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グリーンフォーカス 令和5年10月号

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農業技術センター果樹試験場 : 2023/10/01

ユズにおける簡易な葉面積指数(LAI)の推定技術


  • はじめに

 ユズは高知県を代表する果樹であり、県内の栽培面積は885ha、生産量は9,654t(令和4年産)と日本一の産地です。生産者の高齢化により、新規就農者の確保が喫緊の課題となっていますが、ユズは隔年結果性が強いことや、せん定に代表される栽培管理に熟練の技術が必要であることなどが新規就農を阻害する一因となっています。また、ユズは他のカンキツ類と比較して加工用果実も高単価で取引されるため摘果はほとんど行われず、主にせん定の強さや量で着果量を調節していますが、せん定には客観的な指標がありませんでした。一方、葉の繁茂状態を表す葉面積指数(以下、LAI)は単位面積当たりの葉面積の総和であり、せん定量の指標になり得ますが、LAIの測定には非常に高価なプラントキャノピーアナライザー(以下、PCA)が必要でしたので、新規就農者等の一般の生産者がLAIを測定するためには、安価な測定機器の開発が必要でした。
 そこで、LAIをせん定時の指標として活用するためにNECソリューションイノベータ株式会社と共同でスマートフォンで使用できるLAI推定アプリを開発しました。


  • LAI推定アプリについて

 LAI推定アプリでは、スマートフォンに搭載のカメラに市販の魚眼レンズを装着することで対象樹全体のLAIを推定できます(図1)。また、園地の栽植密度に応じたモード(独立樹または密接樹)および樹高比の選択、撮影後の画像から対象樹以外の範囲を選択して推定対象外とすることで、対象樹のLAI推定精度を向上させることが可能です。なお、インストール後に空隙率検出閾値(2値化閾値)を機種ごとに設定する必要があります。



図1

図1 魚眼レンズを装着したスマートフォンおよびLAI推定アプリ画面


  • LAI推定アプリによる測定方法

 LAI推定アプリによる測定(以下、スマホLAI)は、LAI推定アプリをインストールしたスマートフォンのインカメラに魚眼レンズを装着して行います。測定位置は樹冠半径の1/2とし、スマートフォンの上部を樹体中心に向け、地表面から上に向かって測定します。測定モードおよび樹高比は対象樹に応じて変更します。また、撮影画像から対象樹が写っている範囲を自動および手動で指定します。
 LAI推定アプリでは、1方向からでもLAIを推定できますが、精度を向上させるためには畝を挟んだ2方向から測定した値を平均することが推奨されます(図2、3)。
スマホLAIは、葉数×個葉面積/樹冠占有面積から求めた実測LAIと強い相関がみられ、PCAと同じかそれ以上の精度でLAIを推定できることが明らかになりました(図2、3、表1)。


図2

図2    1方向から測定したスマホLAIならびに4方向から測定したPCA-LAIと実測LAIとの関係 



図3

図3    2方向から測定したスマホLAIならびに4方向から測定したPCA-LAIと実測LAIとの関係


表1    スマホLAIおよびPCA-LAIと実測LAIとの比較


表1

  • おわりに

 LAI推定アプリによってLAIをせん定量の指標として活用できると考えられました。せん定時には、LAI推定アプリから得られたLAIを確認しながら、せん定量を調節してください。ただし、本研究結果は果樹試験場内の開心自然形のユズにおける調査によるものであり、樹形が未完成の場合や園地条件(日当たり、傾斜、周辺環境)、測定条件(時間、天候)によっては正確に測定できない可能性があります。今後は、安定して測定できる条件を検討する予定です。なお、本アプリはAndroid機種のみに対応しており、高知県在住のユズ生産関係者であれば、農業振興センターを通じて高知県に申請することにより無償でダウンロード・使用可能です。




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