を意識するような変化も見られました。


(2)カイゼンが進んだ要因
 動画の活用や模型による検討、カイゼンマイスターによる現場での直接指導等により、対象農家に課題点や改善案をわかりやすく示すことができました。
 対象農家がカイゼンに取り組む意欲が高く、提案に対して行動が早かったこと、また、出荷開始時期から取り組めたことにより検討期間を十分確保できました。
 さらに作業員全員が効率化を意識するようになったことが進んだ要因です。


  • 今後の展開

 今回の対象農家では、球根のプレルーティング(芽出し処理)や定植作業での作業負荷の軽減、外国人技能実習生向けに作業標準書をわかりやすく見直すことなどを目指してカイゼンを続けていきます。
 普及所は、ミニトマトの管理作業のカイゼン等、省力化や効率化を今後も支援していきます。




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