幹腐病とその防除 (果樹技術情報No.1)
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○はじめに

ユズ幹腐病は、昭和56年頃から県内外の山間部を主体としたユズ産地で、原因不明の病害として問題になっていました。
その後、試験研究機関による本病害の原因究明と防除対策に関する研究が進み、病原菌、感染経路及び一定の防除方法が明らかになりました。
また、県内のユズ産地を管轄する農業改良普及センターが主体となった「ユズ幹腐病防除対策緊急プロジェクトチーム」により、現地普及に向けた防除対策及び防除技術への取り組みがなされ、一定の成果が得られました。
ここでは、その成果の一部である防除対策について紹介します。
○症状
幹腐病の病斑は、主幹部や枝の分岐部、水平に伸びた枝の下側など、日光の当たりにくい部分に多く見られます。 症状が進むと、すり鉢状、または溝状の凹みを生じて腐りこみ、激しいものは枝や幹が凸凹になります。 幹の深くまで腐りこむと、果実の重みで枝が折れ、樹が枯死することもあります。
○病原菌
カビの一種で、ラクナム・アブノルメ(Lachnum abnorme)という菌です。生育適温は20~25℃で30℃以上では生育しません。多湿条件を好みます。
○どのように感染するのか?
感染は、病斑部のキノコから飛び出した胞子が、風雨によって移動し、傷口や樹皮の亀裂などから侵入することで起こります。せん定や芽かきなどによる傷はもちろんですが、新梢の分岐部では、無傷でも感染することがわかっており、新芽が出る樹皮のわずかな亀裂からの感染も考えられます。
○いつごろ感染するの?
キノコの発生 → 胞子の飛散 → 感 染
キノコの発生は4月中旬から始まり、梅雨時期が最も多くなります。 夏場の高温、乾燥期にはほとんど発生しなくなり、秋雨時期に再び発生が多くなります。
キノコの発生や胞子の飛散量などから、幹腐病の感染は、梅雨時期頃(5~6月)と秋雨時期頃(9~10月)が多いと考えられます。
○防除対策
農薬名 | 作物名 | 希釈倍率 | 使用時期 | 使用回数等 |
トップジンMペースト | カンキツ | 原液 | 整枝せん定時 | 1回 塗布 |
ICボルドー66D | カンキツ | 2倍 | - | -(病斑部散布) |
ICボルドー66D | カンキツ | 50倍 | - | - |
キノンドー水和剤80 | カンキツ | 800倍 | 収穫60日前まで | 3回以内 |
ベルクートフロアブル | カンキツ | 1,000倍 | 収穫 7日前まで | 2回以内 |
これらの薬剤で、せん定直後(感染源の根絶)や 胞子飛散量の多い5~6月及び9~10月の感染時期(感染予防)に防除することが重要です。
○薬剤防除の留意点
通常散布では枝幹部に薬液が十分かからないので、
枝幹部を意図的にねらって丁寧に散布してください。有機栽培園では、使用できる農薬が限られていますので注意してください。
ベルクートフロアブルは、ベフラン液剤と同じ成分を含む薬剤なので、両剤の総使用回数は2回までですので気をつけてください。
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