グリーンフォーカス 令和6年9月号
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夏秋雨よけ米ナスの温湿度データを活用した栽培管理の推進
- 背景
津野山地域は、高知県中西部の中山間地域に位置する梼原町及び津野町旧東津野村からなり、夏期冷涼な気候を活かした夏秋雨よけ栽培が行われています。
津野山地域の主要品目である米ナスは、令和6年度には11戸の生産者が1.4haで栽培を行っており、生産者11戸のうち8戸が70歳以上で、高齢者が生産を担っています。
高知県では、近年、環境測定データを活用したハウス内環境を管理する技術が取り入れられていますが、津野山地域では環境測定装置の導入農家が少なく、米ナス生産者では令和5年度に1戸が装置を導入しましたが、データの活用は進んでいませんでした。
- 取り組みのきっかけ
令和5年の栽培が終了した令和6年1月に、米ナス生産者全戸の面談を実施しました。
生産者、JA営農指導員、普及指導員とで栽培状況を振り返る中から、栽培管理が十分できていないこと、中でも「栽培初期(4~5月)の温度管理」が生産者の共通課題であることが分かりました。
そこで、令和6年の栽培ではスマート家電の設置を進め、全戸のハウス内の温湿度を「見える化」して、温湿度データを活用した栽培管理に取り組む事になりました。
1月 生産者との面談
- データを活用した栽培管理の取り組み
(1)ハウス内環境の見える化
まず、低コストで温湿度の測定が可能なスマート家電の設置を、米ナス生産者全戸に働きかけました。
4月には全戸で温湿度データが記録され、データがいつでも見られるようになりました。
(2)栽培初期の温度管理の改善
現地検討会などで、4~5月は定植後の活着を促すためハウス内温度は最低15℃の確保が重要であることを説明して、そのための換気方法を指導しました。
巡回指導時には、ほ場の温湿度の推移を生産者とともに確認し、15℃を下回った後の生育状況や、15℃以上を維持できた時の生育状況を振り返ることができました。
また、スマート家電のデータはグラフで表示できるため、「変化が分かりやすい」と高齢の生産者に好評でした。
4月 現地検討会 7月 現地検討会
4月 巡回指導 7月 巡回指導(タブレットでデータ確認)
- 取り組みの成果
生育初期に最低温度が確保されたことで、前年に比べて生育が順調で、5~6月の収量が15%増加しました。
また、他にも各農家が温湿度データを基に病害対策のための予防散布を実施するなど、環境測定データ(温湿度)を活用した栽培管理が実践され、7月末時点で病害の発生がほとんど見られないなど、データ活用の効果が上がっています。
- これから
今後も、米ナス生産者の温湿度データを活用した栽培管理技術の向上と経営の安定化に取り組みます。
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