トマト黄化えそウイルス(TSWV)による病害
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発生状況
トマト黄化えそウイルス(TSWV)は、1915年にオーストラリアで初めて確認されたが、その後、世界各地に発生拡大し、多くの農作物で被害が問題となっている。現在、最も恐れられている植物ウイルスの一つである。
国内では1972年に岡山県のダリアで初発生が確認され、トマト、ピーマン、ダリアなどで局所的に発生していた。しかし、1992年頃から各地のキクやトマトにおいて急激に発生が拡大している。
県下でも1996年に南国市で初発生が確認され、その後、キク、トマト、ピーマン、ナスなどでも発生が見られており、発生は拡大傾向にある。
本ウイルスはアザミウマ類によって媒介され、寄主範囲も広いことから、今後さらに発生が広がる恐れがあるので注意を要する。
病 徴
トマト黄化えそウイルスに感染すると、葉では退緑輪紋や褐色のえそ輪紋、えそ斑点を生じ、茎にはえそ条斑を生じるのが特徴である。植物によっては生長点が枯死したり、株が萎凋枯死する場合もある。また、果実はえそ斑点を生じたり奇形果になる場合がある。
罹病した植物の病徴
寄主範囲
トマト黄化えそウイルスは非常に多くの植物に感染する。特に、ナス科、キク科、マメ科などの作物では激しい被害を受ける可能性があり、注意が必要である。
~~~ トマト黄化えそウイルス(TSWV)の寄生性 ~~~
わが国で自然発生が知られている植物 | わが国で自然発生は未確認であるが、接種を行うと感染することが知られている植物 |
ピーマン、シシトウ、トマト、ナス、ネギ、タバコ、ダリア、ヒオオギ、キク、ガーベラ、ソリダスター、アスター、スターチス、サルビア、コセンダン、ニチニチソウ、シネラリア、シクラメン、インパチェンス、ギシギシなど |
ソラマメ、エンドウ、ササゲ、ニホンカボチャ、ペチュニア、キンセンカ、センニチコウ、ヒャクニチソウ、ムギワラギクなど |
注)下線は県内で発生が確認されている植物。
この他、外国での発生を含めると、150種以上の植物に感染することが知られている。
伝搬方法
アザミウマ類によって媒介される。土壌伝染、種子伝染はしない。また、汁液伝染もほとんどないので、栽培管理による伝染の心配はない。
媒介が確認されている種はミカンキイロアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、ネギアザミウマ、ミナミキイロアザミウマ等であるが、特に、ミカンキイロアザミウマは他種に比べてTSWVの媒介能力が高いと言われている。TSWV感染植物体上で育った幼虫(特に1齢幼虫)だけが保毒虫となり、この幼虫が成虫となって、健全な植物を摂食することでウイルスを感染させる。また、この保毒成虫は死ぬまでウイルスの媒介能力がある。
左:ミカンキイロアザミウマ成虫 右:ヒラズハナアザミウマ成虫
防除対策
- 発病株はすぐに抜き取り、焼却又は埋没処理する。
媒介昆虫であるアザミウマ類の防除を徹底する。
未発生地では種苗による持ち込みに注意する。
TSWV及びアザミウマ類はともに広い寄主範囲をもち、雑草等も増殖源となるので、ほ場とその周辺の除草に努める。
アザミウマ類の防除対策として、ハウス開口部の寒冷紗被覆、近紫外線カットフィルムの利用、シルバーポリマルチなど物理的な方法を積極的に活用する。
観賞用の花き類はアザミウマ類の発生源となるので、ほ場内に持ち込まないようにする。
不必要な株は速やかに処分する。キク栽培では親株は必要最小限養成し、アザミウマ類の防除を徹底する。
栽培終了後は直ちにハウスを密閉し、5~7日間蒸し込み処理を行い、その後、残渣を焼却処分する。
平成11年7月作成
高知県病害虫防除所
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