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タバココナジラミの生態と天敵

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高知県農業技術センター : 2024/03/15

タバココナジラミ Bemisia tabaci (Gennadius)

 タバココナジラミは世界中に分布し、様々な作物を加害する重要害虫です。植物体を吸汁することにより生長を阻害するほか、成虫や幼虫が排泄する甘露が付着した部位に黒色のカビを生じさせ光合成を阻害します(すす病)。また、トマト黄化葉巻病(TYLCV)やキュウリとメロンの退緑黄化病(CCYV)などのウイルス病を媒介することで問題となります。



タバココナジラミ成虫 タバココナジラミ幼虫

   タバココナジラミ(成虫)      右下:タバココナジラミ(幼虫)、左上:羽化後の抜けガラ


 成虫の体長は約0.8mm、体色は淡黄色~オレンジ色です。幼虫はふ化後の1齢幼虫は歩いて移動しますが、2齢以降は葉に固着して移動しなくなります。卵から約20日程度で成虫になり、雌成虫は生涯で60~200個の卵を産みます。


 高知県では1989年にポインセチアでタバココナジラミのバイオタイプBが、2003年頃からバイオタイプQが確認され、いずれも薬剤による殺虫効果が低い系統であったため問題となり始めました。

  • バイオタイプとは

 見た目は同じですが生態の異なるグループのことで遺伝子解析により区別します。タバココナジラミではこれまでに海外から侵入してきたバイオタイプBとバイオタイプQ、日本在来のバイオタイプJpLとバイオタイプNauruなどの発生が知られてます。なお、バイオタイプBは過去にシルバーリーフコナジラミとして別種に分類されていたことがあります。

タバコカスミカメ Nesidiocoris tenuis (Reuter)


タバコカスミカメ成虫 タバコカスミカメ幼虫

    タバコカスミカメ(成虫)        タバコカスミカメ(幼虫)


 成虫の体長は約3.5mmでコナジラミ類やアザミウマ類を捕食する天敵で、ナス、ピーマン類、キュウリなどで利用されています。雑食性で植物を食べる一面も持っており、クレオメやゴマなどの特定の植物を食べることで生存・繁殖できます。そのため、害虫がいない時期にはクレオメやゴマなどを天敵温存植物としてタバコカスミカメを維持しながら、害虫の発生を待ち伏せができる点が天敵としてとても優れています。また、高知県では野外に生息している土着天敵であるため、クレオメやゴマをほ場に植えておくと自然に発生し増殖する場合が多いです。なお、2021年からは天敵製剤(商品名バコトップ)として販売もされています。


 雌成虫1匹が1日で捕食する害虫の量は、タバココナジラミ4齢幼虫で最大56匹、ミナミキイロアザミウマ2齢幼虫で最大165匹であり、コナジラミ幼虫とアザミウマ幼虫を同時に与えると先にアザミウマ幼虫を好んで捕食する傾向があります。

クロヒョウタンカスミカメ Pilophorus typicus (Distant)


クロヒョウタンカスミカメ成虫 クロヒョウタンカスミカメ幼虫

  クロヒョウタンカスミカメ(成虫)    クロヒョウタンカスミカメ(幼虫)


 体長は約2.7mmでコナジラミ類やアザミウマ類などを捕食する土着の天敵です。成虫の体色は黒く姿はアリに似ていますが、口がストロー状(アリの顎はハサミ状)のカメムシの一種です。また、若齢幼虫の体色は成虫とは異なり赤色がかっています。タバコカスミカメと違って植物体のみでは維持ができないため、ほ場内の害虫が減少すると姿が見えなくなります。ほ場内の密度を維持するには、野外からの採集や天敵温存ハウスで増殖させたクロヒョウタンカスミカメをハウス内に放飼する必要があります。


 コナジラミ類やアザミウマ類だけでなく、ナミハダニやハスモンヨトウ1齢幼虫、コナカイガラムシなど様々な害虫を食べることが確認されているカメムシで、雌成虫1匹が1日で捕食する害虫の量は、タバココナジラミ4齢幼虫で最大49匹、ミナミキイロアザミウマ2齢幼虫で最大18匹と報告されています(高知大学:荒川、西川)。

スワルスキーカブリダニ Amblyseius swirskii Athias-Henriot


スワルスキーカブリダニ成虫 スワルスキー卵

   スワルスキーカブリダニ(成虫)      スワルスキーカブリダニ(卵)


 成虫の体長は0.3mm程度で体色は淡い黄色、卵の大きさは0.15mm程度の乳白色で植物の葉裏にある毛の先端などに好んで産卵します。コナジラミ類の卵・幼虫やアザミウマ類の1齢幼虫をよく捕食します。コナジラミの卵や1齢幼虫を1日あたり最大15匹捕食します。ただし、自分より体の大きいコナジラミの3~4齢幼虫や成虫を捕食することは難しいです。

 高温多湿を好み活動適温は28℃、低温には弱いため厳寒期には活動が低下します(メーカー推奨は夜温度15℃以上)。雑食性で餌となる害虫がいないときでも植物の花粉を食べて生き延びることができるため、花粉が多いピーマンなどと相性が良いですが、一方でトマトでは粘着性の分泌物質を嫌うため利用が難しいです。

 スワルスキーカブリダニは製剤化されており購入できる天敵ですが、ヨーロッパの生産工場からの輸送となり、高知では発注から到着までに2週間程度の期間がかかります。害虫が発生してからの製剤注文ではなく、防除計画に基づく予防的な利用が効果的です。

リモニカスカブリダニ Amblydromalus limonicus Garman&McGregor


リモニカスカブリダニ

   リモニカスカブリダニ(成虫)


 成虫の体長は0.3mm程度で体色は透白色、卵の大きさは0.15mm程度の乳白色です。捕食する害虫はスワルスキーカブリダニと似ていますが、コナジラミの3~4齢幼虫も捕食することができ、捕食量もスワルスキーカブリダニよりやや多いとされています。

 スワルスキーカブリダニよりやや低温に強いですが(メーカー推奨は夜温度13℃以上)、反対に高温には弱く30℃以上になると活動が低下します。雑食性で花粉を餌にできる点や、トマトでの利用が難しい点はスワルスキーカブリダニと同じです。

 リモニカスカブリダニも製剤化されており購入できる天敵ですが、スワルスキーカブリダニと同様でヨーロッパからの輸送となり、発注から到着までに2週間程度の期間がかかります。また、リモニカスカブリダニはスワルスキーカブリダニより値段が高いため(農薬ラベルの最大使用量の場合では約4倍)、スワルスキーカブリダニ以上に計画的な利用を心がけましょう。




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