平成10年度病害虫発生予察警報第1号

 

平成10年6月3日

高知県病害虫防除所

 

病害虫名     イネいもち病(葉いもち・穂いもち)

対象作物     早期稲

1.発生地域   県内全域

2.発生時期   6月上旬以降

3.発生程度   多

4.警報発令の根拠

(1)早期稲栽培地帯では、5月第3半旬に実施した調査で、葉いもちの発生が昨年よりも早く認められ(表1)、南国市の防除時期決定ほにおける葉いもちの初発生は、平年より約3週間早く確認された(表2)。

(2)その後、5月第5半旬に行った巡回調査では、広範囲に葉いもちの発生が認められ(表1)、その後6月第1半旬にかけ急増していた(表4)。

(3)いもち病抵抗性遺伝子(Pi−z)を持つ品種(ナツヒカリ)においても、発病が認められている。

(4)早期稲の葉いもち発生面積は、5月としては著しく多く(表2)、全般的に多発生となった(表3)。

(5)5月15日付の早期稲葉いもち注意報の発令後、一旦天候の回復が見られ、薬剤による防除が行われたが、6月1〜2日の調査では、病勢の進展が認められ、一部で「ずり込み症状」が見られた(表4)。

(6)4月上旬からの高温と5月に入ってからの曇雨天により、イネの生育は葉色が濃く、軟弱徒長気味となっているので、いもち病に対する感受性は高いと考えられる。

(7)分げつや葉令の進みも10〜14日程度早く、出穂はとさぴかで6月第1半旬、ナツヒカリで6月第3半旬頃、コシヒカリで6月第5半旬頃と予想される。

(8)四国地方の1ヶ月予報によると、向こう1ヶ月の平均気温は平年より高く、降水量・日照時間は平年並となる可能性が高いと予想されている。

(9)また四国地方は6月2日に梅雨入りが発表され、向こう1週間、南海上に停滞する前線の影響で、曇りの日が多く、降水量は平年並になると予想されている。

(10)BLASTAMによるいもち病の感染好適日は、5月24日(2地点)、25日(6地点)にかけ連続的に出現し、その後も天候の崩れに伴い、5月30日(2地点)、6月2日(1地点)と出現している(表5)。

(11)本年は出穂の早いことが予想されており、出穂から登熟期が梅雨と遭遇するため、穂いもちの発生について厳重な警戒が必要である。

(12)今後の天候が予報どおり進めば、早期稲ではとさぴか、コシヒカリを中心に平年より早く、穂いもちが多発するおそれがあり、防除を実施する必要がある。

 

5.防除対策

(1)穂肥の施用に当たっては、イネの生育状況や今後の気象の推移を配慮し、適切に行う。

(2)葉いもちの発生が見られたら、直ちに粉剤または液剤による防除を実施する。

(3)上位葉への発病が多いときには、出穂前に薬剤を散布し、穂いもちの発生を予防する。

(4)出穂期は平年より、10日〜2週間程度早くなると予想されるので、穂いもちに対する防除時期が遅れないようにする。

(5)薬剤による防除に当たっては、県の病害虫防除指針に準じて適切に防除を実施する。

(6)いもち病抵抗性品種のナツヒカリも、葉いもちの発生が認められたら、防除を行う。  

表1.早期稲葉いもちの発生推移


調査
地域
発生ほ場率(%) 発病株率(%)
5月
3半旬
5月
5半旬
6月
1半旬
5月
3半旬
5月
5半旬
6月
1半旬
県東部 100.0 100.0 100.0 1.40 5.67 40.0
県中央部 25.0 51.6 95.6 0.05 3.88 56.5
県中西部 55.6 88.9 100.0 0.11 0.98 16.1
県西部 0 83.3 91.7 0 21.38 19.8
合計 28.8 63.6 96.1 0.10 10.80 23.1

  

表2.早期稲葉いもちの発生面積率と

防除適期決定ほにおける初発生確認日

年次
 
5月下旬の
発生面積率
初発生確認日
(南国市)
1988年(昭和63年) 0%
 
6月21日
 
1989年(平成元年) 0.2
 
6月8日
 
1990年(平成2年) 0.1
 
6月13日
 
1991年(平成3年) 0.1
 
6月5日
 
1992年(平成4年) 0.2
 
6月22日
 
1993年(平成5年) 0
 
6月23日
 
1994年(平成6年) 0
 
5月30日
 
1995年(平成7年) 0
 
6月14日
 
1996年(平成8年) 0
 
6月12日
 
1997年(平成9年) 0.1
 
6月11日
 
本年(平成10年) 12.6 5月20日
平年 0.1 6月13日

 

表3.早期稲の葉いもち発生状況(程度別発生面積:ha)平成10年5月下旬

 
 
 
 

 

 

 

 
合計
 
発生面積率
県東部
 
本年       27.8 27.8 3.01%
平年     0.1 0.6 0.7 0.08
県中央部
 
本年       133.0 133.0 3.74
平年       2.0 2.0 0.06
県中西部
 
本年     161.5 268.5 430.0 22.57
平年       0.5 0.5 0.03
県西部
 
本年       511.9 511.9 21.47
平年       3.4 3.4 0.14
合計
 
本年     161.5 941.2 1102.7 12.57
平年     0.1 6.5 6.6 0.08

 

表4.早期稲の葉いもち発生状況平成10年6月第1半旬

調査
地点
 
調査
ほ場
 
発生
ほ場(%)
調査
株数
 
発病
株数
 
発病
株率(%)
調査
月日
 

東部
 
安芸市伊尾木 3 100.0 75 21 28.0 6/2
安芸市川北 3 100.0 75 28 37.3 6/2
安芸市井ノ口 3 100.0 75 41 54.7 6/2
芸西村和食 2 100.0 50 20 40.0 6/2













 
高知市介良 3 100.0 75 74 98.7 6/1
高知市高須 3 100.0 75 75 100.0 6/1
高知市朝倉 3 33.3 75 1 1.3 6/2
南国市立田 4 100.0 100 60 60.0 6/1
南国市国府 3 100.0 75 41 54.7 6/1
南国市伊達野 3 100.0 75 42 56.0 6/1
南国市三和 3 100.0 75 43 57.3 6/1
香我美町岸本 3 100.0 75 75 100.0 6/1
夜須町 3 100.0 75 34 45.3 6/1
吉川村 3 100.0 75 50 66.7 6/1
野市町富家 3 100.0 75 56 74.7 6/1
土佐山田町 3 100.0 75 31 41.3 6/2
伊野町 3 100.0 75 7 9.3 6/2
日高村 3 100.0 75 32 42.7 6/2
中西部
 
越知町柴尾 3 100.0 75 29 38.7 6/2
須崎市立目 3 100.0 1935 9 0.4 6/1
須崎市中島 3 100.0 2040 869 42.6 6/1
須崎市安和 3 100.0 1620 25 1.5 6/1

西



 
大方町鞆 2 100.0 50 48 96.0 6/2
中村市安並 2 100.0 50 50 100.0 6/2
中村市間崎 2 100.0 50 50 100.0 6/2
中村市森沢 2 100.0 50 50 100.0 6/2
宿毛市小深浦 2 50.0 1000 1 0.1 6/2
宿毛市山奈 2 100.0 50 48 96.0 6/2

 

表5.BLASTAMによるいもち病の感染好適条件の判定結果(平成10年度)

  5/20 5/21 5/22 5/23 5/24 5/25 5/26 5/27 5/28 5/29 5/30 5/31 6/1 6/2
本川                        
本山                        
大栃                          
高知                        
後免                          
安芸                        
檮原                      
須崎                            
窪川                          
室戸岬                            
江川崎                      
佐賀                      
宿毛                          
中村                          
足摺                            

平成10年6月3日現在

 

感染好適条件が、連続して広い地域で出現した場合、通常それから約1週間後、広域に葉いもちの初発生が認められるようになります(全般的初発生時期)。さらにこの全般的初発生時期から約1週間後に、発病の増加が始まります(発病増加開始期)。通常、この時期が粉剤等による一般的な防除適期となります。

<用語説明>

好適条件(●):葉面湿潤条件がいもち病菌の感染に充分であり、湿潤時間中の平均気温が15〜25℃、前5日間の平均気温が20〜25℃で、葉いもちの大量感染に好適な気象条件が出現した場合。

準好適条件(△):葉面湿潤時間がいもち病菌の感染に充分あるが、その他の条件が一部不足している場合。これが続いても発病が始まるので注意が必要です。

*移植20日後程度までの好適条件の出現は、いもち病菌の感染に無効であり、BLASTAMの適用開始時期はそれ以降とします。

 

表6.早期稲葉いもちの発生推移


調査
地点

調査
ほ場数
発生ほ場率(%) 発病株率(%)
5月
3半旬
5月
5半旬
6月
1半旬
5月
3半旬
5月
5半旬
6月
1半旬
安芸市伊尾木 3
 
100.0
 
100.0
 
100.0
 
1.40
 
5.67
 
28.0
 
高知市介良 3 0 33.3 100.0 0 1.33 98.7
高知市高須 3 33.3 100.0 100.0 0.08 6.67 100.0
南国市立田 4 25.0 75.0 100.0 0.03 6.4 60.0
南国市国府 3 100.0 0 100.0 0.16 0 54.7
南国市伊達野 3
 
0
 
33.3
 
100.0
 
0
 
1.33
 
56.0
 
南国市三和 3 0 66.7 100.0 0 4.0 57.3
香我美町岸本 3
 
0
 
100.0
 
100.0
 
0
 
10.67
 
100.0
 
夜須町 3 0 0 100.0 0 0 45.3
吉川村 3 - 66.7 100.0 0 5.33 66.7
野市町富家 3 0 33.3 100.0 0 1.33 74.7
須崎市立目 3 100.0 66.7 100.0 0.13 1.14 0.5
須崎市中島 3 66.7 100.0 100.0 0.15 1.32 42.6
須崎市安和 3 0 100.0 100.0 0 0.37 1.5
大方町早咲 2 0 100.0 100.0 0 3.1 96.0
中村市安並 2 0 100.0 100.0 0 32.5 100.0
中村市間崎 2 0 100.0 100.0 0 64.4 100.0
中村市森沢 2 0 100.0 100.0 0 14.9 100.0
宿毛市小深浦 2
 
0
 
0
 
50.0
 
0
 
0
 
0.1
 
宿毛市山奈 2 0 100.0 100.0 0 13.4 96.0
合計 55 19.2 63.6 98.2 0.10 10.8 23.4