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グリーンフォーカス 令和5年8月号

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須崎農業振興センター 高南農業改良普及所 : 2023/08/01

園芸振興による北幡地域の維持・発展


  • 取組の背景

 中山間地である北幡地域では、露地野菜や果樹等の複合経営が行われていますが、生産者の高齢化が進んでおり、産地の縮小が懸念されています。
 平成30年度に基幹品目のシシトウ、ナバナの生産者に行ったアンケート結果では、今後「有望品目の導入」「所得向上」「若者の就農支援」が必要といった意見が多くありました。
 そこで、JA高知県幡多地区北幡営農センター、四万十町大正・十和地域振興局、普及所で構成された北幡チーム会を中心に、有望品目の導入・定着、モデル地区の整備、産地の継続支援に取り組みました。


  • 活動内容

1新規有望品目の選定・定着
 北幡チーム会で、有望品目として露地ショウガ、ハウスニラ、ユズを選定し、経営モデルを作成しました。これを用いて、新規就農希望者及び生産希望者に対して情報提供を行いました。また、新規生産者を対象に個別面談と巡回指導により経営及び栽培状況の確認を行うことで、経営安定に向けた支援を実施しました。


2モデル集落の整備
 令和2年度から集落座談会を開催し、地区の課題解決に向けて話し合いました。今後、地域の農地を守るためには、継続的な活動ができる法人が必要という意見を受け、法人設立に向けた支援を行いました。令和3年度には農事組合法人大正中津川(以下、(農)大正中津川)が設立され、法人運営における問題や課題を聞き取りビジョン案を作成しました。今後はビジョンの実現に向けてスムーズに運営できるように支援を行っていきます。


3産地の継続支援
(1)シシトウの収量、品質の向上
 産地の主力品種である‘葵ししとう’の種子生産の中止により、高齢生産者の営農継続が困難となることが想定され、産地のさらなる縮小が懸念されました。そのため、北幡地域に合った品種を新たに選定して、‘葵ししとう’生産者が安心して品種移行できるように実証試験を行いました。
 JAと共に、‘高育交シシ15号’及び‘NP401’を新品種として選定し、生育および果形調査を行い、現地検討会等で調査で得られた品種特性を生産者へフィードバックし導入を検討しました。


写真4

シシトウ現地検討会

(2)ナバナのセル苗の推進、根こぶ病対策の徹底
 令和元年度から高齢生産者でも栽培が継続できるよう、省力化技術としてセル苗の検討を開始し、機械移植実演会及び実証試験を行いました。令和2年度からは有効性について、現地検討会や個別巡回等で周知しました。
 根こぶ病対策として、令和2年度に、土壌混和殺菌剤や抵抗性品種の活用等についてのアンケート調査を実施し、さらに多発地区の根こぶ病菌グループを調査しました。令和3年度には根こぶ病抵抗性品種の導入を推進すると共に、令和3~4年度に殺菌剤の土壌混和による根こぶ病防除効果を明らかにし、栽培講習会等で周知しました。


図1

土壌混和殺菌剤によるナバナ根こぶ病防除効果

(左:殺菌剤使用なし      右:殺菌剤使用あり)


(3)ユズの園地継承支援
 令和2年度にJAと共に、農地流動化に向けて意向調査を実施し、園地ごとに将来の貸借意向やモノレールの有無、さらに病害の発生状況についても把握しました。令和3年度はJAが導入している営農支援アプリでの園地情報の管理について検討を重ねました。


図2

ユズ園地情報の共有


  • 具体的な成果

1新規有望品目の選定・定着
 露地ショウガ、ユズにおける新規生産者及び就農者20代~60代の5名が確保できました。病害及び不測の情勢による大幅な単価下落、資材高騰により、経営が厳しくなっているため、経営安定に向け支援を継続しています。

2モデル集落の整備
 令和2年度に地区の課題を検討・整理して、令和3年度に(農)大正中津川が設立されました。地域の農作業受託と合わせて令和5年度からは法人として水稲栽培を開始し、地域農業の維持継続活動を行っています。

3産地の継続支援
(1)シシトウの収量、品質の向上
 新品種の‘高育交シシ15号’及び‘NP401’の生育特性を把握することができ、新品種導入率が15%から30%に増加しました。
(2)ナバナのセル苗の推進、根こぶ病対策の徹底
 令和2年度にセル苗に取り組む生産者が5戸から7戸に増加しました。アンケート調査結果から、地区ごとに根こぶ病の発病状況や対策等を検討しました。また、2種類の根こぶ病菌グループを特定し、アミスルブロム水和剤の防除効果を確認できました。
 令和3年度には根こぶ病抵抗性品種を導入した生産者は41名まで増加しましたが、草勢が弱いことや葉色が薄いといった新たな問題が発生したため、今後も抵抗性品種の検討を継続していきます。
(3)ユズの園地継承支援
 営農支援アプリで園地の状況がすぐに確認できるように情報を整理でき、新規や規模拡大のために園地が必要な生産者へ情報提供できる体制が整いました。


表1

営農支援アプリによる園地情報


  • 今後の展開

1新規有望品目の選定・定着
 地域でくらし稼げる農業を目指すため、有望品目の再検討を行うと共に、農地及び移設可能なハウス情報を整理し、新規生産者及び就農者だけでなく、規模拡大にも対応できる体制を整備していきます。また、引き続き有望品目の新規生産者、新規就農者に対しては個別指導により、経営安定に向けて支援していきます。

2モデル集落の整備
 (農)大正中津川については、ビジョン実現と経営安定に向けた支援を継続していきます。
 北幡地域の農地の担い手は、団塊の世代の高齢化により加速度的に減少し、農地の荒廃が進むと想定されます。地域計画の策定と合わせて、他地区でも農地や地域を守るための仕組み作りについて検討していきます。

3産地の継続支援
 北幡地域の主要品目はシシトウ、ナバナ、ユズ、栗、茶の5品目ですが、高齢化及び労働力不足が深刻です。今後、関係機関が連携して、地元住民と一緒になって、営農の継続さらには産地維持の仕組みを検討していきます。




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