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グリーンフォーカス 平成30年1月号

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高知県農業技術センター : 2018/01/01

露地ショウガ産地のための脱臭化メチル栽培マニュアル


 露地ショウガは、高知県が国内最大の産地です。ショウガは根茎腐敗病や雑草などの被害が大きく、これらの防除のため臭化メチル剤が広く使用されてきましたが、2013年には不可欠用途を含めて全廃が決定されました。
農業技術センターでは、臭化メチルに替わる防除技術の開発に取り組み、特に2008~2014年にかけては、農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業「臭化メチル剤から完全に脱却した産地適合型栽培マニュアルの開発」において、防除技術の開発を行いました。その結果は脱臭化メチル栽培マニュアル(図1)として取りまとめ、産地への周知を図ってきました。今回、改めてマニュアルの概要を紹介します。

【露地ショウガ産地のための脱臭化メチル栽培マニュアル】
 露地ショウガで問題となっていた根茎腐敗病(写真1)、雑草及びネコブセンチュウ(写真2)を対象として、臭化メチルから脱却した防除技術を開発しました。
 開発した防除技術の基本は、代替土壌くん蒸剤による土壌消毒と、生育期間中の防除を組み合わせた体系防除です。また、これらの防除効果を高めるためには、健全な種塊茎を利用するとともに、圃場での病害虫、雑草の発生状況を的確に把握することが必要です。そのため、主な防除作業は、(1)代替くん蒸剤による土壌消毒、(2)植付け時の観察、(3)生育期の防除、(4)収穫時の観察が中心となります。
(1)代替くん蒸剤による土壌消毒
 主な代替くん蒸剤を表1に示しました。これらの薬剤には、根茎腐敗病、雑草、ネコブセンチュウに対する防除効果に差があるため、前作での発生程度に応じた適切な薬剤を選びます。なお、薬剤により処理に要する経費に差があるため、経費も考慮して選んでください。
(2)植え付け時の観察
 植付け時には、病害虫、特に根茎腐敗病に感染した種塊茎を使用しないよう、十分に選別を行います。種塊茎の調整時などに表面や断面をよく観察して、腐敗や褐変など異常のあるものは使用しないことが重要です(写真3)。
(3)生育期の防除
 表2に示したような根茎腐敗病の防除薬剤を、根茎腐敗病の初発前に、予防的に処理します。その後は、発病したらすぐに発病株を除去し、薬剤を追加処理します。ただし、前作で根茎腐敗病が多発したほ場では、20~30日間隔で定期的に薬剤を処理しないと発病を抑えることは困難です(図2)。
生育期の雑草は、少ないうちに手で抜き取ることが基本ですが、発生が多い場合には除草剤を使用します。ただし、時期や対象雑草の種類によって使用できる除草剤が異なるため、適切な剤を選んでください。
なお、ネコブセンチュウについては、露地ショウガでは密度が急激に上昇することは少ないようです。前作の発生程度に応じた適切な土壌くん蒸剤で土壌消毒を行えば、生育期間中の防除は必要ないと考えています。
(4)収穫時の観察
 根茎腐敗病は高温時に発生しやすい病害であり、気温が低下する秋以降に感染した場合には、地上部に症状が認められないことがあります。また、ネコブセンチュウの被害は、生育期間中に判別することは困難です。そのため、収穫時には根茎をよく観察して病害虫の被害の有無を確認し、その結果をもとに、次作の防除体系を決定します。

【おわりに】
今回のマニュアルにより、露地ショウガの根茎腐敗病、雑草、ネコブセンチュウの防除はある程度可能になったと考えています。しかし、根茎腐敗病の多発圃場では、防除コストが大きくなりすぎるのが現状です。また、近年増加している青枯病も、大きな問題となっています。今後も、これら残された問題について、新たな対策技術の開発に取り組んでいく必要があると考えています。
 なお最後になりましたが、マニュアルの詳細については、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センターのホームページ(http://www.naro.affrc.go.jp/narc/contents/post_methylbromide/index.html)からダウンロードできるので、参照してください。


図1

              図1 脱臭化メチル栽培マニュアル(表紙)



写真1 左 写真

                写真1 根茎腐敗病の症状



写真2 左 写真2 右

写真2 ネコブセンチュウの被害(左:根に生じたコブ、右:表名のひび割れ)



表1


写真3左 写真3右

写真3 根茎腐敗病に感染した種塊茎(左:表面のくぼみ、右:内部の褐変)



表2


図2

図2 前年度の根茎腐敗病が中~多発生の場合の生育期防除体系に使用する薬剤は、図に示した剤に限る必要はありません




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